第20話 祖父の日記

 お腹も満たされた事だしと、午後はとにかく日記を読むことにした。

 2冊の日記を出し優弦さんにも見る許可を出して見てもらう。


「月兎の血筋じゃないと読めないんだよね?うーん....読め....るね。うん、読めるよ。読めるけど、読んで良いの?」


 やっぱり何かしらの力が働いている様だ。


「え、助けてくれるんでしょ?」


『そのための優弦さんと祝寿吉です!』


 そこまで言われたらと優弦さんは日記を読みだした。私は何度も読んでいるので、優弦さんが読んでいない方の日記をパラパラめくりながら時間を過ごした。



 暖かい日差しの入る図書館で少し眠気も感じてきた頃、


「お待たせ。大体頭に入ったと思うよ。」


「え?覚えたの??」


「一字一句覚えた訳じゃないよ。流れというか、雰囲気を掴んだ感じ。だから詳細まで把握は出来てないので悪しからず。」


「いやいや、それも凄いから」


『それはさておき本題に入りましょう。まずは美月さんの御祖父にあたる朔夜様の日記から』


 満月が話を戻し、4人での考察が始まった。



 まず、祖父はもともと月兎族の長の子供だった。月兎も兎同様に繁殖力があり、月も手狭になってきて同年代の仲間と共に地球に来た。

 その時に選択を迫られた事が、兎のままでいるか、人の形に成るかだった。

 兎でいれば月兎の寿命とその後に眷属として生きることをができる。人として生きることを選べば人型になるが2度と兎にはなれない。不慮の事故や病気で亡くなる事はあるが、年を取らなくなるため寿命という概念が無くなる。


 最初に見た時から衝撃だったが、満月も月兎だったのかと聞いたら『今まで言えなくてすみませんでした』と謝られた。


「なんかさ、夢というか現実味が無いんだよね。ただ、歳を取らないんでしょ?なんとなく俺にはわかるな、居なくなった理由」


「別に家族なんだから言っても良くない?」


『美月さん、もし優弦さんが20年後に今と同じ姿でいたらどう思いますか?』


「んー若いままで良いなぁ?とか。」


「じゃあ、50年後だったら?」


「それは。」


『一周回って気持ち悪いですね。はっきり言うと呪われています。』

 満月さん、辛辣しんらつぅ。


『そ、そこまででは無くても、少し違和感は感じちゃうよね。』


「吉は言葉を選んだみたいだけど、要は知り合いや顔見知りが歳を取らないというのは物凄い違和感だよね。」


 それで、祖父は姿を消さざるを得なかったのか。


 じゃあ、地球で生まれた父は?

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