第7話 裏切り者は女王を困らせたい
アルベルト王子の招待状に書いてあった、お茶会の日がやってきた。
今回のお茶会はエターナル王国の次世代の子供たちが集められている。
大体の者はソフィア姫と初対面なので相手からは敵か味方かジロジロと見定められる日にもなる。
ソフィア姫は戦場に行くような思いで気合いが入る。
別荘のお城に着くと執事のフォルトが入り口で待っていて広間に案内してくれた。
ソフィア姫が広間に入ると大臣の御子息と御息女はヒソヒソ話す。
「来たわよ!」
「本当に仲間内の会に来たのかよ」
心地よく思ってない者からの睨まれる怖い視線を感じた。
しかし2人の御息女がソフィア姫に近づく。
それはマーガレット嬢とレベッカ嬢だった。
マーガレット嬢が話しかける。
「ソフィア姫お久しぶりです。今日はソフィア姫が贈って頂いたイヤリングを付けてきました。どうでしょう?」
ソフィア姫が笑顔で答えた。
「マーガレット嬢お久しぶりです。思った通りイヤリング似合ってるわ」
レベッカ嬢もはしゃぐ様に話しかける。
「ソフィア姫お久しぶりです。私にも素敵なネックレスをありがとうございます」
ソフィア姫はレベッカ嬢の肩に手を乗せてネックレスとレベッカ嬢をよく見てニコニコして言う。
「レベッカ嬢もお久しぶりです。レベッカ嬢もネックレス使ってくれて嬉しいわ。レベッカ嬢も似合ってるわ」
マーガレット嬢がワクワクしながら話す。
「ソフィア姫のおすすめの本は、とても面白かったですわ」
頷きながらソフィア姫は言う。
「あの本はマーガレット嬢が好きな物語りだと思ったの! 気に入ってくれて嬉しいわ。続きが出たら、また本を貸しますわ」
周りの人はマーガレット嬢とレベッカ嬢がソフィア姫と仲良く話しているのが不思議でたまらない。
あの3人の繋がりが分からない。
周りの人は興味がわいて話に入ろうとする。
いつの間にかソフィア姫の周りには人集りができる。
ティアラ嬢も驚いていた。
(どーして! マーガレットとレベッカがあの女と仲良くしてるの?)
誰かがコソコソ話をしているのがティアラ嬢の耳に聞こえてきた。
「てっきりティアラ嬢とアルベルト王子がソフィア姫をおもてなしするかと思っていた……」
「いやいや! ティアラ嬢はアルベルト王子を取られて悔しがってるし……あの性格だ! もてなすはずがない!」
「確かに……そうね」
「それに前の社交会の話を聞いたか? ソフィア姫を見たいとワガママを言って社交会に参加したらしい」
「大人でもないのに社交会に参加したの!? あの社交会はアルベルト王子とソフィア姫に貴族たちが挨拶する会よ。婚約者のティアラ姫が参加するのは分かるけど……社交会に参加する年齢にもなっていない子供のティアラ嬢が行くのは場違いだわ」
「ティアラ嬢の行動には困ったものね」
「全くだよ。それよりソフィア姫がマーガレット嬢とレベッカ嬢に贈った物を見たか?」
「ええ! 綺麗な贈り物よね」
周りの人はソフィア姫を最初は警戒していたがマーガレット嬢とレベッカ嬢と仲良くしている姿を見てソフィア姫にいい印象もち仲良くなりたいと感じたらしい。
お茶会はソフィア姫で盛り上がった。
実はこの結果はソフィア姫が対策をしたからだ。
4ヶ月前……
トゥインクル王国のソフィア姫の部屋。
「私がパーティーで不当な扱いを受けない為にも友達が必要ね。記憶をたどってエターナル王国で対応が良かった人と友達になりましょう。でも相手の事をよく知らないと上手く友達になれないかも……リアム! 相手の事を内密に調べ尽くしてちょうだい!」
「パーティーに参加しない選択はないのですか?」
「エターナル王国の事を調べる為にもパーティーに参加しなきゃ! 過去の私は子供で……ティアラ嬢と大喧嘩になって出入り禁止に……お父様にも凄く怒られたから同じ事は絶対にしない!」
(パーティーを出入り禁止になる姫なんて聞いた事がない……これはトゥインクル王国の恥……協力した方がいいな)「どなたをお調べになるのですか?」
「マーガレット嬢とレベッカ嬢よ!」
リアム先生は人を雇いマーガレット嬢とレベッカ嬢を半月くらい調べさせた。
調べ終わるとソフィア姫に報告する。
リアム先生は調べた事を読み上げた。
「マーガレット嬢は毎週木曜に本屋に自分の足で行きます。本好きで有名なようです。次にレベッカ嬢はピアノにバイオリンなど音楽の才能がありコンクールで優勝をしております。あとオペラが好きで毎週土曜日はオペラに行っています」
ソフィア姫はニコニコして言う。
「毎週木曜はマーガレット嬢の行く本屋に私も通いましょう! それからレベッカ嬢が行くオペラにも行くわよ!」
「もしかして話しかけようと言うのですか?」
「そのつもりよ」
ソフィア姫はウィンクをしながら言った。
リアム先生は呆れた顔をする。
数日後にソフィア姫は調べた本屋に来店した。
本屋の中は図書館のようにたくさんの本がならんでいる。
事前にソフィア姫はマーガレット嬢がどんな本が好みか調べて同じ分野の本を読み尽くした。
マーガレット嬢はファンタジーが好きなのでファンタジーのコーナーに向かう。
オレンジ色の髪の毛でエメラルドグリーンの瞳をしたマーガレット嬢がいた。
あとは話すきっかけだがソフィア姫が考えたのはタイミング良く同じ本を手にとる作戦にした。
マーガレット嬢を観察して、そのタイミングがやってきた。
ソフィア姫は慌てたせいで自分のスカートを踏んでドンッと転けた。
マーガレット嬢は音にビックリして横を見ると転けているソフィア姫と目が合った。
ソフィア姫は恥ずかしくて顔を真っ赤にしている。
「大丈夫……ですか?」
マーガレット嬢がソフィア姫に手を伸ばし起こしてあげる。
「ありがとうございます。少し本を探すのに夢中になってスカートを踏んでしまいましたわ」(思ってたのと違うけど話すきっかけができたわ)
「夢中になるお気持ち分かります」
「私、実はここの本屋は初めて来ましたの。トゥインクル王国の本は全て読んだけど……エターナル王国の本は初めて見ますわ」
マーガレット嬢が首を傾げながら質問する。
「あのもしかして……ソフィア姫でしょうか?」
待ってましたと言わんばかりにソフィア姫は前のめりで自己紹介をする。
「トゥインクル王国第一王女ソフィアです!」
マーガレット嬢が驚いた様子で自分も自己紹介をする。
「わあっ! あっ名乗らずに失礼いたしました。エターナル王国のスミス外交大臣の第一息女のマーガレットです。でもソフィア姫が何故このような場所に?」
「ただ本を読むのが好きでエターナル王国の本屋も見てみたいと思って足を運びました。あの……マーガレット嬢よろしければエターナル王国のおすすめの本を教えて頂けないかしら?」
マーガレット嬢は笑顔で答える。
「はい。喜んで」
マーガレット嬢は本を探しながら本の解説もしてくれた。
ソフィア姫も読書は好きだったのでワクワクしながら話しを聞いた。
マーガレット嬢と一緒に10冊の本を選んだ。
「マーガレット嬢のお陰で良さそうな本が選べました。お礼がしたいのだけど……」
「お礼だなんていいです!」
「しかし……そうだ! 私の本を貸すのはどいかしら? トゥインクル王国の本を是非読んで! 本好きの交流会だと思って! ねえ? どうかしら?」
「トゥインクル王国の本が読めるなんて嬉しいです!」
「では私のお城で本を一緒に選びましょう。来週の木曜日10時この本屋の前で待ち合わせはどうかしら? 予定は大丈夫?」
「大丈夫です! 楽しみにしていますわ!」
マーガレット嬢は嬉しそうだ。
ソフィア姫はなんとかこれでマーガレット嬢と距離が縮まった。
土曜日ソフィア姫はオペラ会場に向かった。
オペラ会場は広くて4階席まである。
ワインレッド色の席に統一されてシャンデリアの優しい灯りで照らされて落ち着いた空間。
アルベルト王子がロイヤルボックス席を予約してくれていた。
ロイヤルボックス席の部屋に入るとアルベルト王子がいた。
「アルベルト王子! 公務が忙しいので来られないとお聞きしましたが?」
ソフィア姫は苦手な物を見るような目をしている。
ソフィア姫の表情などお構い無しにアルベルト王子は笑顔で答える。
「ソフィア姫とオペラを鑑賞するため公務を急いで終えてきました」
「そうでしたの……お席をとって頂きありがとうございました」(余計な気を遣う)
ソフィア姫は苦笑いをしながらチラッとリアム先生を見た。
リアム先生も少し困った顔をする。
その時、執事のフォルトがロイヤルボックスの扉を開けて誰かを連れてきた。
青い髪色、青い瞳、グリーンのドレス姿の女の子が尋ねてきた。
それはレベッカ嬢である。
「アルベルト王子ごきげんよう。元気そうで何よりです」
「やあレベッカ嬢、君も元気そうで良かったよ。レベッカ嬢もオペラ鑑賞か。こちらは僕の婚約者のソフィア姫だ」
レベッカ嬢が笑顔で挨拶をする。
「ソフィア姫、初めましてハリス財政大臣の第一息女のレベッカです。今日はお会いできて光栄です」
ソフィア姫も笑顔で挨拶する。
「レベッカ嬢、初めてトゥインクル王国第一王女のソフィアです。こちらこそ! 会えて光栄ですわ! 私オペラが大好きなの! レベッカ嬢もオペラはお好き?」(ラッキーだわ。お目当ての人が来たわ)
「はい。好きで毎週オペラを鑑賞していますわ」
「まぁ素敵! こちらに座ってオペラのお話しをしましょうよ」
「よろしいのですか?」
レベッカ嬢はチラッとアルベルト王子を見た。
ソフィア姫が笑顔で話す。
「もちろん、いいわよね! アルベルト王子?」(レベッカ嬢よりアルが邪魔!)
ソフィア姫は笑顔でアルベルト王子を見つめる。
その顔を見てアルベルト王子は仕方なさそうに頷く。
レベッカ嬢は気を遣いながらもお邪魔することにした。
「ではお話しを少しだけ……」
レベッカ嬢はソフィア姫の左側の席に座る。
ソフィア姫はレベッカ嬢に話しかける。
「レベッカ嬢はオペラは何が好き?」
「えっと……ばらの騎士です……」(不倫がでるものはまずいかしら?)
「情熱的ね。ばらの騎士は先週鑑賞してきたのよ。ねーリアム」(大人しそうだけど過激なのが好きなのね)
リアム先生が答える。
「はい。素晴らしい歌声で感動しました」
ソフィア姫も感想を言う。
「本当に歌も素晴らしい。それから恋苦しさで涙が出たわ」
レベッカ嬢は興奮して言った。
「ソフィア姫もですか! 私もそう思います!」
ソフィア姫はレベッカ嬢の勢いに少し驚いた。
レベッカ嬢はソフィア姫の耳元でこっそり話す。
「まさかそちらの方はソフィア姫のばらの騎士ですか?」
ソフィア姫は目を大きくして驚く。
ソフィア姫はくすくす笑った。
それからレベッカ嬢の耳元で返事を返す。
「御冗談を言わないで……リアムは私の勉強の教師と騎士を勤めてるけど勉強の時に私を見る彼の顔が鬼のようでね……」
リアム先生は怒った顔で咳払いをする。
アルベルト王子はクスクス笑った。
ソフィア姫は苦笑いしてから真面目な顔で話し始めた。
「でも私は自分の結婚は自分で選びたいと思っています」
アルベルト王子が真剣な顔をして聞いた。
「僕を選んでくれますか?」
ソフィア姫は見下した顔で言う。
「どうかしら? あなたが生きていれば選んであげてもいいわ」
アルベルト王子は微笑む。
「生きて君との愛を神に誓います」
アルベルト王子はそう言いながらソフィア姫の右手を取り右手の甲にキスをした。
ソフィア姫は一瞬固まってしまうが、すぐにツンとした顔を見せて右手を引いてヒラヒラ軽く振り言う。
「神の審判が許しません事を祈りますわ」(息の根を止めてやるー)
アルベルト王子はクスクス笑っている。
レベッカ嬢は2人を見て顔を赤くして思った。
(オペラよりも凄い情熱)
アルベルト王子が懐中時計を出して言う。
「そろそろ始まるかな? 始まる前に僕は少し席を外すよ」
「あっ! 私は自分の席に戻ります!」
アルベルト王子が席を立つとレベッカ嬢も席を立った。
ソフィア姫はレベッカ嬢を引き止める。
「レベッカ嬢こちらで鑑賞しましょうよ」
「あの私……お邪魔じゃないですか?」
レベッカ嬢はアルベルト王子をチラッと見て顔色をうかがう。
アルベルト王子は苦笑いした。
甘えた子犬の顔をしてソフィア姫はお願いする。
「みんなで鑑賞した方がもっと楽しいですわ。ねぇアルベルト王子もそう思いませんか?」(レベッカ嬢と仲良くなりたいのだから一緒にいたい!)
ソフィア姫の勢いに負けてアルベルトは諦めた顔をして言う。
「ああ遠慮する事はない。ここで鑑賞しなさい」
「ありがとうございます」(本当にいいのかな?)
レベッカ嬢は席にまた座りアルベルト王子はロイヤルボックスから出ていく。
ソフィア姫はレベッカ嬢の耳元でこっそり話す。
「実はレベッカ嬢がいてくれると助かります。私アルベルト王子と2人っきりが苦手なのよ」
「はあ……」(でも仲良しに見えるけど?)
アルベルト王子が少し席を外している時に誰かがソフィア姫に挨拶を申し入れに来たようだ。
入り口で執事のフォルトが対応している。
ソフィア姫は振り返り首を少し下げてカーテンの隙間から覗くように見る。
入って来た人物の姿は黒い髪で黒いハーフマスクの仮面をつけた子供。
仮面の子供がこちらに気づきソフィア姫の方に顔を向けたら真っ赤なルビーのような瞳が見えた。
ソフィア姫はビックリして立ち上がる。
(黒髪に赤い瞳に仮面……アルベルト王子の兄上のアトラ王子だわ)「アトラ王子、初めましてトゥインクル王国第一王女のソフィアです」
「初めましてエターナル王国第一王子のアトラです。お会いするのは初めてなのに僕だと気づくとは驚きました」
「髪と瞳がアルベルト王子にそっくりでしたので……」(自分が死ぬ前に何度か会ったと言えないわ)
レベッカ嬢も挨拶しようとしたが……
アトラ王子が左手を軽く上げた言う。
「レベッカ嬢だね……堅苦しい挨拶は抜きで大丈夫だ。2人とも席にかけて。今日はソフィア姫に挨拶だけでもと思い急に押し掛けて申し訳ない」
「アトラ王子が私にご用とあれば私の方から足を運びましたのに! 会いに来て頂き嬉しいですわ」(さすが双子だわ。声もそっくりね)
アトラ王子が仮面をつけている理由は体が病弱で顔色が悪いのを人に見られる事を嫌がっているからだ。
病弱で社交会やお茶会やパーティーにも参加はしない。
病弱のせいでエターナル王国では大臣や貴族がアルベルト王子が王様にふさわしいと言う声もある。
しかしルーファス王はアトラ王子を受け継がせると決めてアルベルト王子をトゥインクル王国の婿にした。
周りを鎮めるには苦労しただろう。
ソフィア姫はアトラ王子を座席に誘導しよう声をかける。
「すぐにアルベルト王子が戻ってきますわ。こちらの席にどうぞ」
「いや……申し訳ないが僕はこれで帰るよ」
「そうでしたか……ではまたお城でお会いできるのを楽しみにしております」
静かな風のようにアトラ王子は去っていく。
しばらくしてアルベルト王子が戻ってきた。
ソフィア姫はアトラ王子が来た事を伝えるとアルベルト王子は驚いた様子で言う。
「兄上が!?」
ソフィア姫はアルベルト王子が兄の体調を心配している事を知っていたので兄の様子を伝えた。
「本当に体調が良さそうでしたよ」
心配そうな顔でアルベルト王子は言う。
「しかし……あまり無理しないでほしい……」
ソフィア姫は頷き思った。
(後継で周りが騒ぐけど……2人は仲がいいのよね)
オペラが始まり3人で鑑賞した。
それからレベッカ嬢と次のオペラを一緒に見る約束した。
計画どおりにソフィア姫はマーガレット嬢とレベッカ嬢と何度も会い4ヶ月かけて順調に交友を深めた。
お茶会当日マーガレット嬢とレベッカ嬢のお陰で楽しく過ごせた。
今回の行動でソフィア姫には大切な友達ができた事には間違いない。
ティアラ嬢はソフィア姫に意地悪ができずに大人しくしていた。
その様子をアルベルト王子は見て思った。
(ティアラ嬢が手も足も出ないのはビックリだな)
アルベルト王子は何もないのが詰まらないのでソフィア姫に意地悪をしたくなった。
ソフィア姫の耳元で小声で話しかけた。
「瞼に何かついています。僕がとるので目を閉じてください」
アルベルト王子の目は真剣だが口元が笑っている。
アルベルト王子はソフィア姫の顔に手を伸ばすがソフィア姫は手を避けて小さな声でアルベルト王子と会話した。
「何ですか? もしかして私をからかっています?」
「どうしてそう思うのですか?」
「だって顔が悪い事をしようとしている顔です!」
「はい。当たってます。ソフィア姫が可愛いので……つい」
「思ってもないくせに可愛いって口にしないで」(そうか! 恋愛事にしつこい女性たちに仲睦まじい関係を見せつけて……私を盾代わりにするつもりね!)
「僕は口にしたいのです」
ソフィア姫はその言葉にドキッしてしまい顔を赤くした。
アルベルト王子の吸い込まれるような赤い瞳がソフィア姫の目をじっと見ている。
それからアルベルト王子の目はソフィア姫の唇を見つめた。
言葉攻めからの目でモノを言う感じの攻めにドキドキと胸の高鳴りが響く。
ソフィア姫は扇子を素早く開き顔を隠した。
ソフィア姫は頭の中で呪文のように暗殺という言葉を唱えた。
(暗殺……暗殺……暗殺……)
アルベルト王子はクスクス笑う。
こうしてお茶会は無事に終えた。
https://kakuyomu.jp/users/ebetennmusube/news/16818093074027621896
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