第3話 裏切り者は女王を招く

今日はアルベルト王子の別荘に行く日。

アルベルト王子の招待状の内容は、お茶会と夜は社交会のお誘いであった。

年齢的に社交会デビューには早いがアルベルト王子がソフィア姫をお披露目したいとの事で元々予定されていた社交会にソフィア姫が参加する。

華やかな社交会だが今日エターナル王国の手によってソフィア姫が暗殺されるかもしれない。

本当に暗殺されるか分からないが念の為に護衛をたくさん連れて行く。

命の危険がある社交会のためにドレスの着替えが必要でメイドの手がいるからメイドのアンナとララを同行させる事になってしまった。

ソフィア姫たちは馬と荷馬車の大行列になりながら別荘に向かう。

道中でもエターナル王国の暗殺者に襲われないかソフィア姫は不安でたまらない。


(暗殺者は山のような大男? それとも色仕掛けをして近づいてくる女? まさか鍛えられたネズミにガブリッ……ひー怖すぎる!!)


ソフィア姫は全てが怪しく見えていた。

馬車の中でソフィア姫は前方の小さな窓のカーテンを少しだけ開けてリアム先生を探す。

先頭にリアム先生が白馬に乗って周りを警戒して進む姿が見えた。

その時、ソフィア姫が覗いている事に馭者が気づき声をかける。


「ソフィア姫、どうかされましたか?」


ソフィア姫は馭者の声に驚きながら答えた。


「いえ! 何でもないわ」


ソフィア姫はすぐにカーテンを閉める。


(なんで私はコソコソしてるの! 私の為の護衛なんだから堂々と見て大丈夫じゃない)


ソフィア姫はまだ驚いた時のドキドキが止まらない。

しかし先ほど見たリアム先生の姿を思い出して心の落ち着きが戻る。


(リアムがいるなら……安心……リアムに任せれば……大丈夫……)


馬車の中でソフィア姫は安心して眠ってしまう。

ソフィア姫は昨晩は暗殺される恐怖と緊張で眠る事ができず心と体が疲れていたのだ。

眠るソフィア姫は夢を見た。

夢の中では霧がいっぱいで薄暗い森にソフィア姫はただ立っていた。

すると霧の中から謎の女の声。


「ソフィア女王」


ソフィア姫はキョロキョロと周りを見て質問する。


「誰?」


何処にいるのか分からない女は質問に答えてくれない。

するとまた女の声がしてソフィア姫に質問する。


「死んだ気分はどう?」


その声は耳元で聞こえた気がしてソフィア姫は驚いて目を覚ます。


(変な夢……でもあの声……何処かで……?)




別荘に到着して馬車が止まりリアム先生が馬車のドアを開けてソフィア姫に手を差し出す。

ソフィア姫は馬車のドアから顔を出してリアム先生の手をとり馬車から降りながら別荘のお城を眺めた。

黒いお城は迫力があり白い雪が黒を余計に引き立て美しく見えた。


(黒いお城なんて珍しい……凄く綺麗……)


荷馬車が到着してアンナたちが降りて急いで荷物を運ぶ。

ソフィア姫は周りを見渡すと別荘の周りは森と川しかないようだ。


(アルは家族と離れてここにいる……寂しくないのかしら? あっ! 裏切り者を心配してどうするのよ!)


俯いて考えていたソフィア姫は急にしゃがみこみ足元の雪をかき集めて顔ぐらいの大きさの雪玉を作る。

立ち上がり両手で雪玉を挟みながら歩き出す。

後ろからリアム先生がソフィア姫の両肩をそっと掴み引き止めて聞いた。


「ソフィア姫、雪遊びですか?」


ソフィア姫は上を見上げると背後にリアム先生の顔が見え質問に答える。


「ええ、アルベルト王子と雪合戦でもしようかと思いまして……」


リアム先生は呆れた顔で注意した。


「風邪をひきますよ」


雪玉を挟んでいるソフィア姫の両手にリアム先生の両手が重なるように触れた。

ソフィア姫は手が触れた事に驚き雪玉を離してしまう。

雪玉がドンッと落ち、その弾みで雪玉は割れて中から1つの岩がゴロゴロと転がり出た。

ソフィア姫とリアム先生は、その転がる岩を目で追う。

3メートルくらい離れた場所で岩が止まりアンナが歩いてきて岩を拾って独り言を呟く。


「ここに岩があると危ないですね」


アンナが邪魔にならない場所に岩を移動させる。

リアム先生の顔を見ないようにしてソフィア姫は意気込みを叫ぶ。


「さぁ! 雪玉を作り直そう!」


リアム先生は鬼のような顔をしながらソフィア姫を呼ぶ。


「ソフィア姫!」


ソフィア姫は青ざめた顔をして逃げ出す。

しかしリアム先生にあっさり捕まりお説教が始まる。


「ソフィア姫! こんな事をして……」


お説教の声を遮るようにアルベルト王子が大きな声で話しかける。


「大丈夫ですよ! 今度から岩は兵士に徹去させましょう」


アルベルト王子はソフィア姫に近づいて笑顔を見せる。

ソフィア姫はスカートを軽く摘み上げてお辞儀をしながら作り笑顔をする。

リアム先生は後ろにさがりお辞儀をして自己紹介をする。


「初めまして、アルベルト王子。私はトゥインクル王国王室騎士団の第二軍隊、隊長のリアムです」


アルベルト王子は軽く微笑みながら自分も名乗る。


「初めまして、リアム隊長。エターナル王国第二王子のアルベルトです。リアム隊長のお噂はかねがね聞いております。素晴らしい騎士だとね」


リアム先生は頭を軽く下げて返事をする。


「ありがとうございます。まだまだ精進いたします」


その時、執事のフォルトが来て大きな声で全員に呼びかける。


「皆様、私は執事のフォルトでございます。寒い中お越し頂き誠にありがとうございます。私がお城のご案内をさせて頂きます」


リアム先生はフォルトの名前を聞いてエターナル王国の英雄と同じ名前で気になり執事のフォルトをジロジロ見た。

年齢は28歳くらいで髪型はオールバック、髪色は淡い紫色、瞳は紫色で右目にモノクルをかけている。


(エターナル王国の英雄はまだ生きているが今は60代くらい……この執事では歳が若すぎる……)


執事のフォルトはリアム先生と目が合って笑顔を見せた。

執事のフォルトに馬小屋の場所を聞いてリアム先生や騎士たちは馬の手綱を握り馬小屋に向かった。

アルベルト王子はソフィア姫を部屋までエスコートしようと声をかける。


「ソフィア姫、雪で足元が滑りやすいですから僕に掴まってください」


ソフィア姫は両手を隠すように後ろにして少し後退りをして離れて返事をする。


「いえ、大丈夫です! 1人で歩けますわ」


その時、ソフィア姫はズルッと滑り前に倒れそうになったが素早くアルベルト王子が向かい合う形で両手でソフィア姫を支えたので倒れずに済む。

その時アルベルト王子はソフィア姫の右手の袖にナイフが隠されている事に気づいた。

こっそりアルベルト王子はナイフを抜き取りソフィア姫の耳元で小声で伝える。


「危険なお姫様、こちらは預かりますね」


アルベルト王子はソフィア姫のナイフを目の前に出して見せた。

ソフィア姫はとぼけた顔で答える。


「あら? それは私の物ではありませんわ……先ほど拾いましたのよ」


アルベルト王子は一瞬目を丸くしたが、すぐに笑顔を見せた。


「そうでしたか」


アルベルト王子は優しい声で、もう一度エスコートを申し出た。


「さあ僕の腕に掴まってください」


「えっ!」(嫌なんだけど!)


ソフィア姫は明らかに嫌そうな顔をした。


「あれ? ナイフに紋章が……」


ソフィア姫は凄く焦った顔で言う。


「私がリアムに渡すからナイフを預かりましょうか?」


アルベルト王子はくすくす笑いながら言う。


「いえいえ、僕が持ってますよ! さあソフィア姫」


アルベルト王子は天使のような笑顔で腕をソフィア姫の前に出す。

アルベルト王子は腕を取らないとリアム先生に告げ口をしますという圧を感じる。

ソフィア姫は嫌だけど腕に手を添えた。

ソフィア姫は笑顔だが歯を食いしばり悔しがる。


(蹴飛ばしてやりたい!)




ソフィア姫たちは案内された部屋でお茶会の時間まで休憩する。

アンナが荷物を整理しながらソフィア姫に話題を口にする。


「ソフィア姫、エターナル王国のドラゴンの伝説はご存知ですか?」


「ええ、確かこの地でドラゴンが暴れ王がドラゴンを見事に倒して平和になりエターナル王国を築き上げる事ができた。王国の伝説ですね」


「エターナル王国はドラゴンの伝説だけではなかったのです! すぐそこの森に魔女が住んでいるらしいです! ララの家はエターナル王国に近くて魔女の噂をよく聞いたそうです!」


ソフィア姫は魔女が暗殺者だったらどうしようかと不安になり顔が怖ばる。


「魔法族がいたのは遠い昔の話でしょ。魔女がまだいるの? ララは魔女を見たの?」


ソフィア姫はガタガタ震えながら聞いた。

連れてきたメイドのララは荷物を整理する作業を止めてソフィア姫の方を向き話した。


「いいえ、私は見たことがありません。食いしん坊な赤毛のメイドなら、よく見かけます」


ソフィア姫は思わず笑う。


「ララ……フフフ」


「私は食いしん坊じゃない! ちょっと人より食べれるの! それから私も髪がキャラメル色の小言が多いメイドなら見かけるわ」


アンナは頬を膨らせながら言い返す。

ララは驚いた顔をして答えた。


「キャラメル……私の事まで食べたいの?」


アンナは髪が逆立つように怒る。


「私は人は食べないよ! ララがキャラメルなら食べようか!」


アンナはそう言いながらララの肩をかじる。


「あれ? なんか甘いかも……」


ララは少し呆れた顔で言う。


「あんたの味覚はどうなってんのよ」


ソフィア姫は笑った。

ララはソフィア姫が魔女の話で怖そうにしていたので、わざとアンナをいじって笑わせた。




しばらくして執事のフォルトが呼びにきて案内される。

お茶会の部屋は赤と黒で統一されて大人の空間で綺麗だった。

執事が紅茶を出し終えるとアルベルト王子が従者たちに声をかけた。


「2人で話しがしたいから皆さん席を外してもらえないかな?」


アルベルト王子の天使のような笑顔を見て従者たちは喜んで要望に答える。


「かしこまりました!」


アンナがソフィア姫の耳元で小声で質問する。


「ソフィア姫、私たちも下がって大丈夫でしょうか?」


ソフィア姫は笑顔だが顔色が悪くなる。


「大丈夫だけど……」(私の命が危ない!?)


ソフィア姫はチラッとリアム先生を見た。


「アルベルト王子、申し訳ございません。護衛の1人は付き添わせて頂きます」


ソフィア姫は安心した顔でアルベルト王子に聞く。


「アルベルト王子いいかしら?」


アルベルト王子は甘えた声で言う。


「僕は2人で話しがしたいです」


アルベルト王子は上目遣いをして目を潤ませ瞳はルビーのように輝く。

その顔を見てソフィア姫は目を丸くさせ固まってしまう。


(悔しいけど綺麗な顔……私にあんな顔ができるかしら……無理だわ!)


ソフィア姫の顔がだんだん赤くなる。

眩しすぎる顔面の攻撃で頭がおかしくなりそうで危ない。

ソフィア姫は瞑想して心を落ち着かせた。

リアム先生が助け舟の一声をかける。


「姫をお守りする為の護衛が離れるわけには……」


執事のフォルトが眉を上げて口を挟む。


「失礼ながらそれは……失言ではありませんか? 王子が姫に危害を加えるかのように聞こえます」


リアム先生はお辞儀をした。


「……お許しください。しかし……」


アンナが慌てながら話しに口を挟む。


「リアム隊長! 私たちは失礼しましょう!」(ソフィア姫の恋の邪魔をしてはいけません)


ソフィア姫は焦る。


(困りますわ!)「ちょっと!」


他の従者たちはゾロゾロ出る。

アンナたちはリアム先生を連れて出ようとする。

ソフィア姫は席から立ち上がりリアム先生の後を追いかけるように扉の前に来たが執事のフォルトが扉を閉めた。

扉の前に立つソフィア姫は絶望の顔をする。


(2人は困ります!)


アルベルト王子が声かけた。


「ソフィア姫、僕が席までエスコートしますよ」


アルベルト王子がニコニコしながらソフィア姫の後ろに近づく。


(ナイフはとられたし、どうすれば……なんとかして自分の身は自分で守らないと!)


ソフィア姫は振り返ると同時にアルベルト王子に抱きついた。

アルベルト王子は顔を赤くして話す。


「ソフィア姫!?」


ソフィア姫は耳元でささやく。


「会いたかった」(まずは抱きしめて油断させる!)


ソフィア姫はアルベルト王子にベタベタ触って武器を探したが武器はないようだ。

アルベルト王子を暗殺したい気持ちが先走る。

しかし今のソフィア姫は体力は子供だから相手に致命傷を負わせる事が難しい。

いろいろ考えがらアルベルト王子の身体検査をしていたらアルベルト王子が声をもらす。


「くすぐったいのですが……フフッ」


それを聞いてソフィア姫は悪巧みを考えた。


(くすぐったいのが苦手か! 何でもいいから懲らしめてやりたい!)「フッフッフッ! 覚悟しなさい!?」


ソフィア姫が思いっきりくすぐるとアルベルト王子は大笑いする。

アルベルト王子はくすぐりに耐え切れずしゃがみ込み後ろに倒れて仰向けになる。

ソフィア姫はアルベルト王子が逃げないように上に乗り捕まえてくすぐる。

ソフィア姫は暗殺できない鬱憤をくすぐりで晴らした。

笑い疲れてアルベルト王子はもう動けないようす。

ソフィア姫はアルベルト王子の腰に乗ったまま勝ち誇った顔で両手をパーにして目の前に出しながら勝利宣言をする。


「私に勝てない事を思い知ったかー!?」


「はぁ……はぁ……あなたには敵いません」


アルベルト王子は、そう言いながらソフィア姫の手と自分の手を合わせて、それから指を絡ませて両手を握る。

それからアルベルト王子は腹筋の力で上半身を起こし上げた。

ソフィア姫は顔が打つかると思いビクッとして目を閉じた。

しかしアルベルト王子は顔を打つけないように寸止めをする。

ソフィア姫が目を開けるとアルベルト王子の顔が目の前にあった。

ソフィア姫は驚きを隠せずに思わず声がでる。


「ビックリした……」


アルベルト王子はクスクス笑う。

ソフィア姫は驚かされたので、ちょっと怒った顔をしながら言う。


「顔が打つかったら痛いのよ!」


アルベルト王子は真剣な顔で質問した。


「顔が打つかっても痛くなければいいのですか?」


ソフィア姫は答えた。


「え? まあ痛くなければいいわ……」(顔を打つけて何が楽しいの?)


するとアルベルト王子はソフィア姫の右頬にキスをする。

アルベルト王子は余裕の表情で微笑む。

ソフィア姫は、さっきの会話で自分がキスにイエスと誘導された事を理解して顔が真っ赤になった。


「こっんなの! 虫に刺されたのと同じよ!」(今すぐに暗殺してやりたい!)


アルベルト王子は初めてのキスを虫と同じにされてイラッとしてソフィア姫に意地悪を言う。


「大胆なソフィア姫ならそうかもしれませんね」


「はあ?」


アルベルト王子は自分の腰にまたがるソフィア姫をジロジロ見た。

くすぐる事に夢中でソフィア姫は自分がどんな状態か分かっていなかった。

我に返ったソフィア姫は叫ぶ。


「いっいやー!」


ソフィア姫が叫んだので部屋の扉が開きリアム先生たちが駆け込み叫ぶ。


「ソフィア姫! ご無事……で……す……か?」


ソフィア姫が叫んだのに、どう見てもソフィア姫がアルベルト王子を襲っている姿にしか見えない。

メイドのアンナが驚いた声を上げる。


「えっ! えっ? えー?」(過激すぎるー!)


メイドのララがアンナに声をかける。


「落ち着いてアンナ! ソフィア姫からお話を聞きましょう」(是非詳しく!)


ソフィア姫は急いで立ち上がりリアム先生に駆け寄り弁解する。


「違うのリアム! これはふざけていたら上に乗ってしまって……」


リアム先生は笑顔だが怒っていた。


「ソフィア姫お茶会は終わりにしましょう。ソフィア姫には、お部屋でお話をしたい事があります」


リアム先生はチラッと鬼のような目を見せた。


「リアム……」(怒られる!)


執事のフォルトがアルベルト王子に近づいて声をかける。


「アルベルト王子、大丈夫でしょうか?」


アルベルト王子は楽しそうな顔で話す。


「大丈夫だよ。ソフィア姫にたっぷり楽しませてもらった」


ソフィア姫はそれを聞いて怒りながら言う。


「ちょっと! 誤解になるような言い方をしないで!」


アルベルト王子は頬を赤くして、恥ずかしがりながら言う。


「誤解? キスした仲なのに……」


ソフィア姫は真っ赤な顔になり言葉が出ない。

みんながソフィア姫に注目していた時にアルベルト王子は一瞬だけ舌をペロっと出してソフィア姫をからかった。

メイドのアンナがキスと聞いて叫ぶ。


「キッキスー!」(すごいー!)


メイドのララがアンナを落ち着かせる。


「アンナ静かに!」(子供なのに積極的!)


ソフィア姫は恥ずかしいのを我慢しながら言う。


「あなたが勝手にした事ですわ!」


リアム先生が強制的に会話を終わらせようと声をかけた。


「申し訳ありませんが、これで失礼いたします」


リアム先生がソフィア姫をお姫様抱っこをして部屋に戻ろうとする。


「ちょっと! 子供扱いしないで! リアム降ろしなさい!」


アルベルト王子はリアム先生を少し睨んだが、すぐに凛とした表情に戻る。

睨まれた事にリアム先生は気づいていたが先を急ぐ。

リアム先生の行動を見ながらメイドのアンナが呟く。


「リアム隊長は親みたいに過保護ですね」


メイドのララは首を傾げて言う。


「そう? 恋人じゃないの?」


メイドのアンナは大きな口を開けて驚いた。


「え? えー!! そうなの?」


メイドのララはクスクス笑いながら言う。


「どうでしょう?」


メイドのアンナは頬を膨らませて言う。


「もー適当な事を言って!」


メイドのララはアルベルト王子と目が合った。

さっきの話しをアルベルト王子はしっかり聞いていたようだ。

アルベルト王子はフンッと言う顔で去る。




その頃リアム先生とソフィア姫は与えられた部屋に戻っていた。

2人用のソファーにお姫様抱っこをされていたソフィア姫が降ろされて座らされる。

リアム先生は隣に座りソフィア姫の両手を握った。


(怒られる……)


ソフィア姫は俯いた。

リアム先生は優しい声でささやいた。


「顔をよく見せて」


ソフィア姫はリアム先生の優しい声に驚く。


「え?」


ソフィア姫は顔を上てリアム先生の方を向く。

リアム先生はハンカチを出してソフィア姫の唇を優しく拭いた。


「いや……リアム……アルがキスしたのは私の頬よ」


話した後にソフィア姫は恥ずかしくて顔が赤くなる。


「……」


リアム先生は体の動きが一瞬止まり顔を赤くさせてがクスクス笑った。

ソフィア姫は笑われて怒る。


「何がおかしいのよ! こっちにされて! 私は今でも怒ってるのよ!」


ソフィア姫は自分の手で右頬をこするとリアム先生が手を掴み止めた。

驚いたソフィア姫はリアム先生の顔を見る。

見つめ合いながらりリアム先生はハンカチで右頬を優しく拭いてソフィア姫に注意する。


「ソフィア姫は油断しすぎです」


それからリアム先生はハンカチをソフィア姫の頭に被せてた。

ソフィア姫はハンカチで目の前が見えなくて叫ぶ。


「え! リアム何でこんな事するの!?」


リアム先生はソフィア姫を抱きしめた。

ソフィア姫は驚いて固まる。

リアム先生はハンカチ越しにソフィア姫の額にキスをした。


(抱きしめられた……あ! 私が避けられるか試されたのね!)


リアム先生はハンカチを取った。

ソフィア姫は偉そうに話す。


「簡単に抱きしめられたのは相手がリアムだからよ! 次は敵に隙なんて見せないわ!」


「ソフィア姫は隙だらけなので、私がしっかりします!」


「子供扱いしないで!!」


ソフィア姫は額にキスされた事に気づいていないのでリアム先生はクスクス笑う。

それからリアム先生は社交会について話し始めた。


「夜の社交会ではたくさんの方と挨拶をします。何かエターナル王国の事が分かるかもしれません」


「裏切りの証拠は出るかしら……」


「それは分かりませんがハルトにも協力をお願いしました」


「ハルト先生!」


ハルト先生は王室騎士団の第二軍隊副隊長でリアムの友人でもある。

ソフィア姫にとってハルト副隊長は剣術の先生である。


「ハルトに未来の事は伝えてませんが、彼はエターナル王国をこのまま信じていいか疑問に思っていたので調査する事に協力してもらえました」


「助かるわ」(社交会で情報を集めてアルを追い詰めてやる!)


ソフィア姫はアルベルト王子にからかわれた仕返しをしたくてたまらない。





その頃アルベルト王子は執事のフォルトと自分の部屋に戻っていた。

アルベルト王子は1人掛けソファーに座り右足を軽く上げて足を組んで座った。

フォルトが近くで紅茶を入れながら話す。


「ソフィア姫にあの件をお伝えしましたか?」


「彼女にペースを乱されて話しができなかったよ」(あんなに馬鹿みたいに笑ったのは久しぶりだ……)


アルベルト王子は思い出してクスクス笑う。


「ソフィア姫には夜の社交会で話し合うよ」


執事のフォルトが心配そうに聞く。


「恐縮ならが本当にそれでいいのですか?」


「賭けだけど……僕が気をつけるだけさ」


アルベルト王子は冷たい表情で笑う。



https://kakuyomu.jp/users/ebetennmusube/news/16818093074085711922


https://kakuyomu.jp/users/ebetennmusube/news/16818093074086112869

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る