第15話 裏切り者は嫉妬する
軽食ではアルベルト王子はソフィア姫の顔を見つめていたがソフィア姫はわざと目を合わせないようにして適当な世間話をした。
それからソフィア姫は暑さで体調をくずしたフリをしてデートを早く終わらせてしまった。
一度でもアルベルト王子と目が合ってしまったらソフィア姫の胸が張り裂けそうな気がして逃げ出してしまった。
ソフィア姫はこの気持ちは過去の恋だと自分に言い聞かせた。
数日間ソフィア姫は城の書物を読みあさりドラゴンの呪いについて調べていた。
(ドラゴン……ドラゴン……呪い……剣の絵だわ……これ龍王の剣!? 似た剣を見た事があるわ……確か宝物庫!!)
ソフィア姫は目をキラキラさせて立ち上がり宝物庫に走って向かう。
廊下ではリアム先生に会って話しかけられる。
「ソフィア姫、授業の時間に……」
リアム先生に話しかけられてもソフィア姫は全く聞いていないようで走りさる。
ソフィア姫がまた授業から逃げると思いリアム先生は追いかけた。
ソフィア姫はあっという間に宝物庫の前まで来ていた。
宝物庫の見張りの兵士にソフィア姫は挨拶をして入ろうとしている時リアム先生が止めた。
「ソフィア姫! なぜ宝物庫に入るのですか?」
ソフィア姫はわくわくしながら答えた。
「ここに剣があるのよ!」
ソフィア姫が変な事を言うのでリアム先生は困った顔をしながら言う。
「宝物庫をお一人で回るのは危険です!」(人を困らせる天才だな)
ソフィア姫は首を傾げて聞いた。
「どうして!?」
呆れた顔でリアム先生は教えた。
「宝物庫は盗まれない用にトラップがたくさんあります。品物なら私が取りに行きます」
自分の目で確かめたくてソフィア姫は悔しそうに言う。
「自分で探したい! お願いリアム!」
リアム先生は仕方ない様子で言う。
「はあ……分かりました。その代わり私も一緒に同行します! でも勝手に物に触れないでください」
ソフィア姫は笑顔で言う。
「ありがとうリアム」
ソフィア姫はリアム先生と扉を開けると地下の階段が見える。
暗いのでランタンに火を灯して階段を下り広い宝物庫に着いた。
壁にはたくさんの鎧兵の絵が飾ってあって、まるで見張られているようで不気味だった。
宝物庫は貴重な書物に魔法道具や武器がたくさん並んでいるから探すのは大変そうだ。
でもソフィア姫は一度だけ宝物庫に入った事があるので剣は右側の壁に飾られてるのを知っていた。
たくさんの剣をじっくり見てソフィア姫は言う。
「おかしい……剣がない!」(ここスペースが空いてる……お父様が誰かに譲ってしまったのかしら!?)
「ないなら仕方ありません。さあ戻りましょう」
ソフィア姫の気持ちは落胆して下を見ると床に短剣が落ちている事に気づき思わず拾う。
するとガタガタと音が聞こえてきた。
鎧兵の絵の額縁が揺れている音だ。
絵が白く光り絵の中から鎧兵が飛び出してきた。
ソフィア姫はビックリして叫んだ。
「ひっ! でーたー!」
リアム先生は怒った顔で剣を抜きかまえてソフィア姫に言う。
「ソフィア姫! 何をしたんですか!?」
怖がった顔でソフィア姫は言う。
「短剣を拾っただけよ!」
「触らないでと言ったじゃないですか!」
ソフィア姫は叫ぶ。
「ごめんなさーい」
絵からたくさん出てきた鎧兵がソフィア姫たちに襲いかかる。
リアム先生が剣で鎧兵の首を切るとガシャンと兜が落ちた。
首がなくなった鎧兵の体を見ると鎧の中には誰もいない。
落ちた兜はガシャガシャ音をたて空中に浮かび兜が胴体に向かって飛んでいく。
兜と胴体はくっついて元通りになった。
リアム先生は鎧兵を睨み呟く。
「無限に戦えるのか……面倒だが粉々にしてやるか!」
ソフィア姫は宝物庫にあった黒い剣をとり戦いに参戦する。
舞うようにクルクルと鎧兵を斬っていく。
戦いながらソフィア姫が言った。
「書物で読んだ事がある! 確か……この魔法はキングの絵が本体! キングを斬れば鎧兵は消える!」
戦いながら2人はキングの絵を探した。
部屋の奥にキングがあった。
リアム先生が斬ろうとすると絵からキングが飛び出して剣をぬく。
どうやら戦う気のようだ。
キングが剣を振り上げて斬りかかってきた。
リアム先生は攻撃をかわして戦う。
ソフィア姫は鎧兵と戦っていた時に男の声が聞こえた。
「リリア!」
すると黒い剣が青く燃える。
ソフィア姫はビックリして叫ぶ。
「わあ!」
炎で焼け死ぬかと思ったが炎は全く熱くない。
それどころか剣からエネルギーを感じて力が湧いてきた。
ソフィア姫は剣を見つめて思った。
(この剣……魔剣!?)
リアム先生が言う。
「ソフィア姫! 大丈夫ですか?」
「私は大丈夫よ。そっちこそ大丈夫?」
「大丈夫です!」
ソフィア姫が剣を一振りして呟く。
「手に吸い付くような感覚……いける!」
その時、また男の声がした。
「リリアくるぞ!」
どうやら剣から声がする。
ソフィア姫は叫んだ。
「蹴散らしてやる!」
ソフィア姫は向かってくる鎧兵をどんどん倒していく。
リアム先生はソフィア姫が持っている炎の剣は危険じゃないかと不安になる。
キングを早く倒してソフィア姫のところにすぐに駆けつけたい気持ちになりリアム先生は力がみなぎった。
キングに剣で打ち勝ち素早く首を刎ねた。
すると一瞬で鎧兵とキングの姿が消える。
ソフィア姫は魔剣に話しかけた。
「もしかして……リリアお祖母様の魔剣のレイブル様かしら? お会いできてとても光栄ですわ」
「リリアかと思ったら……孫か?」
そう言うと剣は変身して黒い鷹の姿になってソフィア姫の肩に乗る。
ソフィア姫は笑顔で言った。
「初めましてリリアお祖母様の孫で第一王女のソフィアです! レイブル様は鷹の姿にもなれるのですね! 凄いですわ!」
ソフィア姫の笑顔はリリアの若い頃の顔にそっくりでレイブルは懐かしくてソフィア姫の顔に自分の顔をすり寄せた。
リアム先生がかけつけて言う。
「ソフィア姫、大丈夫でしたか?」
ソフィア姫はレイブルの羽がくすぐったくて笑いながら言う。
「大丈夫よ……レイブル様くすぐったいですわ……ふふ」
「おっと! すまん。リリアそっくりで……ついな」
リアム先生は鷹が喋って少し驚きながら言う。
「ソフィア姫その鷹一体何者ですか!?」
「リリアお祖母様の魔剣のレイブル様よ」
レイブルが偉そうに言う。
「騎士なら俺を知っておけ!」
レイブルの偉そうな態度にリアム先生は少し頭にきたが挨拶をする。
「失礼いたしました。ソフィア姫をお守りしております。王室騎士団の第二軍隊、隊長のリアムです」
またレイブルはソフィア姫の顔に自分の顔をすり寄せながら言う。
「こんな奴に守られるより。俺が守ってやるよ。リリアとの約束もあるし」
ソフィア姫は聞いた。
「リリアお祖母様と約束?」
レイブルは少し寂しそうな声で言う。
「最後の日に王国の事をお願いされたから……」
ソフィア姫は自分の最後は愛していた人に殺されたがリリアお祖母様は安らかな最後で良かったと思い言う。
「最後は大切な方々に愛されてリリアお祖母様は幸せで良かったです。お祖母様に代わって王国は私の手で守ります」
レイブルはリリアの声を走馬灯のように思い出した。
『私は王国が大好なの。誰かにやらせる気は私はない。王国を私の手で守る! 私は戦争でたくさんの人を殺した……私は許されない! 私が結婚……こんな私が……幸せになっていいのかな? 彼といると世界が変わったきがする。どうやら私は死ぬらしい。今までありがとうレイブル……私が死んだ後の王国をお願い』
するとレイブルは飛び上がり一瞬だけ青く光り人間の姿に変身した。
レイブルの人間の姿は20歳くらいで髪の色は水色で瞳も水色だった。
ソフィア姫はレイブルの人間の姿を見て驚く。
レイブルはソフィア姫を抱き上げて言う。
「普通の奴なら俺の炎に触れたら焼け死ぬ。ソフィアはリリアと同じ適合者だ。それに……リリアによく似ている……ソフィアこれから俺を使え! 必要な時に俺の名を呼べ」
ソフィア姫を降ろすと、また青く光り鷹になった。
するとソフィア姫の影が青く光る。
レイブルはソフィア姫の影に飛び込み姿を消してしまった。
リアム先生は厄介な奴にソフィア姫が好かれてしまったと頭を悩ませている様子だった。
ソフィア姫はそんな事より宝物庫にきた目的を思い出した。
「レイブル様!」
レイブルはすぐ影から飛び出して人間の姿でソフィア姫の手を握り言う。
「何だー? もう俺が恋しいのか?」
「すみません。レイブル様ともう少しお話しがしたくて……」
「そうか! そうか! 話しがしたいのか! ソフィア俺の事はレイブルでいい。これからずっと一緒なんだからな!」
「あっはい……レイブルここに来たのは龍王の剣を探しているの。龍王の剣を知らないかしら?」
「何!? 他の剣の話とは妬けるな……何で龍王の剣が必要なんだ?」
ソフィア姫はエターナル王国の呪いについて話した。
レイブルは呟くように言う。
「今まで戦った戦争に……そんな事情があったとは……」
ソフィア姫が質問した。
「あの龍王の剣はどこですか?」
レイブルが答えた。
「龍王の剣はここにあったけど今はここにはない」
リアム先生が質問する。
「あの、そもそも竜王の剣は本物ですか?」
レイブルが言う。
「あれは妖剣の竜王で間違いない! 最近ここの管理人が持ち出してたぞ。確か西の王国の王子がどうとか言ってた」
リアム先生が話す。
「ロイド王子が13歳のお祝いに欲しい物があると王様に頼んでいたはずです」
ソフィア姫が言う。
「じゃあロイド王子が持ってるの!?」
「おそらく……」
「私の誕生祭に招待しているから……その時に剣をお借りできないかしら?」
レイブルがソフィア姫に質問した。
「ソフィアは今年でいくつだ?」
「9歳です」
レイブルは嬉しそうに呟く。
「まだ結婚は先で良かった! 良かった!」
ソフィア姫はよく分からないが笑っておいた。
「ふふふ……?」
レイブルはご機嫌な顔して言う。
「婚約なんてぶっ壊してやるから安心しろ! あとその短剣は役に立つから持って帰るといい。ふあー……ちょっと疲れたな……俺は昼寝するからじゃあ!」
レイブルはソフィア姫の影に入って消えた。
すると何故かソフィア姫は急にふらついた。
(んっ……なんだか……目眩が……)
リアム先生は慌ててソフィア姫を抱き抱えて部屋に連れて行く。
ソフィア姫をベットに横にさせるとリアム先生は額と額を合わせて体温が高いか確かめた。
「熱はないようですね。でも大事をとって今日は休んでください」
顔が近くてソフィア姫は少し顔を赤くして笑いながら冗談を言う。
「リアムが優しいなんて大雨でも降るんじゃない?」
リアム先生はソフィア姫が自分を男性だと意識して顔を赤めた事を隠したくて冗談を言った事に気づいた。
少しは意識してくれた事に前進を感じて嬉しくて思わず優しく微笑みながらリアム先生は気持ちを伝える。
「ご好意がある方に優しくするのは自然ですよ」
ストレートな気持ちを聞いてソフィア姫の顔が赤くなる。
(私とリアムが結婚すれば王国の為になる……でもアルが……)
ソフィア姫は今度は困った顔をしている。
リアム先生は優しい顔で話し始めた。
「今のお気持ちには私がいないのは分かっていました。だから大丈夫ですよ。これから考えて答えを出してください。返事は気長に待ちますよ。5年後、10年後でもいい」
リアム先生はソフィア姫の手を取り手の甲にキスをして言う。
「本音は早く君を夢中にさせたい……おやすみなさい」
もちろんソフィア姫の顔は真っ赤になった。
9月24日ソフィア姫の誕生祭でトゥインクル王国は賑わっていた。
まともにアルベルト王子と会わずにきたのでソフィア姫は少し緊張していた。
会わない間にアルベルト王子は身長が伸びていた。
ソフィア姫はアルベルト王子の成長を見てふと思う。
(大人になったらもっと高くなるのよね……私ったら裏切り者の成長を楽しんでしまった!)
ソフィア姫は顔を赤くする。
アルベルト王子が近づいてきた。
「お誕生日おめでとうございます。僕とダンスを踊って頂けますか?」
ソフィア姫の影からレイブルが人の姿で出てきた。
「ソフィア、王子より俺と踊らないか?」
ソフィア姫はレイブルをアルベルト王子に紹介した。
「驚かせて失礼いたしました。レイブルは私の魔剣なのよ。レイブル! 婚約者と踊るのは礼儀です。今日は誕生祭だから大人しくしてなさい!」
レイブルはアルベルト王子を睨んで舌打ちをしてからソフィア姫の影に飛び込んで消えた。
アルベルト王子は邪魔者が増えたが小物のような目で見ていた。
ソフィア姫とアルベルト王子は楽しくダンスを踊った。
それからアルベルト王子はソフィア姫を中庭に誘う。
リアム先生と執事のフォルトが付き添おうとするがアルベルト王子が二人きりにしてくれと頼んだ。
リアム先生が答えた。
「私たちの目が届くテラス席にしてください」
ソフィア姫はリアム先生が嫉妬をしていると思ったら恥ずかしくて頬が赤くなってしまった。
アルベルト王子はソフィア姫とリアム先生が何かあった事を雰囲気で気づく。
アルベルト王子はソフィア姫の手をひいて中庭に勝手に向かう。
リアム先生が追いかけようとしたらフォルトに止められる。
「まあまあリアム隊長落ち着いて! ソフィア姫の影にはもう1人いますから安心されたらどうですか?」
リアム先生はそれを聞いて諦めがついた。
その頃ソフィア姫は手を握られただけでドキドキしていた。
中庭に着くとアルベルト王子が話し始めた。
「ソフィア……僕に話したい事があるんじゃないか?」
ソフィア姫はアルベルト王子が何を聞きたいのか分からなくて首を傾げた。
「え?」
「リアム隊長と何かあったんじゃないか?」
ソフィア姫は動揺して、つい憎まれ口を言う。
「自分は女性たちと楽しそうに話してたくせに……そんな事を言える立場?」
「僕が女性と話してた? ああソフィアを待っていた時か……ソフィアの事ばかり考えていたから彼女たちの話しなんて覚えてないけど……君が気分を害したのなら謝るよ。ごめんソフィア」
ソフィア姫はくだらない事で謝らせてしまって自分が傲慢な女性のような態度で嫌気を感じた。
でもアルベルト王子のソフィア姫を喜ばせる返事は反則だ。
ソフィア姫の感情はぐちゃぐちゃだ。
「違う……謝らせたかったわけではないの……」(私ったら……もうこんな事になるならリアムと結婚すると言えば良かったのに! まるで……アルの事が……)
アルベルト王子が真剣な顔で言う。
「ソフィア……僕の気持ちは変わらない……だから僕を選べ」
それを聞いてソフィア姫は胸が苦しくなった。
(そんな事を言うなら教えてよ……私が玉座についたら……また私を殺すの?)
レイブルは鷹の姿で飛び出てきた。
「おい! ソフィアが困ってる。王国の問題を解決してからソフィアを口説きなお坊ちゃん」
レイブルはソフィア姫の肩に乗りソフィア姫の頬に顔をすり寄せた。
レイブルに邪魔をされた上にソフィア姫に馴れ馴れしくされてアルベルト王子は内心では凄く怒っていた。
ニッコリと笑顔を見せてアルベルト王子は言う。
「レイブル……次ソフィアの顔に触れたらシェフに鷹料理を作らせますよ」
「おっ! やんのか? 男の嫉妬は見っともないぜ!」
アルベルト王子とレイブルは睨み合う。
ソフィア姫は呆れた感じでレイブルを叱る。
「レイブル喧嘩を売らないで!」
アルベルト王子は冷静になる。
ソフィア姫は話した。
「レイブルの言う通りまずは王国の問題を片付けましょう。アルベルト王子にも手紙で知らせたけど龍王の剣についてロイド王子に事前に手紙を出したのだけどロイド王子によるとシーパウル王国は治安が悪くて山賊が城に盗みに入られて龍王の剣を盗まれたらしいの。詳しい話はロイド王子に今から聞こうと思って……」
その時、男の声がする。
「俺を呼んだかな? 久しぶりソフィア」
13歳の少年で金髪、青い瞳のロイド王子が現れた。
「お誕生日おめでとう。今日も君は可愛いね。俺の花嫁候補になってほしかったのに……他の人と婚約して残念だよ」
アルベルト王子とレイブルはロイド王子がチャラそうな奴に見えたので警戒の目で見た。
ソフィア姫は笑いながら話す。
「ロイド王子またお世辞を言ってふふふ……ありがとう。ロイド王子、聞いたわよ! 婚約間近と噂を……」
ロイド王子は肩の力を落として話す。
「あっ……その話だけど……上手くいかなかったから……」(ずっとソフィアを口説いたが今も気づいてもらえないとは……)
ロイド王子はソフィア姫の顔を切ない顔で見つめた。
ソフィア姫は励ましの言葉を言う。
「ロイド王子……気を落とさないで、あなたは紳士で魅力的でお話しも上手だからお相手ならすぐに見つかるわ」
アルベルト王子とレイブルは何となく気づいてロイド王子がとても可哀想な奴に見えてきた。
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