城の中のラスボス戦 ⑦

(さて、どうするか……)

 ソティルはテロスへのスピラの攻撃を防いだ後、考えていた。

 テロスの力は想定していたよりも、遙かに強大だった。仮に、騎士全員の戦力を動員したとしても、無残に殺されるだけだろう。

 しかし、この局面を乗り越えなければ人類に勝利はない。

「魔王を倒せるのは、勇者だけ……ね」

 ソティルがそう呟いた時、テロスが飛行魔法を使い、ソティルの部屋へと戻ってきた。

「〈アリシャの石〉を渡せ」

 テロスの言葉に、ソティルは笑みを返した。

「ここにはないわ。全部あなたを誘い出す為のウソよ」

「……そうか」

 ソティルの答えを聞くと、テロスは彼女の首を抑え、そのまま床へと叩きつけた。ソティルは首を絞められたことと背中への衝撃で、大きく咳き込んだ。

(まだ大丈夫……準備は出来てる。後は、発動さえすれば……)

「俺のデュナミスを見せてやろう」

 ソティルの思考を遮るようにテロスが言うと、テロスの周りに、黒い杭のようなものが四本出現した。

 そして、それぞれの杭がソティルの両の手の平と、両足の甲に突き刺さり床に磔にした。

「……くっ」

 痛みでソティルは思わず声を漏らした。その痛みよりも危機感を抱いたのは、別のことだった。

(魔力が生成できない……?)

 魔法を発動させるための魔力が、ソティルはまったく生み出せなくなっていた。ソティルの動揺ぶりを見て、テロスが笑みを浮かべた。

「その様子だと何かまた小細工をしていたな? だが、俺のデュナミスは、杭を打った相手の指定した能力の封印だ。今は、お前の魔力を封印した。どんなに小細工を労しようとも、魔法騎士がやるのは所詮魔法に関すること。魔力を封じられては何もできまい」

 テロスの言葉に、ソティルが息を呑んだ。

 策は準備をしていた。

確実に勝てる手を。

 けれど、魔法が使えなければ、それも無意味だった。敵の圧倒的な能力、そして、今まで準備していた作戦が水疱に帰り、ソティルは初めて恐怖を感じた。

「さて、楽しませくれよ……勇者なんだろ?」

 テロスの暗い瞳が、ソティルの身体に降り注いだ時だった。


『魔王……そんなに俺が怖いのか?』


 男の声が、部屋に響き渡った。

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