第4話 女王と月夜の契約

リアム先生が16歳の時にアラン公爵邸宅での出来事。


「王族と縁談がくるかもしれん……日頃から恥じた行動はするな!」


忠告するのはリアムの父のアランであった。


「承知致しました。父上、私はこれから騎士団の練習がありますので、これで失礼いたします」


リアムはそう言い部屋を出る。


(6歳の姫と結婚……子守りじゃないか……)




リアムはアラン公爵家の次男で父のアランから国の為、王族の為にと教育されてきた。

今まで反抗はしなかったが自分の決められた人生にうんざりしていた。

軽装で騎士団の練習場で剣の練習をする。

リアムは怒り任せに剣を乱暴に振った。

練習の相手は親友で右腕のハルトがする。


「荒れてるなあー」


「ハルト! 今俺は虫の居所が悪い話しかけるな!」


「そんなんじゃ足元をつかれますよ!」


「黙れ!」


ハルトは素早くしゃがみリアムの足を蹴りつけてリアムはバランスを崩して後ろに尻もちをつく。


「ほらね! 顔を洗って頭を冷やしてこいよ」


リアムは自分が悪いのだがイラつきがおさまらなくてハルトを殴りたかった。

しかし殴りたい気持ちを抑えてリアムは手洗い場に行く。

リアムは汚れた手を洗う。

それから顔を洗いタメ息をついた。


「はあ……」


「どうぞ」


白いハンカチを差し出し声をかけたのは6歳のソフィア姫。

リアムは無愛想な顔をして答えた。


(今見たくない顔だ……)「ハンカチはいりません!」


「早く拭かないと風邪ひくわよ!」


更に声をかけられてリアムはソフィア姫を見る。


「……」(無愛想にしても絡んでくるとは……子供だから仕方ないか……)


ソフィア姫は不思議そうな顔で聞いた。


「どうかしました?」


リアムはプイッと顔を逸らしながら言う。


「何でもないです……」


ソフィア姫はハンカチをしまいながら言う。


「まあいいわ! 私、急いでるから失礼します」


ソフィア姫は急いで何処かに行こうとする。

よく見るとソフィア姫の服は街の子供のような服だった。

リアムは怪しく感じて引き止める。


「どこに行かれるのですか?」


ソフィア姫は無邪気な笑顔で言う。


「ついてくる?」


ソフィア姫は走り出す。

リアムは無邪気な笑顔が気になりこっそりソフィア姫の後を追う。

ソフィア姫は塀に近づき何か探している。

よく見ると塀が壊れて穴があいている。

そこをソフィア姫はくぐり外に出た。

リアムは慌てながら追いかけて叫ぶ。


「姫!」(護衛なしでは危ない!)


ソフィア姫は驚きながら振り返る。


「えっ! 本当について来たの!?」


「危ないです! 姫、戻りましょう!」


ソフィア姫は自分の人差し指を口の前で立てながら言う。


「姫姫言わないで! 今はただのソフィアよ!」


リアムは呆れた顔をする。


「何を言ってるのですか! 帰りますよ!」


「いや! あなただけ帰れば!」


ソフィア姫は走り出すがリアムがソフィア姫の手を掴む。

ソフィア姫は不適な笑みを浮かべて言う。


「叫ぶはよ!」


そう言われてリアムは仕方なく手を離す。


(困った姫だな……しかし……ほっとけない……)


リアムは何度も帰ろうと説得するがソフィア姫は言う事を聞かない。

途中たくさんの人がソフィア姫にあいさつをする。


「おはよ。ソフィア」


「おはよう。元気そうねレノン」


どんどん進みソフィア姫は市場でフルーツをいくつか買う。

それから住宅地に向かい小さな家の庭に入って家のドアをノックする。

家から茶色いロングヘアの23歳くらいの女性が出てきた。


「ナターシャ約束どおり赤ちゃんを見に来たわ! お土産にフルーツ!」


「本当に来てくれたの嬉しいわ! お土産もありがとう。赤ちゃんはベットよ……ソフィアこの人は誰なの?」


「後をついてきたのよ!」


ナターシャが怖い顔をして拳を出す。


「ソフィアを誘拐する気!?」


リアムは汗を出しながら慌てる。


「そんなっ違います!」


ソフィア姫は腹を抱えて笑いながら言う。


「あはは! ナターシャ彼は騎士よ!」


ナターシャは自分の拳をチラッと見てから拳を後ろに隠す。


「もーなーんだ! それならそーと早く言ってよー!」


ソフィア姫はクスクス笑いながらベビーベットを覗くと可愛い男の子の赤ちゃんがいた。


「わあ! 可愛い……トゥインクル王国にようこそ!」


赤ちゃんはボケーッと眠そうだ。

可愛い赤ちゃんを見てソフィア姫は微笑む。

そんなソフィア姫を見てナターシャは笑顔になる。

奥の部屋からナターシャの旦那のサムが出てきた。


「おはよう。ソフィア」


「おはよう。サムお邪魔してます」


ソフィアは友達の家に来たような感じで馴染んでいた。

リアムはナターシャに聞く。


「あのソフィア様が誰かをご存知ですか?」


「ふふふ……当たり前よ! ここら辺の人は姫だって知ってる。最初きた時はソフィアの事を王族の変人者あつかいをしてたけど……あの子、王族なのに偉そうにしないし。それに街を知ろうと通ってる……私もみんなもソフィアが大好きよ。あっ! お城には秘密にしてあげて」


「私が黙っていても、いつかバレてしまいます。それに危ないです」


「街のみんなが見守ってるけど……そうね……あっ!今度から、あんたが護衛してやんなさい」


リアムは困った顔をする。

困っているリアムと反対にソフィア姫はイキイキとした顔でいた。


「ナターシャ赤ちゃんの名前は何て言うの?」


「まだつけてないの……良かったらソフィアが名付け親になってくれない?」


「嬉しい! いいの?」


「私たちはソフィアに名前をつけてもらいたいの」


ソフィア姫は嬉しそうな顔で笑った。

それからソフィア姫は名前を考えた。


「エリオン……どうかしら? この子には太陽が輝く大空を見て笑顔でスクスク育ってほしいわ」


「素敵じゃないか! エリオン! ソフィアありがとう」


ナターシャはエリオンを抱っこした。

しばらく雑談をしてからソフィアは予定があるので帰る事にした。


「ナターシャまたね」


「またねソフィア、名前をありがとう」


「うん。じゃあ」


リアムはソフィア姫の後を追う。

ソフィア姫は俯きながらリアムに言う。


「心配かけて、ごめんなさい。私はこの街を自分の目で見たいの。だからこの事は秘密にしてください!」


「ダメです!」


ソフィア姫は困って必死に言う。


「お願いよ! 女王になった時に私が王国の事を何も知らないなんて嫌なの! 私は、王国の民に何ができるか考えなきゃいけないのよ!」


リアムは腰を曲げてソフィア姫と目線を同じにする。


(与えられた環境に甘える事なく……まだ小さい子供なのに自分の出来る事を必死に考えている……私なんかより立派だ……)「はあ……1年待って下さい! 私があなたの護衛になってみせます! その時に私と街を周りましょう。明日、街のみんなにそう伝えましょう!」


ソフィア姫は笑顔になる。


「ありがとう」


リアムは頬を少し赤くして照れた。

今まで親に言われるがままに王族と王国の為に尽くしたが、自分から姫の為に動く事はリアムにとって大きな変化だった。

リアムは必死で頑張り約束通りソフィア姫の護衛の地位になった。




懐かしい記憶を思い出してリアム先生は思う。


(未来から来たソフィアが変わらず真っ直ぐな人で良かった……彼女の為に何でもしたい)


リアム先生はソフィア姫を大切に思っていた。




今夜の社交会はアルベルト王子の婚約者が初めてお披露目になるのでエターナル王国の貴族と著名人がたくさん参加する。

夕方からお城の道は馬車の行列だ。

アルベルト王子の誕生祭の時にソフィア姫はお披露目される予定だったが、アルベルト王子がソフィア姫と今日の社交会に参加したいと強い要望を出した。

その話を聞いた貴族たちはアルベルト王子がソフィア姫に惚れ込んでいると噂したので街中ではソフィア姫がどんな美しい姫なんだと大騒ぎになっている。

社交会が始まるとソフィア姫を一目見ようと貴族たちが次々と押し寄せてソフィア姫とアルベルト王子に挨拶をした。

しかし貴族や著名人たちは拍子抜け、ソフィア姫は可愛いのだが絶世の美人まではいかない。

でも貴族たちはアルベルト王子が惚れ込む姫だから何か秀でた姫にちがいないと考えて、もしかしたらソフィア姫は知識が高く品のある素晴らしい姫なのかもしれないと妄想を膨らませた。

それで貴族と著名人たちにはソフィア姫の顔が凄く賢い顔に見えた。

貴族の女性がコソコソ話す。


「さすがアルベルト王子の婚約者だわ! 可愛らしいお顔で口数は少なくて控えめで優しい声で言葉遣いが上品でしたわ。きっと頭が良くて素晴らしい方よ」


聞こえてきた話にアルベルト王子は笑いそうになり我慢する。

その話を聞いたソフィア姫は間に受けて鼻高になり胸を張る。

アルベルト王子はソフィア姫の自信満々な様子を見て余計に笑いが込み上げて我慢できずにクスクス笑う。

ソフィア姫はアルベルト王子が笑っている事が気になった。


(え! なんで笑ってるの? もしかしてスカートがめくれてる? 何が変?)





その頃お城の中では人目を避けて歩き回る赤髪で瞳がエメラルドグリーンの青年がいた。

アルベルト王子が使用している部屋の前に青年は立ち扉を開けようとしたが鍵が掛かってので鍵穴に細い針金を挿して鍵を開けて侵入する。

中から鍵をかけて暗闇の中で物色をする。

机の引き出しから王様の手紙を見つけて読んでみたが親子の身体を気遣う内容で、たわいもない話が書かれていた。

青年はタメ息をつき、また物色をするが、廊下から人の気配を感じて青年はとっさに机の陰に隠れた。

気配の人物はアルベルト王子の部屋の鍵を持っていたので鍵穴に鍵を挿してガチャッと鍵を開けて部屋に入ってきた。


「断りもなく部屋に入られては困りますね」


部屋に入ってきたのは執事のフォルトだった。

青年は机の上にあったペーパーナイフをこっそり手に取る。


「ハルト副隊長こちらのお部屋はアルベルト王子の部屋になります。お部屋をお間違えではございませんか? 私がお部屋までご案内をします」


フォルトの言う通り忍び込んだ青年はハルト副隊長だった。


(何で分かった? 入るのを見られたか? どうする……入り口の突破は無理そうだ……窓から逃げるか)


ハルト副隊長は腕で自分の顔を隠し立ち上がって素早くペーパーナイフをフォルトに向けて投げたが避けられてペーパーナイフは扉にトンッと刺さった。

フォルトは向かってきたがハルト副隊長は窓から飛び降りた。

フォルトはスーツの上着の内側から仕掛けが付いたテグス糸を取り出してハルト副隊長に向かって投げ腕に絡ませ捕まえた。

ハルト副隊長は宙吊りになって思わず声を出す。


「あっ!」


ハルト副隊長は下を覗いて驚く。

下には忍び返しの剣先が上に向かって、たくさん立ち並んでいる。

窓から逃げた者は剣に刺さる仕掛けだ。

フォルトが窓から顔を出して声をかける。


「ハルト副隊長、命拾い致しましたね」


「そのようですね……助けて頂きありがとうございます」


「次からは行く先に何があるかをご確認をされてから進むのが良いですよ」


フォルトに命を救われただけでなく教訓まで言われてしまいハルト副隊長は自分の未熟さに反省をした。

フォルトが素早くハルト副隊長を引き上げた。


「ご案内します。先程のように何処かに行かれても見つけるのは得意なのでご安心ください」


それを聞いてハルト副隊長はタメ息をついて思った。


(獲物を捕える鷹かよ)


ハルト副隊長はフォルトの後ろについて歩きながら質問した。


「僕は牢屋ですか?」


フォルトは笑顔で答えた。


「いえ、社交会が行われている広間にご案内を致します」


ハルト副隊長は首を傾げながら驚いて叫ぶ。


「はあ!? どうしてですか!?」


フォルトは淡々という。


「私はアルベルト王子からお申し付けを受けて行動しております。このような事態は想定済みです。お客様を無事に広間に案内するよう言われておりました」


ハルト副隊長はフォルトの事を睨みながら質問した。


「想定していたなら普通は何か罰をあたえるものでしょう?」


フォルトは笑顔で伝えた。


「必要ありません。ハルト副隊長はただの迷子でございました……どうぞ広間でございます」


フォルトが広間の扉を開ける。

ハルト副隊長は真顔で質問した。


「ただの迷子で済ますのですか?」


フォルトは笑顔で首を傾げながら質問に対して言う。


「では迷子でないと?」


「……」


ハルトは睨んだがフォルトを睨んでも仕方ないと思い、広間に入って行く。


「どうぞ社交会をお楽しみ下さい」


フォルトは笑顔で言って扉を閉める。

ちょうどソフィア姫とアルベルト王子のダンスが始まる。


(アルベルト王子はダンスが得意でも中身が大人の私とのダンスはどうかしら? 隙があれば暗殺する!)


ソフィア姫は不適な笑みを浮かべる。

ソフィア姫はまずダンスのテクニックでアルベルト王子を圧倒しようとしていた。

音楽隊が演奏を始める。

ソフィア姫とアルベルト王子は向かい合って手を組む。

最初は優雅に踊り中盤からだんだん激しくなっていく。

その時ソフィア姫の胸谷間あたりにキラリと光る物が見えた。

耳元でアルベルト王子が囁く。


「危険なお姫様は、また武器をお持ちですか?」


アルベルト王子はダンスのどさくさに紛れてソフィア姫の胸元から先が尖った小さなスティックを抜き出す。

ソフィア姫は頬を赤くし小声で言う。


「レディの胸に触るなんて紳士として最低ね!」


踊りながら余裕な笑顔でアルベルト王子は答えた。


「え? 触れてないと思いますが……」


ソフィア姫は触れてないと言われたのが胸がないと言われたようでイラついた。

ソフィア姫は踊りながら武器を取り返そうとする。


「それを返しなさい」


しかしアルベルト王子は顔色ひとつ変えずに激しく踊りながら武器を渡さない。

周りからはソフィア姫とアルベルト王子が息ピッタリに踊っているように見える。

ソフィア姫は悔しくて眉間にシワがよる。

アルベルト王子がそれを見てクスッと笑う。

2人のダンスは激しさが更に増した。

最後にソフィア姫がそり返りアルベルト王子が左手でソフィア姫をしっかりと支えてピタッと止まった。

可愛いカップルのダンスが大人顔負けの素晴らしいダンスなので周りの者は盛大な拍手で大盛りが上がり。

ソフィア姫はダンスが激しかったので少し体が火照る。

アルベルト王子は笑顔で声をかける。


「ソフィア姫、今夜は満月です。夜風に少し当たりながら2人で月を見ませんか?」


引きつった笑顔で返事をする。


「ええ喜んで」(武器を返せ武器を!)


ソフィア姫とアルベルト王子が外に出るとリアム先生がソフィア姫の肩に姫の上着を掛けてくれた。

それから執事のフォルトがドリンクをソフィア姫とアルベルト王子に渡す。

その時アルベルト王子はソフィア姫から奪った武器をフォルトに渡したのでソフィア姫は目を丸くしながら驚く。

武器を取り返すのを諦めたソフィア姫はドリンクを一気に飲んで喉の乾きを潤した。

それはまるでヤケ酒かのような飲み方だった。

その様子を見ていたアルベルト王子はクスッと笑いドリンクを一口飲む。

フォルトがソフィア姫のカラのグラスを受け取り聞く。


「お飲み物のおかわりはご用意しましょうか?」


「ありがとう。もういらないわ」


アルベルト王子は月を見て話す。


「ソフィア姫、月が綺麗です」


「えぇ綺麗ね。それに月明かりが雪を照らしてキラキラしてるわ」(月が綺麗です? 月よりもアルの方が綺麗でしょ! さっきも女性たちにキャーキャー言われてさぁ)


頭の中で捻くれるソフィア姫。

アルベルト王子が真剣な顔をしてソフィア姫に話しかけた。


「ソフィア姫、話があります」


「はい……?」


「回りくどい話は抜きで申し上げます。ソフィア姫は僕を殺したいのはなぜですか?」


ストレートすぎてソフィア姫は驚いて目を少し泳がせながらどう答えようか考えた。

アルベルト王子が真剣な顔なのでソフィア姫は暗殺したいとハッキリ言う事にした。


「こちらもストレートに申しましょう。歴史的に長く争い合った王国が平和協定を結ぶ事に私は賛成です。しかし王子と結婚するのは寝首を切られそうで信用できません。婚約破棄ができないから手荒ではありますが暗殺しようと思いました」(未来で何がおきたかは言えないけど、これで納得するかしら?)


「良かった僕の事が嫌いではないのですね。ではお互いの意見を尊重して譲り合うのはどうでしょうか? 僕はソフィア姫と結婚したいと考えています」


冷たい顔でソフィア姫は言う。


「それは無理よ、私はあなたを暗殺したいのよ!」


アルベルト王子は笑顔で答えた。


「大丈夫です。ソフィア姫は僕を思う存分に暗殺をしてください」


ソフィア姫は息を飲むよう驚く。


「自分が何を言っているか分かってますか?」


「もちろん分かってます。でも暗殺する条件をつけさせて頂きます。条件は6つです。条件1はソフィア姫が僕を暗殺する事が許されています。他の誰かに暗殺させるのはダメです。条件2は暗殺方法の制限です。放火殺人と有毒ガスと毒殺に睡眠時と公共の会での暗殺はやめて下さい。周りに迷惑がかかるのは困ります。条件3はこのお城の中だけで暗殺する事。後片付けや僕の遺体の処分はフォルトに任せたいので絶対に守って下さい。条件4は僕はソフィア姫の攻撃を防御します。ソフィア姫に怪我をさせない程度に僕は抵抗しますがソフィア姫も怪我がないように気をつけて下さい。条件5はソフィア姫が16歳までに僕を暗殺できなかった場合は僕と結婚してもらいます。条件6は僕とのお茶会やデートの参加をお願い致します」


ソフィア姫は鼻で笑う。


「その条件でよろしいの?」


「これなら僕は結婚できますからね」


ソフィア姫はアルベルト王子が結婚できさえすればいいように聞こえてムカついた。


「でもね! 私は4年以内にあなたを暗殺してみせます!」


アルベルト王子は驚く。


「12歳までにですか!?」


ソフィア姫は鼻を少し上に向けて堂々とした態度で宣言する。


「ええ! 12歳には暗殺は済んでますわ!」


アルベルト王子は一瞬だけ口角が上がり見下した目をしていた。

アルベルト王子はわざとらしく困った顔を見せてソフィア姫にお願いを言う。


「はぁ……それでは僕が困ります。ソフィア姫どうか条件5は12歳までに暗殺できなければ結婚する条件に変更して頂けませんか?」


ソフィア姫は大人な対応をしてみせる。


「まぁ可哀想なアルベルト王子に免じて変更してもいいわよ! 私は大丈夫です」


リアム先生が見かねて声をかける。


「ソフィア姫!」


ソフィア姫は自信満々に答えた。


「リアムご心配なく平気よ!」


アルベルト王子はクスクス笑いながら話す。


「ありがとうございます。12歳に変更しますね」


フォルトがすぐにハイテーブルを用意して契約書を修正して契約書をソフィア姫に見せた。

リアム先生がアルベルト王子に声をかける。


「アルベルト王子よろしいですか?」


アルベルト王子はリアム先生に警戒しながらも凛とした態度とって返事をした。


「どうぞ」


リアム先生はお辞儀をしてから質問した。


「この内容はエターナル王国のルーファス王は承諾しているのでしょうか?」


アルベルト王子が答えた。


「もちろんです。ルーファス王に僕から説得して承諾済みです」


リアム先生は話す。


「私たちも契約書を王国に持ち帰りレオナルド王の許可を頂いてからのサインをします」


そう話してる最中にソフィア姫はサインをしてしまった。


「はい。これでいいかしら?」


フォルトがサインを確認する。

契約書の内容……

エターナル王国第二王子アルベルトとトゥインクル王国第一王女ソフィアの契約書


条件1

暗殺者の制限。

トゥインクル王国第一王女ソフィアがエターナル王国第二王子アルベルトを暗殺する事を許可する。

如何なる時も他者によるアルベルト王子の暗殺は禁止する。


条件2

暗殺方法の制限。

放火殺人、有毒ガスの殺人、毒での殺人を禁止する。

睡眠時と公共の場で暗殺は禁止する。


条件3

暗殺場所の制限。

エターナル王国所有の別荘のお城を暗殺場所として許可する。

別荘のお城以外の暗殺は禁止する。


次に交換条件……


条件4

暗殺の攻撃を許可する代わりに防御を許可する。

トゥインクル王国第一王女ソフィアの暗殺の攻撃をエターナル王国第二王子アルベルトは防御をする事ができる。


条件5

暗殺の許可する代わりに期限を設ける。

トゥインクル王国第一王女ソフィアが12歳になるまでに暗殺をする事。

期限以内に暗殺できない場合は婚約を受け入れる事。


条件6

暗殺を許可する代わりに婚約者として勤めて頂く。

トゥインクル王国第一王女はエターナル王国第二王子アルベルトの婚約者として対応を怠る事は許されない。


契約を破る事は許されない。

エターナル王国第二王子アルベルト

トゥインクル王国第一王女ソフィア

契約書の内容を契約する。


契約書の内容は以上。

フォルトは目を通し終えて話す。


「はい、確かにサインを頂きました。これで契約成立です」


フォルトが契約書をしまう。

リアム先生は青ざめた顔をして言う。


「ソフィア姫! 何度も言ってますが冷静に慎重に事を進めなさいと!」


少し驚いた顔をしたが、すぐに強気の姿勢で答えた。


「問題ないわよ! それとも私が暗殺できないとでも言うの?」


それを聞いてリアム先生は頭が痛く感じる。


(困った人だ……)


アルベルト王子はソフィア姫に右手を伸ばし握手を求める。


「契約成立だね。でも僕はそう簡単に暗殺されないので、このままソフィア姫の婚約者は僕以外ありえません」


ソフィア姫は睨みながら言う。


「暗殺する姫を婚約者に選んだ事を後悔させてみせますわ」


2人は握手を交わす。

ソフィア姫は強く強く強く握る。

アルベルト王子は平気そうな笑顔。

ソフィア姫も笑顔だが自分の握力の限界まで握ったのにアルベルト王子が痛そうにしないから悔しくてたまらない。

リアム先生はその様子を見ていて本当に大丈夫か心配でたまらない。



https://kakuyomu.jp/users/ebetennmusube/news/16818093074881444638


https://kakuyomu.jp/users/ebetennmusube/news/16818093074090300235

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