第2話 詳しく教えてくれ
駅前、イタリアンファミレス内
「ハフハ…ング、ほふで(それで)、ゾゾッズルルル、なふほようだ?」
「え?」
オオタに声をかけられた一羽は、何を話すのかも知らないまま、飯を奢ってもらうことで話すという交換条件を提示して今に至る。
ドリアにサラダ、イカ墨パスタや普段頼まないチキンやエスカルゴ、ステーキを注文して貪るように食い、一通り満足がいったところでオオタの話を戻させた。
「すまん聞き取れなかったか?俺ら初対面だよな、話ってなんだ?」
紙ナプキンを2、3枚雑に取りイカ墨で汚れた口を拭く。
オオタはそんな一羽の行動の一つ一つを観察するように見ながら口を開く。
「いや、さっき寮で貴方の後ろにいたんでスよ。その後、寮の管理人さんと話ましてね…気になったんス、どんなことをすれば退寮する羽目になるのか…って」
あの管理人め、他人にも言いやがったのか。
「そんでそんな馬鹿を野次馬感覚で見に来たと…」
「いや!そんな感じで言いに来た訳じゃなくて…!私も正直掃除とかあんま得意じゃないんスよ」
手と首を大きく振り、オオタは強く否定をする。
一羽もまた、オオタを深く観察していた。話すことに嘘と本心が見え隠れしているが、もっと奥にある核の部分は隠れたままであり、それが恐らく重要なことなんだろうと予想した。
「後学のためにも、教えてくれればなんて…」
「それは、嘘でもいいのか?」
「へ?」
「あーすまん。アンタが望まない答えなら奢りナシとかあんのかなって…」
いかん、踏み込みすぎたか?目がなんか急に鋭くなった気がするし、何か考えてるみたいだが…
それもそのはず。いきなり嘘でもいいかなんて聞かれたら、色んな思考が周るだろう。
「いえ、別に望まない答えでも奢りが無くなることはないスよ」
オオタは一羽の目を見つめて、自分の本心であると訴えるように話を続ける。
「さっきの話で謝ることがあります。本当は野次馬みたいなものなんスよ、自分。だけど、馬鹿にしてるわけとかじゃなくて、後学とかも嘘じゃない─
「わーった。話すよ、嘘偽りなくな」
「え、本当に?」
「ああ、その代わり他の条件を追加させてくれ」
「例え望まない答えでも本当に求めてた答えと目的を教えてくれ。」
レタスとドレッシングにまみれたフォークをオオタに向けてビッと刺す。
オオタは突き出されたフォークと顔まで飛んできたドレッシングに驚いたが、すぐにフッと笑った。
「ええ、いいスよ」
「マジで?」
「さっきからずっと観てて、今のでほぼ確信に変わりましたし…」
「一羽さん、人として終わってるんスよ」
真っ直ぐな目で、正面ストレートで言われたその言葉は一羽に流れる時を停止させた。
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