第11話 日記 (1)

 2冊の日記を並べて考えていたら『読んでみないんですか?』と満月に聞かれた。


「人の日記を読むのって大丈夫なのかな?」


『美月さん、気持ちはわかります。でも読んで欲しいから置いてあるんだと思いますよ。多分ですが、お父さんもお祖父さんの日記を読んだはずです。お祖母様もお母様も読めないのに、持っていかずに自分のものと一緒に置いて行ったと言う事、意味があると思いませんか?』


「私が読むべき。私に向けて残したって事だよね。」


『そうですよ。これも美月さんに向けてのメッセージでは無いですか?』


 そういう事か。こういう風に繋がっていくのか。


「満月、ありがとう。なんか決心ついた。今、全部読んでも混乱しそうだから、少しづつだけど読んでいく事にするね」


 満月も満足そうに笑ってくれた。




 日記を受け取ってから学校もあったし、時間がたくさんある時に見ればよいと満月も言っていたので、2人の日記は受け取った当日の夜パラパラとめくってみただけで、しっかりとは読んでいない。それでも日記というより記録に近いものに感じたし、私も日記改め記録を残そうと思ったので週末だし記録するノートを買いに行こうと思った。


 満月に『優弦さんと行ってみたらどうです?』と言われたけれど、言われたからでは無く、直感で優弦さんを誘って一緒に買いに行こうと思った。


 前回会ってから、当たりさわりのないメールは時々送っていたけれど、自分から買い物に誘うのは初めてなので少し緊張した。登校中に作ったメールは1時間目の授業中に練り直し、休み時間に文章を直しスタンプ付で送ってみた。


 なんでこんなに緊張しているんだろ??


 2時間目が始まってから、今日のお誘いを今日するってまるで『どうせ暇なんでしょ』って言ってるみたいだ。と思い愕然としていたら、隣の席の亜美から『どした??大丈夫??』とメモ用紙が来た。口パクで『大丈夫!』と言ったけど内心は大丈夫じゃなかった。

 3・4時間目は移動教室なので、携帯をチェックする時間もなかった。


 昼休みは亜美を含むいつものメンバーとお弁当を食べながら、でも意識は机の中のスマホに向けられていた。一通り話は合わせたけれど心ここに在らずなのはわかったみたいで、お弁当を片付けた後に『ちょっと用事終わらせてくる』と言った私を引き止める事もせずに、行ってらっしゃーいと送り出してくれる良くできた友人達には明日お菓子の差し入れでもしよう。

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