第9話 あの幸せが続けば

 ラジワットは、昼間のレストランとは別の店に入り、一通り何かを注文すると、最初にやはり飲み物が出て来た。

 夜だからか、ラジワットの前には、酒が置かれた。

 幸は、少しだけ不安になる。

 それは、酒を飲む大人に対して、怖いという感情があったからだ。

 

「どうした?、酒は苦手か?」


 え?、それは、酒の匂いの話をしているのだろうか?

 そこまで気を遣わせたことに、幸は少し申し訳ないという気持ちになった。

 そう思い、自分の前に置かれたジョッキに入った飲み物を、一気に飲み干した。


 そして、幸は気付いた、、、さっきの質問は、自分に酒は苦手か、という質問だという事を。


「ちょっ、、、これ、お酒じゃないですか?、私、未成年ですよ」


「寒い夜には、これで身体を温める事が出来る、こっちの世界では、子供でも薬のように飲むことはあるんだぞ」


 ああ、いくら優しくしてくれていても、ラジワットもやはり男なのだ、と幸は思った。

 これは、よくテレビなんかで見る、酔わせてお持ち帰り、というやつではないかと。

 なんだ、、、ちょっと、ラジワットは他の男性とは違うのでは、と期待していたのに。

 結局、私は、このあとエッチな事をされてしまうんだ、と。

半ば覚悟をしていたとは言え、昼間とても嬉しかっただけに、残念に思えてならなかった。


「私を酔わせて、、、、この後、どうなさるのですか?、、、、わたし、、食べても美味しくないですよ、、、」


 自分は、一体何を言っているのだろう。

 人生初の酒は、苦くて甘くて、それでいて大人の魅力に溢れていて、、、夜の酒場もまた、魅力的に映してしまうのである。

 なんだか、考えるのが面倒になってきた、私、もう、抗うの止めようかな、ラジワットさんに任せておけば、それでもう、、、

 幸は、そんな風に考えていた。

 

「ミユキ、辛いなら、無理に呑む必要なんて無いんだぞ、私だけ酒では、申し訳ないと思ったから頼んだだけだからな、すぐに別の飲み物を持って来させるから」


「いえ、、、いいんです、ラジワットさんに合わせます、、、貴方は私の、命の恩人ですから、、私、貴方に、すべてを委ねます、、、あんまり、痛いのは、ちょっと怖いですけど」


「、、、何を言っているのか解らないが、私に委ねてくれるのであれば、本当に有り難い、、、早速なのだが、、これを」


 それを見て、幸の酔いは少し冷めるほど、インパクトがあった。

 それは、あの「肩たたき券」であった。

 、、、今日は、楽しかったな、もう少し、あの幸せが続けば良かったのに、と、幸は今日一日を振り返った。


「ミユキ、、、大変申し上げにくいことなのだが、私の息子の病を、どうかこれで治してやってほしい」


 、、、、、ん?、、、あれ?、、なにか今、私が覚悟していた内容と、大分違う事を、この人は口走らなかったか?、と幸は違和感を感じた。


「え、、っと、なんですか?」


「いや、だから、この券を使って、君に息子の肩をたたいて欲しいのだ」


 、、、、えー?、私、酔っている?、あれ?、これは夢?、、、、、エッチなお話しは?


 追加で注文した酒ではない飲み物を、再び一気に飲み干し、少し酔いを醒ます必要があると、幸は感じた。

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