第9話 裏切り者は女王と戦う運命
ソフィア姫は馬車に乗りアルベルト王子の別荘に行く。
「急ぎましょう」
ティアラ嬢の邸宅から馬車が急いで出発した。
急いでいるせいで馬車の中は激しく揺れた。
その状態で数分もすれば朝食を食べたばかりのソフィア姫は胃が気持ち悪くなった。
朝食のエッグが胃から逆流して喉まで上がってきて酸っぱい味を感じた。
吐きそうでソフィア姫の顔が青ざめた。
ソフィア姫は両手で口元を押さえて吐くのを我慢する。
「うっうっ……うっ!!」
到着してリアム先生が馬車のドアを開けると乗り物に酔って横たわり気持ち悪そうにしているソフィア姫がいた。
それを見たリアム先生は心配するどころか、やりたい放題していたソフィア姫にいい罰だと思って少し笑って声をかける。
「勝手な事ばかりするからバチが当たりましたね」
「何!? 今の私に口答えするとはいい度胸ね! あなたに向かって吐いてやる! あぁダメだ……目眩がする」
動けないソフィア姫をリアム先生がお姫様抱っこをして別荘の中に連れて行く。
その姿を見たアルベルト王子が心配そうな顔で駆けつけ声をかける。
「どうしました!?」
リアム先生が答えた。
「ただの乗り物酔いですよ」
それを聞いてアルベルト王子は大した事がなくて一安心した顔をする。
すぐにいつも通りの凛々しい顔に戻る。
「休ませる必要がありますね。寝室まで運んで下さい」
リアム先生は頭を軽く下げてお礼を言う。
「お気遣い頂きありがとうございます」(アルベルト王子がソフィア姫の事を心配する様子は演技とは思えない……必要以上にソフィア姫を気にかけるのは何か裏でもあるのか?)
執事のフォルトが寝室まで案内する。
ソフィア姫は目眩のせいで眠っている。
リアム先生がソフィア姫をベッドに横にしてあげると髪が乱れてソフィア姫の唇に髪が掛かる。
リアム先生が人差し指で優しくサッと髪をはらったらソフィア姫は寝ぼけながら言った。
「ありが……とう……」
リアム先生はソフィア姫の頬に優しく手を当て微笑んだ。
「安心してお休み下さい」
アルベルト王子は勝手について来ていたので、その様子を見てイラついていた。
アルベルト王子はリアム先生に話しかける。
「私が見てるのでリアム隊長はさがって大丈夫ですよ」
少し空気がピリついた。
「私にはソフィア姫の護衛の仕事があります」
「護衛は僕で十分ですよ」
「ソフィア姫の命令で私が離れる事が許されておりません」
アルベルト王子とリアム先生はバチバチと睨み合う。
その時ソフィア姫がまた寝言を呟いた。
「アル……アルベルト……」
アルベルト王子は一瞬だけ照れたが冷静を装いながらソフィア姫に話しかけた。
「どうしましたか? ソフィア姫?」
アルベルト王子はソフィア姫の手を握った。
ソフィア姫は眠ったまま眉間にシワをよせ叫んだ。
「気持ち悪い吐くっうっ……」
「え!!」
今の大変な状況に慌てる。
リアム先生は急いでメイドを連れて来た。
メイドのアンナが桶を持ってソフィア姫に声をかける。
「ソフィア姫、我慢しなくても大丈夫ですよ」
アンナはソフィア姫の体を起こして背中を撫でて桶を顔に近づけてあげる。
ララもソフィア姫の背中を撫でる。
執事のフォルトは寝室が騒がしい事に気づき駆けつける。
フォルトはアルベルト王子に声をかける。
「ソフィア姫に恥をかかせてはダメですよ。お部屋から早く退出を……」
執事のフォルトは急いでアルベルト王子を部屋から連れ出す。
ソフィア姫の嗚咽を吐く声が響た。
「ゔっえ〜〜〜〜」
蛇口から水が飛び出したかのようにソフィア姫は嘔吐した。
*お見苦しいのでしばらくお待ち下さい。
アンナとララの良い働きで事を終えソフィア姫はもう少しだけ休む事にした。
疲れのせいかソフィア姫はすぐに眠りにつく。
ソフィア姫は夢の中で剣を握りアルベルト王子の首を跳ねる。
すると周りが真っ暗になり魔女のルーラが現れ話し始めた。
「アルベルト王子に殺される前に殺してやるというのは乱暴だが最短な対処法として正しい。それに君は王国を守る為に頑張ったと賞賛される。ああ女王様は何をしても正しい。女王様だから正しい」
「なんだか私が自分の理想像の為なら何でもするサイコパスのように聞こえる……アルを止めないと恐ろしい未来しかないのよ!」
「王子を殺して何になる? エターナル王国が戦争しないとでも思っているのか? どう見ても君は怒りを優先してる! 少し考えたらどうだ? 女王様……」
ソフィア姫は驚いて目が覚める。
気がつくと右手に感触があり右側を見るとアルベルト王子がソフィア姫の手を握ったまま居眠りをしている。
「アル……」
ソフィア姫の目から涙が溢れ出た。
死ぬ前の世界で…
トゥインクル王国の王城でソフィア姫が風邪で何日も寝込んでいた時に毎日アルベルト王子が見舞いに来てくれた。
アルベルト王子はソフィア姫の手を優しく握り言う。
『風邪をひいた時は何だか心細いだろ……僕が一緒にいるから安心して』
そう言ってアルベルト王子は握っていた手を口元に近づけソフィア姫の薬指にキスをした。
ソフィア姫は照れてしまい顔は真っ赤。
違う意味で熱が上がりそうだった。
『アルに……風邪を……うつしちゃう……』
『意外と僕の体は丈夫ですよ。それにもし僕が風邪をひいたらソフィアを悲しませる事になる……それは嫌です! だから僕は絶対に風邪はひきません!』
『無茶苦茶な事を言うのね』
2人は同時に笑った。
アルベルト王子との思い出。
しかしトゥインクル王国が炎の海になる光景がソフィア姫の目にパッと浮かぶ。
ソフィア姫は残酷な現実に引き戻された気分で眠るアルベルト王子を見つめる。
(何であんな事になったの?)
ソフィア姫が見つめているとアルベルト王子が目を覚ました。
ソフィア姫は急いで手で目を擦り涙を誤魔化して顔が見えないように左側を向く。
「僕……寝てました……」
「起きたら居るから驚きましたわ」
アルベルト王子はソフィア姫の顔を覗こうとしたがよく見えない。
しかしソフィア姫のまつ毛に付いている涙がキラッと光ったのが見えた。
アルベルト王子はソフィア姫が泣いていた事に気づく。
「僕が……怖いですか?」
ソフィア姫はアルベルト王子の顔を見れなかった。
「……怖い……です……」(優しかったアルが全て嘘で……王国を滅ぼすなんて……)
ソフィア姫は右側に顔を向ける。
「アル……」
アルベルト王子の顔が今にも泣きそうな顔をしていた。
ソフィア姫は胸の奥に何か刺さるような痛みを感じ苦しくて声が出なくなった。
アルベルト王子は椅子から立ち上がり静かに部屋を出る。
ソフィア姫は追いかけようとしたらリアム先生が腕を掴んだ。
「彼は敵ではないのですか?」
「分かってる! でもっ!」
ソフィア姫はリアム先生の手を振り解き裸足のままで部屋を飛び出して行く。
(あんなの演技かもしれない……でもどこかで希望を持ちたい自分がいる!!)
ソフィア姫は廊下でメイドたちとすれ違う。
メイドたちは裸足のソフィア姫を見て驚いていた。
ソフィア姫はお構い無しに必死に走った。
アルベルト王子の部屋の前でアルベルト王子に追いついた。
アルベルト王子を後ろから抱きしめるように引き止めた。
「アル待って! ハァ……ハァ……」
アルベルト王子は振り返らない。
ソフィア姫はアルベルト王子の背中に頭を当て両腕を掴む。
「私が怖いのは……アルに裏切られる事よ!」
アルベルト王子は何も答えずに全く動かない。
(ああ……この反応は……伝えるべきではなかった……今の彼に希望を持った私が馬鹿だった……)
ソフィア姫はアルベルト王子から離れて部屋に戻ろうとする。
アルベルト王子はソフィア姫を引き止めないといけないと思って振り返り左手でソフィア姫の右手首を掴み引き止めた。
アルベルト王子は胸が苦しくなりながらもソフィア姫の顔を見ようをする。
ソフィア姫はアルベルト王子に顔を見せないようにする。
ソフィア姫は泣きそうな顔をしていた。
「ソフィア……顔を見せて……ソフィア……僕も……」
アルベルト王子にソフィアと馴染みのある呼ばれ方をされてソフィア姫は死ぬ前の世界のアルベルト殿下を思い出した。
アルベルト王子はソフィア姫の手を引き寄せて抱きしめようとした。
しかしソフィア姫は抱きしめられる前に手を振り解き睨みを効かせた顔で向かい合った。
アルベルト王子の顔は困った顔をしていた。
ソフィア姫は右手の人差し指でアルベルト王子を指差した。
「私は裏切り者を倒さなければなりません!!」
アルベルト王子の目の色が暗くなり冷たい表情になる。
リアム先生が後ろから来て声をかける。
「ソフィア姫、昼食のご用意が出来ました。お部屋にお戻りください」
ソフィア姫も暗い顔をしてスカートを軽く摘み上げてアルベルト王子に挨拶をしたがアルベルト王子の顔を直視できたなかった。
「失礼しますわ」
リアム先生は裸足のソフィア姫をお姫様抱っこをして連れて行く。
「子供みたいな行動をして……」
リアム先生は少し呆れていた。
ソフィア姫はリアム先生の首に手を回して首に巻きつく。
それから悲しそうに言う。
「今は……子供だもん……」
リアム先生は毅然とした態度で表情一つ変えない。
「以前ソフィア姫は子供扱いするなと申していました」
「意地悪!」
「そうですね。私は甘くないです」
ソフィア姫はムスッとした顔で怒りを分かりやすく表現して見せたのにリアム先生はソフィア姫のご機嫌を取ろうとしない。
ソフィア姫が1人で怒って馬鹿らし見えるのでリアム先生はついフッと笑ってしまう。
ソフィア姫は笑われて少し拗ねたがリアム先生はこういう人だと諦めた。
「少し気がゆるんでいましたわ。対戦までに気を引き締めます!」
ソフィア姫は覚悟を決めたような強い目をしていた。
その頃アルベルト王子は部屋に入ると兄上のアトラ王子がソファーに腰掛けていた。
アトラ王子は体調が悪い顔を隠すため目元に黒のハーフマスクをつけていた。
「兄上!」
アルベルト王子は青ざめた顔をする。
するとアトラ王子は睨んだ目をして話す。
「部屋の前で……僕に嫌がらせかな?」
「嫌がらせだなんて……そんなつもりはありません。だだ喧嘩をして……お騒がせして申し訳ありません」
アトラ王子は少し笑いながら立ち上がりアルベルト王子の左肩に右手を乗せ耳元で囁く。
「アルが女と喧嘩ね……ソフィア姫の事……俺に任せてもいいんだよ」
アルベルト王子は表情が一瞬固まったが、すぐに答えた。
「兄上のお手を煩わせるわけには! 僕がやります!」
アトラ王子は不適な笑みを浮かべて答えた。
「そうか……困ったらいつでも手を貸す」
アトラ王子は部屋を出て帰っていく。
食事を早く済ませてソフィア姫はアルベルト王子の所に行こうとする。
ソフィア姫は白い軍服姿で剣を握りしめて凛々しい顔で廊下を歩く。
アルベルト王子の部屋の前に立ち止まり部屋をノックした。
部屋から出てきたアルベルト王子の手には剣が握らせる。
その姿を見てソフィア姫は目を細めて睨みながら言う。
「嫌な人ね……何で私の行動が分かるの?」
「婚約者だらですよ」
「婚約者……その婚約者は今日で終わりよ!」
ソフィア姫はアルベルト王子に向かって剣を縦に真っ直ぐと振り上げ下ろし斬りかかる。
アルベルト王子は余裕な表情で攻撃を剣で受け止めた。
ソフィア姫はそのまま剣を強く押し込むと剣がキシキシと音をたてる。
ソフィア姫はアルベルト王子を強い視線で睨む。
運命の対戦が幕開けした。
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