第17話 日記 (7)

「さて、登りますか!」


 登り始めたのは良いけれど何度来てもこの階段に慣れない。階段が苦手な事もあって口数が減りかつ表情が硬くなっていたらしい。


「美月さん、お手をどおぞ!」


 笑いながら優弦さんが手を差し出してくれた。一瞬躊躇ちゅうちょしたけれどお言葉に甘える事にした。無言で私のスピードに合わせてゆっくり登っていく。


「ありがとう。高校生にもなって笑っちゃうよね」


「違う違う、階段苦手なんだね。うちの妹も苦手でよく手を貸してるから『あ、ここにも同じ人が』と思って。」


 そういう意味で笑われたのでは無い事を知って少し安心した。本殿でお詣りをし御朱印を頂いて、下り道は北鎌倉に向かう為に脇道から外に出る事にした。




「バス通りだけど、なんだか時間が緩やかな雰囲気がしてこの道は好きなんだ。」


「紅葉も始まってるけど、この道は夏の間も木陰が出来るし緑がきれいだよね。僕も好きだよ。」


 なんか少しドキッとしたのは秘密にしよう。




 北鎌倉駅方向に少し歩くと、明月院が見えてくる。


「鎌倉は大好きだけどやっぱりここが一番好きかも。ずーっと居られる気がする。」


「ところで何でここには亀が居るんだろうね。」


 うさぎと亀が橋の上で川の流れを見ている。

 その横で満月と吉も川を覗き込んでいる。


「おっと、こんな時間早くしないと閉まっちゃうね」


 階段を少し早歩きで上り、御朱印を頂いて参拝する。


 どうしてもあの丸い窓には何故か惹かれるものがあり、ついつい時間を忘れて見入ってしまう。


 満月と祝寿吉に声をかけられて、美月さんと2人現実に引き戻された。



 美月さんはうさぎ小屋も少し気になった様で見に行ったけれど満月曰く、満月が特別な兎だっただけでもう普通のうさぎしか居ないらしい。


「今日は買物に付き合ってくれてありがとう」


「いえいえ。男子高校生が友達とワイワイ来る場所でも無いし、まして一人とか家族でっていうのもね。俺、結構鎌倉好きだし良かったらまた誘ってよ。」


 満月と祝寿吉も楽しそうに笑っている。

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