第3話 配信とかに興味ないっスか?

「人として終わっている」

面と向かってそんなことを、しかも異性にストレートで言われたのは初めてだ。


オオタは呆然としている一羽のことなんかお構い無しに、なぜその結論に至ったのかを話し始めた。


「まず、人に遠慮しない所。これはまだいい方スけど…問題は頼み方!絶対に食べきれないのに高いものから手を付けて…結局リブステーキに至っては一口しか手をつけてないじゃないスか」


確かに奢ってもらえると聞き、高いやつや食ったこともないものに手を出した事は事実である。


「次に食い方が汚い!いや、変に汚い!」

テーブルの上の皿に指を刺され、オオタの口撃は続く。


「イカ墨パスタをラーメンみたいに啜るし、チキンは雑に食って肉が残ってる。かといって、エスカルゴの中を隅々までほじくるし、ドリアの焦げまで綺麗に剥がして食べる。サラダに関しては小エビだけ最初に食べて、レタスを持て囃しこっちにドレッシングを飛ばす始末…」


「中途半端なこだわりとか持ってて、嫌いなことや苦手な事を後回しにして放置した積み重ねなんじゃないんスか?」


否定をしたかった。だが、目の前の女が言ってることが、目の前の机の惨状が、部屋を追い出された時の記憶がそれを否定する。

辛うじて口から出た言葉は消えてなくなりそうな「ごめんなさい」だった。

一羽が頭を下げたのを見てオオタは焦る。


「あ!違うんスよ!その…貶したいとかじゃなくて…むしろそうであって欲しいという願望というか、そういう人を探してるというか」


目の前のオオタという人間を観察していたが、一気に見失ってしまった。

自分のような人間は社会ではマイナスでしかなく、人生で幾度と失敗を繰り返してきた中でそれは痛いほど実感している。ほとんどの人間は寮の管理人みたく、関わることを拒むだろう。


なぜ?


「まあ、あれこれ言うのもなんなんで結論から言うっスね」


オオタの口から出された答えは以外かつ更なる困惑させるものだった。


「一羽さん、配信とかに興味ないっスか?」

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配信を喰らう悪魔 @udonokoboku

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