第9話 真実に触れる時 (2)
私より5歳年上の20歳と言っていたから、15歳の私からしたら大人だと思っていたわ。
自分の事はあまり多く話さない人だったけど、同じ屋根の下で自分と年が近くて・・・おしゃべりな自分の話をニコニコして聞いてくれる様な、自分とは真逆なところに惹かれたのよね。
使用人というよりは友達みたいな感覚でいつの間にか好き同士になって、美月ちゃんのお父さんが生まれたのよ。」
私と一緒に話を聞いていたお母さんが『お茶おかわり入れますね』と新しいお茶を入れ始めた。
「ありがとう、香里さん。じゃあ、続きを話すわね。まぁ美月ちゃんが知りたいのはここからだと思うし、しっかり聞いておいてね。
美月ちゃんのお父さんが生まれた日からお爺ちゃんには逢えていないの。
香里さんも身に覚えあるでしょ?」
「あなたが生まれた時からお父さんには逢えていないわ。美月になかなか言えなくてごめん。でも今がその時だと思ったから、ここに連れてきて話そうと思ったの。」
私は責める気もなかったし、なんだか(満月も含めて)いろんな事が腑に落ちた気がした。
でも、疑問も出てきた。
「なんでお爺ちゃんもお父さんもいなくなっちゃったの?」
おばあちゃんとお母さんが顔を見合わせ
「「それを解明出来るのは美月(ちゃん)だけよ」」
おばあちゃんとお母さんの楽しそうな声が重なった。
「ほぇ?」
「うふふ。私もあまり詳しくは知らないのだけど、私の机の引き出しに日記が2冊入っているの。持ってきてくれる?」
「ん。わかった。」
ちらりと満月に目配せして、私はおばあちゃんの部屋に向かった。
この家は屋敷と言うのにふさわし佇まいなのに、内装は温かい印象を受けるものになっていて、私もいつかこんな家に住みたいと思えるそんな家だ。
大きな窓がある廊下を過ぎるとおばあちゃんの部屋がある。気持ちの良い風の入る出窓の近くにその白い机があった。引き出しを開けると2冊の日記が入っていた。
1冊は古く、もう1冊はそれより新しいものだった。
丁寧に仕舞われていておばあちゃんがとても大切にしている事が感じ取れた。
その2冊の日記を大事に持ち、おばあちゃんとお母さんが待つリビングに戻りながら満月に話しかけてみた。
「満月、これ。」
『美月さんは見るべきだと思いますし、見せるためにここにあるんだと思いますよ。すべての事に意味はあるんですから。』
「満月は内容は知っているの?」
『・・・まぁ。…そうですね、これまで美月さんに話していなかったこともありますし、この日記を読んでいただいてから、質問には出来るだけお答えする形でどうですか?」
丁度リビングに着いた私は満月に向かって肯定の意味のうなずきを返して部屋に入った。
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