城の中のラスボス戦 ⑧

「くそっ……」

 私は何とかテロスを追おうとするも、身体を動かせずにいた。

 完敗だ。

 魔王を倒す為に、八年間修行をしたといっても、結局この程度だった。魔王に太刀打ちできないばかりか、私の我儘のせいで、ソティルを危険にさらしてしまっている。

 何とかあいつを助けないと……。

私が起き上がろうとしたときだった。

「スピラ!」

 誰かが、私の側にやってきた。視界の端に、長いピンク色の髪が見えた。

「……ラトレ?」

「すぐに回復させます」

 ラトレは言うと、私の身体全体に回復魔法を掛けた。土地の魔力を使っているからか、私の身体の痛みがあっという間に引いていく。

 ラトレの処置が終わると、私は上半身を起こした。

「どうしてここに?」

「ソティル様が連絡をくれたんです。あなたを助けてって……何で一人でこんなところにいるんですか? ソティル様の護衛は?」

 問い詰めるラトレの話を聞きつつ、私はゆっくりと立ち上がった。

「私の力足らずの結果よ……私の夢は叶わなかった」

「ソティル?」

 ラトレが問い掛けるも、私は、言葉を返せなかった。

 身体中に色んな感情が渦巻いていて、立っていられないほどだ。

(――――それでも)

 私は一端エクスシアを置いて、思いっきり、自分の頬を両手でひっぱたいた。

さっきほどじゃないけど、めっちゃ痛い。ラトレが音の大きさのせいか、肩を震わせて、びっくりしていた。

 私は、魔王に完全に負けた。

私は勇者になれなかった。

 ……でも、まだ生きている。できることはある。戦える。

 嘆いていても、何も変わらない。

 なら、今できることをやり抜くのみ。

 ソティルは多分、魔王を倒す手段を残しているはずだ。

 だったらそれに、今の自分の全部を賭ける。

私は負けた。でも――私達が、負けたわけじゃない。

 勇者の仲間だというのが私の運命だというなら……その運命と向き合ってやる。

 ありったけの勇気を見せてやる。

 私はエクスシアを手に持ち、力を込めた。

「ラトレ、私に任せて」

「で、でも……」

「私は勇者の……ソティルの仲間。スピラ・スピンテールよ」

 私はラトレにそう言うと、塔の方へと走り出した。

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