第10話 巫女の条件

「ラジワットさん、、、もう少し、そこの所、詳しく聞いてもいいですか?」


 お茶のようなものだろうか、人生初の飲酒で火照った身体と頭には、すっきりする飲み物だった。

 そして、もう一度、さっきのラジワットの話を冷静に聞く必要がある、と思った。


「ああ、、、ミユキの力で、息子の病を治して欲しいんだ、噂で聞いた事がある、あちらの世界の巫女の肩たたきには、人の病を癒す効果があると、、、、私は本来、帝国の人間だが息子は今、北の国境を越えたタタリアの更に向こうの奥地に、療養のために入園させている、、、、」


 幸の心に、何か温かく、そして輝くものが感じられた。

 ラジワットさんは、自分を性的な目的でここまで連れて来たのではない。

 やっぱり、自分が感じていた悪意の感じられない人物だったんだと、それは幸にとって、なによりも嬉しいことだった。

 目の前のこの男を、自分は信じても良いのだと。


「ラジワットさんは、、、私の事を、、、その、、エッチな目で見てはいないんですか?」

 

 些か酔っている勢いも借りて、一番核心の部分を聞いてしまった。

 幸は、さすがにそれは大胆過ぎると後悔した。

 だが、それは思っていたよりも、ずっと幸を喜ばせる回答と言えた。


「私が、、ミユキを、、、?、、ハハハっ、さすがに君のような子供にそんな非道な事はしないよ、騎士道に反する行為だ、先祖に叱られる、そして、この肩たたきの秘儀は、巫女でなければ意味がない、それ故、息子の元に辿りつくまでは、私だけではなく、誰も君に触れさせないように、私が君を守る、だから安心して付いてきてくれ」


 ラジワットの笑顔が、幸には少し眩しかった。

 なんだか、これまで不安に感じていたことの、ほとんどが解決してしまったかのように感じられた。


 なんだ、この人は、自分を丸々太らせてから食べるタイプでは無かったのだ。

 前後の話を考えれば、自分の貞操は確実に保護される、、、、巫女とは、エッチ未経験な若い女性を意味する、、、のだと思う。


 これは凄い!


 幸は、安心したら先ほどの酒が急速に回りはじめ、頭がぼんやりして来てしまった。

 これまでに、味わったことのない、幸福感が幸を包み込む。

 明日から、安心して、楽しい二人旅が出来るのだと思うと、幸は嬉しくて踊り出したいほどであった。


 

 しかし、幸は思い知るのである。


 あの、ラジワットが買ってくれた服や装備が、単なるオシャレな贈り物などではなく、厳しい越境のための必須装備である事を。

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