第12話 私、?、何で?
ラジワットさんは、即席で作ったスープを差し出してくれた。
これがまた、美味しい!
なんでこっちの食べ物って美味しいんだろう。
いや、それより、、、私が裸な理由、、、、え?、もう、、、、行為の後???
「済まなかった、もう少し雪山に慣らしてから旅立つ必要があったな、身体は大丈夫か?」
えっと、、、、身体のどこを気遣われているんだ、私!
えっ、、えっ、、、一体、ここで何があったんですか!
「低体温症で、かなり危なかった、巫女に失礼かと思ったが、人肌で温めさせてもらった、、、」
さすがのラジワットも、少し恥ずかしそうにしている。
やめて!、こういう時は、むしろいつものように冷静でいてくれた方が、私の心的には助かります。
ああ、もう、全部見られた!
人生で初めて、男の人に、、、、全部!
「、、、、見ました、、よね、、、貧相な身体ですいません!」
ああ、もう、何言ってるの、私、恥ずかしすぎて、言葉が出てこない!
「何を心配している、部屋は暗くしてあったから、それほどはっきりとは見えていない、焚火の明かり程度だ」
いや、それって、普通に明るいんですけど!、40W電球くらいの明るさなんですけど!、と幸はツッコミしたくなるレベルであったが、ラジワットなりの気の使い方なんだろう。
冷静に考えてみれば、あの猛吹雪の中、自分を助けてくれた恩人なのだ、、、、、そう、また幸はラジワットに助けられた。
「あの、、、ありがとうございました、助けて頂き、、、」
すると、ラジワットはようやく少し笑顔になった。
幸は思った、ラジワットの笑顔は、少し身体を暖かくする効果があるのでは、と。
そして、ここはどこ?、と。
「ああ、幸運だった、狩猟小屋が近くにあったんだ。冬はこの通りの豪雪地帯だが、雪の少ないシーズンは、この辺も普通に人の往来のある街道だからな」
あの、絶望的なホワイトアウトからの生還、本来喜ぶべきところは大いにあったのだが、幸としては全裸を見られたというショックの方が優先され、頭がまだ追い付いていなかった。
スープを飲み、少しほっとした瞬間だった、幸は何故か涙が溢れ、止まらなくなってしまった。
「あれ?、、、私、?、何で?、、、」
そう言うと、幸は涙が止まらないだけではなく、本格的に泣き出してしまった。
それは自分では、どうにも止める事が出来ないほどに。
「ミユキ、、、、すまなかった、、だが、あの状況では、服を脱がせて、乾いた布で包み、人肌で温めるのが一番効果的なんだ、、、君の低体温は、かなり危険なレベルだったんだ、、、、」
珍しく、ラジワットがオドオドしている。
しかし、そんなラジワットの優しさが、幸の涙を何故か助長してしまう。
、、、、一体なんだろうか、この状況は。
上半身裸の筋肉質な男性の前には、全裸の少女、東京都内であれば速通報レベルのこの状況。
さすがのラジワットも、困り果ててしまった。
「服が乾くまで、そのベットを使うがいい、私は隅にいるから、安心して寝なさい」
幸は、そんなラジワットの優しさに対して、泣き続ける自分が嫌で仕方が無かった。
どうしてしまったんだろう、こんなこと、これまで一度もないのに。
それからしばらく、幸は毛布にくるまって、一人で思う存分に泣いた後、乾いた自分の服を確認すると、最低限の下着とインナーだけを着て、少し考えてみた。
先ほど泣いたのは、きっと安心したから。
そして、自分が巫女としての資格を維持しなければならない以上、彼が自分に性的な事をしてこない事を解っていたから、幸は誰かに甘えても大丈夫、というバイアスが外れてしまったのだと解釈した。
いつも何かに怯えてきた半生。
そんな中で、自分をここまで大切に扱ってくれる人の存在が、なんだかとても安心できるし、、、、まるでそれは、赤ちゃん返りしたような気分だった。
ラジワットといると、自分はとても安心できる、これまでに感じた事のない、安心感、、、、これは、心がくすぐったい。
すると、幸は先ほどの大泣きした事を、なんだか急に申し訳ないと思うようになっていた。
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