第10話 女王と斧

ソフィア姫は剣で押したが逆にアルベルト王子に押されてしまう。

ソフィア姫は廊下の床を強く踏み止まろうとするがズルズルと押されていく。

ソフィア姫は精一杯の力で剣を振りほどいた。

ソフィア姫は瞬時に壁を駆け上がり壁を思いっきり蹴りアルベルト王子目掛けて飛び込む。

ソフィア姫は剣の先端で突くように剣を突き出すと、アルベルト王子は余裕な顔で素早く攻撃をかわす。

剣は床に刺さりソフィア姫はタメ息をついて言う。


「はあ……ここは狭いので外で決着をつけましょう!」


アルベルト王子はニッコリ笑って答える。


「いいですよ」


ソフィア姫は厳しい練習をしたが力の差は圧倒的にアルベルト王子が上だった。

しかし臆する事なくソフィア姫は胸を張って歩き出す。

軍の野外演習場に2人が向かうとリアム先生とメイドとフォルトが後に続く。


「アンナ! ララ! 武器の用意をお願いします!」


メイドのアンナとララが大きなバケツを4つほど持ってきた。

大きなバケツの中は斧のダブルヘッドアックスで全長30センチほどの小型の物が大量に入っていた。

バケツからダブルヘッドアックスを取り出しアルベルト王子を的にしてソフィア姫は投げた。

ダブルヘッドアックスは縦に回転しながら凄いスピードで飛んだ。

アルベルト王子は左右に移動して避けて戦いを楽しんでいた。

ソフィア姫は当たらなくてイラつき叫ぶ。


「こうなったら数打ち当たれよ!」


アルベルト王子は思った。


(ソフィアの体力が減るだけだと思うけど……)


ソフィア姫は少し息を切らしながら言う。


「アンナ次の武器!」


「はい、ソフィア姫」


ソフィア姫は次に斧のバトルアックス全長120センチの大型の物を出してアルベルト王子に向かってハンマーのように思いっきり縦に振り下ろす。

アルベルト王子は後ろに飛ぶように避ける。

ソフィア姫が3回振ったが当たらない。

また攻撃をすると、またアルベルト王子が飛んだ。

その時にソフィア姫はアルベルト王子が着地する場所を予測してカルトロップの罠を仕掛けた。

カルトロップは踏むと足に刺さる道具。

闇の中に仕掛ければ踏む可能性があるが、明るい場所に仕掛けても役には立たない。

案の定アルベルト王子は踏まないように着地する。

ソフィア姫は更にカルトロップをまいて囲う。

アルベルト王子は少し呆れてソフィア姫に質問する。


「コレで僕が止めれると?」


「これから止めてみせますよ! アンナ、武器をこちらに!」


「はい! かしこまりました!」


アンナは張り切って武器を運ぶ。

ソフィア姫はダブルヘッドアックスをまた投げた。

するとアルベルト王子は攻撃を避けて高くジャンプをして言う。


「無駄ですよ」


完全にアルベルト王子にソフィア姫を舐めている。

ソフィア姫はバケツに入った水をアルベルト王子の着地する所にまいた。

アルベルト王子は着地寸前だったので水がまかれた場所に着地してしまう。

アルベルト王子はすぐに地面の違和感に気づいた。

足が地面にくっついている。

アルベルト王子は本当の罠にかかったのだ。




ソフィア姫とリアム先生は前々から戦略を考えていた。

リアム先生がソフィア姫に話しかける。


「今から頑張っても剣術はアルベルト王子の力には追いつけません。しっかり作戦を立てましょう」


「頭と心臓を集中的に攻撃するとか?」


ソフィア姫は剣を振り回す素振りを見せる。

リアム先生は呆れ顔。


「剣術のレベルがアルベルト王子が上なんですよ。そんな攻撃は時間の無駄です。そうですね。難しいかもしれませんが腕か足を狙って動けなくする事の方がまだ望みがあるかもしれません」


「斬るのね!」


ソフィア姫はアゴに手を少し擦るような仕草をしながら悪い奴みたいな顔で悪巧みをしている。

リアム先生はもうソフィア姫の態度に反応するのを辞めて話しを進めた。


「コホン! 力が上の者を斬るのは無理でしょう。アルベルト王子を拘束します」


「えっ! 縛るの? 無理よ!」


「縛らなくても動けなくする方法はいくつかあります」


ソフィア姫は首を傾げて言う。


「毒を飲ませて動けなくするの? 毒は使えないのよ!」


「毒は使いません」


「じゃあどうするの?」


「ある粉が水で濡らすと餅のように粘りがでて接着剤になります。それを上手く使って足を拘束します」


「へー! とり餅大作戦ね!」


ソフィア姫は高笑いをする。

リアム先生は少し心配そうに見ていた。




ソフィア姫はカルトロップをまいた時にこっそり粉もまいておいた。

そして作戦通り後から水をかけて粉がべとつきアルベルト王子の足は地面とくっついた。


「これは……」


アルベルト王子は少し驚いたが楽しそうに笑っている。


「驚きましたよ……次はどうしますか?」


「余裕でいられるのも今のうちよ! 覚悟しなさい!」


ソフィア姫はバトルアックスを持ってアルベルト王子の後ろにある外壁目掛けて走る。

アルベルト王子はソフィア姫を目で追いながら右側上半身だけ半分振り返るように後ろを見た。


(真っ向勝負で戦わないのか? 何をする気だ?)


外壁にはたくさんのダブルヘッドアックスが刺さっている。

ソフィア姫はダブルヘッドアックスのハンドル部分に飛び乗り次から次へと上にあるダブルヘッドアックスに飛び乗りながら階段代わりにして2階くらいの高さまで上がった。

アルベルト王子が一直線上になる位置のダブルヘッドアックスのハンドルに止まり狙いを定めてる。


(出鱈目に投げていたと思ったが後ろの外壁に刺していたのか……この高さで落ちた斧を受けるのは……剣が耐えられない!)


ソフィア姫は鋭い顔つきで飛び降りて叫ぶ。


「その命頂きます!」


ソフィア姫はバトルアックスを振り下ろす。

アルベルト王子は地面に剣を突き刺してから上半身だけ半分ほど右側に振り返る。

ソフィア姫のバトルアックスがアルベルト王子の右肩に当たる寸前にアルベルト王子は左側に重心を少し倒して攻撃を避けてバトルアックスのハンドルを右手で掴み流れるように地面に叩きつけるように突き刺す。

ソフィア姫は武器を地面に突き刺された勢いでクルッと体が逆さまになり空中で逆立ち状態。

その瞬間だけゆっくりと時が流れたような感覚がして景色がハッキリ見えてアルベルト王子と目が合った。

アルベルト王子はソフィア姫と目が合って一瞬ドキッとした。

ソフィア姫の目には涙が溢れていたからだ。

ソフィア姫は吹っ飛びそうになるがアルベルト王子が素早くソフィア姫の左腕と左肩を掴み引き寄せた。

アルベルト王子は仰向けに倒れた。

ソフィア姫はアルベルト王子の上に重なるように仰向けで倒れる。

ソフィア姫は体が痛くてアルベルト王子の上に倒れたまま動けない。

アルベルト王子は地面に思いっきり倒れて少し気を失ったが、すぐに気がつく。


「うっうっ……ソフィア姫……大丈夫ですか?」


「ええ大丈夫。助けてくれて、ありがとう。私よりアルは大丈夫?」


「殺されそうになりましたが大丈夫ですよ」


「あっ……」


ソフィア姫は殺したい人の体を気遣うなんて変な話だ。

敵だと頭で分かっていても心が、どうもついていけない。

正直き言えばソフィア姫はアルベルト王子に助けられて嬉しかった。

気持ちが浮き沈みして頭が混乱しソフィア姫は困り苦笑いして空を見上げて黙る。

やっと体が動けそうなのでソフィア姫が動こうとするとアルベルト王子はソフィア姫を優しく抱きしめた。

ソフィア姫の顔が一気に赤くなり騒いだ。


「この状況で抱きしめるなんて反則よ!」


ソフィア姫はアルベルト王子の上から必死で降りようとする。

アルベルト王子は強く抱きしめた。


「僕の上から降りない方がいいと思いますけど……」


「離してよ!」


「ダメですよ!」


ソフィア姫はアルベルト王子の手を振り解きコロンと地面に転がると足がベットリとしてソフィア姫はハッとした。

ソフィア姫は自分が仕掛けた罠にハマったのだ。

粘着力がある液体のせいで地面に靴とズボンがくっついた。


「だから言ったのに……ズボンを脱がないと抜け出せませんよ」


ソフィア姫は叫ぶ。


「アンナ! ララ! 目隠しになる物を持って来て! あとアルに目隠しをして!」


「僕は覗きなんかしません!」


「分かってるけど! 肌が見えちゃったら恥ずかしい……」


「僕よりリアム隊長に肌を見せないように気をつけてください!」


「婚約者でもない人に肌を見せるわけないでしょ!」


アルベルト王子は自分の発言を冷静に考えると嫉妬をしているかのような発言をした事に恥ずかしくなり顔を赤くする。


(僕は何を言ってるんだ? 僕が好意を示せばソフィア姫は好意をいだくと思って積極的にしたのに……上手くいかない事ばかり! どうも調子が狂う)


ソフィア姫はアルベルト王子の発言をあまり理解できていないが自分の発言が婚約者なら肌を見せていいような発言だったので慌てながら否定した。


「あっ! あなたにも見せないわよ!」


2人はムスッとした顔をして睨み合った。

執事のフォルトが近づいてきた。


「仲良し中に申し訳ありません。今からお二人を救出準備を致します」


ソフィア姫とアルベルト王子は同時に同じ言葉を言う。


「仲良くない!」


フンッとした怒った顔で2人は顔を合わせないようにお互い違う方向を見た。

救出するためメイドのアンナとララがベットのシーツを広げてカーテンのようにする。

ソフィア姫は隠れながらその場で靴とズボンを脱いで起き上がり新しい靴に履き替えた。

しかしズボンはもう一枚用意してなかったのでタオルを腰に巻いた。

アルベルト王子も執事たちがシーツをカーテンにしてアルベルト王子は新しいズボンに着替えた。

ソフィア姫はタオル姿で恥ずかしそうにしていた。

リアム先生がソフィア姫に声をかける。


「ソフィア姫その姿では歩きにくいので私が抱えてお連れ致します。」


ソフィア姫は返事をする。


「ありがとう。お願いしますわ」


リアム先生がお姫様抱っこをする。

アルベルト王子は面白くないような目で見ていた。

急いでリアム先生は部屋に向かっていたがソフィア姫の様子がおかしい。

ソフィア姫の顔が真っ赤だった。


「どうかしましたか?」


「リアム……もっとゆっくり……タオルがズレます!」


恥ずかしそうに言われると、さすがにリアム先生も恥ずかしくなった。


「申し訳ありません。ゆっくりですね」


ソフィア姫は赤い顔でお願いする。


「お願いします」


ゆっくり歩いて部屋に入る。

あとはメイドのアンナとララに着替えを任せた。




その頃、執事のフォルトは対戦の後片付けをしながら思った。


(外壁の石積みの繋ぎ目の粘土部分に斧を刺す事は難しい……数本は刺さらずに落ちたようだが、この数を刺せるとは……動かない者なら確実に仕留めれるはず。動きの予測の力がつけば簡単に狩ができる。王族の力……恐ろしい)


執事のフォルトは高く飛び上がり外壁に刺さったダブルヘッドアックスのハンドルを掴みズボッと抜く。

それを何度も繰り返しズボズボ抜く。

それの姿を暇つぶしかのようにアルベルト王子は近くで見ていた。


「アルベルト王子、ソフィア姫に派手にやられましたね」


それを聞いてアルベルト王子は怒らずに笑っている。


「油断は禁物と言うが本当だ」


執事のフォルトが助言を言う。


「ソフィア姫……見込みがありますね。彼女が更に成長しら、避けたり防ぐだけじゃ自分の命が守れなくなりますよ。自分を守る為にソフィア姫を返り討ちする事になるかも……アルベルト王子がソフィア姫を殺す日がくるかもしれません」


アルベルト王子は暗い顔で呟く。


「僕が……そんな事できるわけないだろ……」


執事のフォルトはさっきまでニコニコしていたが怖い顔に変わりアルベルト王子に話す。


「あなた様はエターナル王国の王子です。それをお忘れですか?」


アルベルト王子は苦しそうな顔て呟く。


「分かってるよ」


アルベルト王子はフォルトを真っ直ぐ見ているが表情が浮かない顔をして言う。


「僕の運命は地獄だな」


フォルトは頷いた。

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