第3話「発覚!」
――6月6日、日曜日。
今日は、オカンの39歳の誕生日だ。
俺は就職してから貯めていた “オカン貯金” を財布に入れて、銀座へと繰り出した。オカンの誕生日プレゼントを買うためだ。オカンは、日中、職場の友達と会う約束があるが、夕方までには帰ると言って家を出た。
俺は、銀座中央通り沿いにある、オカンが好きなブランド“
白を基調とした高級感漂う店内には、キラキラと光り輝く宝石たちが、ショーケースの中で、ミスコンさながらに互いの美を競い合っていた。俺が食い入るようにショーケースを覗き込んでいると、ショップスタッフが、
「恋人へのプレゼントをお探しですか?」
と声を掛けてきた。
「いえ……母の誕生日プレゼントを買いに来たのですが、こういった店に来るのは初めてで……何がなんやら、さっぱりわからないんです」
と言うと、
「まあ! 素敵! お母様思いなんですね! 素敵な息子さんをお持ちで羨ましいです! お母様はおいくつくらいで、どんな感じの方なんですか?」
と、尋いてきた。
「母は、今日で39歳になります。背が高くて、髪は栗色のロングで、俺が言うのも何ですが……美人だと思います」
そう答えると、彼女は笑顔を浮かべながら、
「ご自慢のお母様なんですね! そうですねえ……それでしたら、こちらのネックレスなんていかがですか?」
彼女はショーケースの中からネックレスを取り出し、ベロア素材のアクセサリートレイに乗せて俺に、ホワイトゴールドの月をイメージしたネックレスを勧めてくれた。ふっくらとした三日月には、オカンの誕生石のブルームーンストーンが蒼く妖艶に輝いていた。そのネックレスはオカンのイメージにピッタリだった。
「いいですね! これにします!」
彼女がギフト用のラッピングをしてくれている間、俺は、喜ぶオカンの顔を思い浮かべニヤニヤしていた。
と、その時、
「いらっしゃいませ~」
というショップスタッフたちのご挨拶の声が店内に響き渡った。
入り口に目を向けて、俺は、ギョッとして固まった。
店内に入って来たのは、紛うことなき俺のオカンで……しかも、男と腕を組んで、仲睦まじそうにしているではないか!
俺は、オカンと男の前に立ちはだかり、
「オカン! これ、どういうことか説明したれや!」
と、怒りを爆発させた。
「新士……」
オカンは、俺の名前を発するので精一杯の様子だった。
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