第21話 父の日記
父である葉月の日記はとてもきれいな字で書かれている。
『朔夜様は人の形になってから読み書きを学ばれましたから、あまり得意ではなかったのです』
父は生まれた時から人間だし、大学まで出ているもんね。
父は自分の父(祖父)の日記を読んだ頃からの日々の事が書かれていた。
父は人間と月兎のハーフなので自分はどうなのかという不安や、日記が読めている以上月兎の血が濃いのではないかと言う考え、解明したいから大学は遺伝子について学べる学校を探し、卒業したこと。他にも祖母に父の事を何一つ伝えていない葛藤や、母との出会いが書かれていた。
パラパラと捲っていた優弦さんが、ここも見た?と聞いてきた。
そのページは裏表紙をめくった所。一番下に『いつか美月に会いたい。だから必ず父を探すよ。』と書いてあった。
「あーダメだ。泣くぅ....」
優弦さんが慌ててハンカチを出したけれど、私は自分のティッシュで拭いた。
図書館だから、すごく静かに泣いた。
父の言葉の重みと、嬉しさと、そして父や祖父だけでなく、祖母や母の気持ちを考えると、涙が止まらなかった。
私が落ち着くまで3人は待っていてくれた。
「大丈夫?落ち着いたかな?」
『優弦さん、かなり焦っていましたよね』
『そういう事は言うものではありませんよ、祝寿吉』
「ありがとう。お陰様で落ち着いたし、泣いたら少しすっきりしちゃった。」
少し恥ずかしい様な、でも素敵な仲間に囲まれていてこれから頑張れそうな気もした。
「じゃあ、今日は日記の内容が把握出来たという所で解散かな。明日は塾内テストがあるから、また来週だね」
お互い地元ではあるけれど、図書館で解散となった。
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