第2話
一章
マリちゃんとこんばんは
その①
其の日は、朝から無性にぞわぞわしていた。
何かが起きる前兆、というか何時もと違う感覚。まあ、一つ上のオトコになった俺は細かい事などどうでも良いくらい浮かれていた。
薫風が心地よく肌を撫でる四月の終わり。
待ちに待った黄金週間、其の初日。
天気予報はゴールデンウィークの終わりまで見事にずっと晴れだった。
例年ならば何もしないという最高の贅沢を縁側で母親から粗大ゴミ扱いされながら優雅に過ごすのだが、今年の俺は違う。
大学入学以来フードデリバリーサービスのバイトに明け暮れ、ガッツリ溜まった貯金をはたいて念願の愛車を手に入れたのだ。
店頭で一目惚れした委託販売の中古車を、前オーナーの厚意で格安で購入出来た。
晩餐のあと、ちょっとひと眠りした俺は
キーボックスから愛車の鍵を取り出し夜の街へ滑る様に車を走らせる。
駅前の高級マンションの前で、親友面した大きな荷物を横に載せワインディングへ向かう。
海に張り出した崖っぷちの有料道路。この街きっての絶景ルートで、昼間は観光客で賑わうが夜は無料になり走りのスポットと成る。
だが、高速コーナーや、ブラインド、複合コーナーなど攻め過ぎると途端に牙を向く難度が高めのコースになる。時々走り屋の車が崖から堕ちたり、山肌に突き刺さる光景も名物の一つとなっているくらいだ。
ライトチューンされたマシンをタイヤのグリップを探りながら、自分とマシンの一体感を高めていく。
「やっぱお前イイ運転するよなぁ。滑らかだけどブレーキング丁寧だし、踏むトコじゃアクセルキッチリ入れるからメリハリ有って横に乗ってて怖くねーし。」
粗大ゴミが喋った!あっ、そ~いやコイツ途中で拾ったんだっけ。集中してて忘れてた。
金髪に染めたボサボサヘアー(ちゃんとセットしているらしい)にピアスの自称親友なチャラ男が、俺が車を買ってからあちこち連れてけとうるさい。出逢いを求めているらしいが、世の中そんなに甘く無い。てゆ〜か、自分の買えよ。
そんな自称親友〝守山弐狼〟がふと、思い出した様に
「そう言えばこの辺なんだよな」
「何がだよ?」
「オバケだよ。最近よく出るってよ」
バカは余計なコトを思い出した。
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