第19話 クラブ活動
昼休憩の後、気だるげな午後の授業を耐えると帰りのホームルームだ。
相変わらずやる気のない担任教師、ドローレスは教卓に頬杖をつきながら言った。
「初日の授業お疲れ様。明日からも頑張って登校してくれ……あぁ、そうそう。学校では課外活動が強制されている。どのクラブに入るか、今月中に決めるように。見学は今日から許可されているから、各々の判断で見ていくように――それじゃ、解散」
そう言い残すと、ドローレスは教室から出て行った。
あっさりとした帰りにの挨拶に困惑する生徒たち。
しかし、少し間を開けると各々が帰宅準備を始めた。
中には、さっそくクラブへの見学を考えている生徒も居るらしい。
課外活動か……。
クロードは机に乗ったショパンをさわさわと撫でながら考える。
「問題はどのクラブに所属するかだな。なるべく、のんびり出来そうな所が良い」
「がうがう!」
「ショパンの場合は美味しいものが食べられる所が良いか?」
「がう♪」
クロードとショパンの意見を合わせるなら、のんびり出来て美味しいものが食べられるクラブとなる。
さて、そんな都合の良いクラブがあるだろうか?
「まずは情報収集だな。たしか、校内の情報を集める『情報部』ってクラブが、クラブの情報を集めたパンフレットを作っているはずだ。それを貰いに行こう」
「がう!」
この辺はゲーム知識で予習済みだ。
情報部はゲームでもたびたび出てきて、ルシアンに情報をくれていた。
彼らを頼れば校内の情報はゲットできる。
そうと決まれば善は急げだ。
クロードが学生バッグを掴むと、ショパンがするりとバッグに入った。
それを肩にかけて教室を出る。
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
しかし、そこに待ったがかかった。
「アイラ様、お疲れ様です」
どうやら、アイラが出待ちしていたらしい。
教室を出したクロードの前に飛び出してきた。
なにを慌てているのか、瞳がせわしなく泳ぎ回っている。
まるでマグロのようだ。止まったら死ぬのだろうか。
「く、クロード、貴方さっきの話は理解しているかしら?」
「さっきの話?」
「ほら、お昼の時に話したでしょう。私が好きなのはショパンであって、あ、貴方じゃないからね!?」
「がうぅ……!」
ショパンが短い手で顔を覆って、バッグの中に顔を隠した。
バッグから飛び出た尻尾がブンブンと揺れている。
好きだと言われて照れているようだ。
「はぁ、分かってますけど……」
「そう、それなら良いわ。早く帰りましょう」
アイラはホッと息を吐くと、クロードに背を向けた。
勘違いされることさえ嫌だったのだろうか?
いくらラスボスでも、美少女にそこまで拒否されるとクロードの自称ガラスメンタルが傷つく。
アイラとしては墓穴を掘った形だった。
アイラはさっさと帰ろうとしているが、クロードにはクラブを選ぶ用事がある。
まだ帰るわけにはいかない。
「あ、待ってください。今日はクラブの見学をしようと思ってて……」
「ああ、そういえば貴方たちはクラブに入らなければダメなのね」
「はい。とりあえず、どんなクラブがあるか知りたいので情報部を訪ねようと思ってます」
「そう……それなら私も行くわ。クラブを選ばないと」
「え?」
クロードは首をかしげる。
ゲームだとアイラはクラブに所属していなかった。
やはりドラクロア公国の留学生ということでの免除だ。馬車通学と同じような特別待遇である。
「アイラ様ってクラブに入らないといけないんですか?」
「あ、当たり前でしょう!? 私だって学生なんですから」
「はぁ……」
どうやら、ゲームと展開が変わっているらしい。
もしかするとクロードが一緒に居るせいだろうか。
「じゃあ、一緒に行きましょうか」
「ええ」
アイラはクロードから目をそらした。
クラブに入らないといけないのは嘘である。
(クラスの子が話していたわ。クラブ活動はもっとも『恋が芽生えやすい場所』だって……万が一にも、クロードが他の女に尻尾を振らないよう監視しないと……それが飼い主としての責務よ!)
クロードのクラブ選びに付き合って、最終的には『選ぶのも面倒だから私もそこにするわ』で便乗するつもりである。
やってることは『面倒くさい彼女ムーブ』なのだが……アイラは飼い主という言い訳で自分を納得させていた。
「アイラ様はどんなクラブが良いんですか?」
「特にこだわりは無いわ」
『クロードが居ればそこで良い』とは、口が裂けても言う気がないアイラであった。
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