第11話 ドラゴン用おもちゃ
ラスボス様こと、アイラと出会ってしまってから数日後。
魔法学校に入学する日も迫っている。
学校に入学してしまえば、ショパンとのんびりと遊んでいられる日はグッと減る。
そこで、入学前に思いっきり遊んであげようとクロードは考えた。
遊びに向かったのは広い平原だ。
そこはショパンと再会した森の傍で、ときどき弱いモンスターが出現するのだが、基本的には安全な場所だ。
「いくぞ。ショパン!」
「がう!」
クロードは魔剣を構える。アイラを襲った賊が持っていた物だ。
最初は売ってお金に変えようと思っていたのだが、ためしに振って遊んでいたら、面白い使い方が見つかった。
「行け、取ってこい!」
クロードがブンと魔剣を振るうと、刀身から斬撃のようなビームが飛び出した。
「がう!」
ショパンはそれを追いかけるように走り――ぴょん!
見事なジャンプを披露して、斬撃をキャッチ。
くるりと空中で回転すると、斬撃を投げ捨てた。
ショパンのキャッチによって、進行を変えた斬撃は木に当たる。
ズバン!
鋭い衝撃波と共に、大きな一文字の傷を付けていた。
「がうがう!」
「よしよし、この遊びが気に入ったのか」
「がう!」
ショパンがぴょんぴょんと跳ねるように駆け寄って来きた。
わしわしと顔を撫でると、ブンブンと尻尾を振る。
ショパンは魔剣によるディスクドッグ遊びが気に入ったらしい。
ここ数日は、こうして魔剣で遊んでいる。
「ふふふ、だが甘いなショパン。俺はもっと面白い遊びを思いついたぞ……」
「がうぅ!?」
ショパンは、『なになに!?』と興奮した様子でクロードを囲むように走り回る。
これは期待に応えねばなるまい。
「ちょっと、向こうに離れてくれ」
「がう!」
ショパンは、『分かった!』とクロードから距離をとる。
そうして離れたショパンに向かって、クロードは再び剣を構えた。
びりびりと空気が震える。クロードにはよく分からないが、こうすると変なビームが出るのだ。
「ショパン、これを打ち返すんだ!」
「がう!」
ズバン!!
魔剣から迸る光の奔流。
ショパンはそれに向かってジャンプすると、猫パンチのように光をはたいた。
バヂン!!
打ち返されたビームは球体状に固まると、クロードに向かって飛んできた。
クロードは魔剣をバットのように構えると、ブンと振るった。
気分はメジャーリーガーである。
ズドン!!
返されたビームをさらに打ち返すと、空の彼方へと上って行った。
きっと野球なら満塁ホームラン。
「ショパン。あれを撃ち落とすんだ!」
「がう!」
ショパンは口からブレスを撃ちだし、彼方へと飛んで行ったボール――ではなくビームを撃ちぬいた。
ボガン!!
空には巨大な花火が打ちあがり、爆風がクロードたちの肌を撫でた。
ショパンも見事な射撃である。
「がうぅ。がうがう!!」
「よーしよし。上手くいったなぁ!!」
興奮したショパンは、クロードの足元をグルグルと走り回る。
ショパンが虎なら、バターになってしまいそうだ。
クロードは走り回るショパンを捕まえて、よしよしと撫でまわす。
初めてやった遊びだが、気に入ってくれたようだ。
その後もクロードたちは同じような遊びを繰り返して楽しんだ。
家に帰ると母に死ぬほど怒られた。
近くの村民から、『爆発音が繰り返し鳴っていて怖い』と相談があったらしい。
次からは、もう少し人里から離れた場所で遊ぼうと決めるクロードだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます