第8話 忍びの仕事2

天文元年(1532年)1歳


忍びの仕事と言っても、どこかの大名の専属仕事というわけではない。複数の大名から依頼を同時に受けることもある。依頼の状況によっては、身内同士が敵味方となることがある。


そういう時は、請け負った仕事を遂行し、クライアントの信頼を勝ち取るために、子供の頃から一緒に遊び、ともに励まし合いながら訓練を受けた仲間で殺し合うのだそうだ。


伊賀の同士討ちを世間が知るに連れて、恥を知り誇りのために潔く腹を切る武士達にとっては、仲間でも平気で殺す人でなし集団として忍者は軽蔑や蔑みの対象となっているのだ。


しかし同士討ちは、仕事の性質上、ある面しかたのないことなのだ。

物心つくころから厳しい訓練を積み、命懸けで仕事をこなしも、世間の評価は最低。忍者の人生は辛過ぎる。


命懸けの仕事に対する世間の評価が低いというのも問題だが、忍びの地獄のような仕事に対する対価も問題なのだ。仕事を依頼してくる大名の気分次第というか、懐次第というか……全くもっていい加減な報酬なのだ……


銭はないけど、いくさで死んだ敵兵の武具を回収することを許すとかね。その話を知った時は思わず「そんなので良いのか! 命懸けの仕事だぞ!』と憤ったものだ。まあお金にはなるのだけど、死体から武具を剥ぎ取る下賤なやつらとなり、またまた世間の評価が下がる。


報酬があまりに少ない場合には、さすがに賃上げ交渉をしたくなる。「それでは報酬があまりに低過ぎでございます」とか言おうものなら! 「忍者風情が生意気な。言うこと聞かなければ、伊賀に兵を向けても良いのだぞ!」と、刀を抜いて脅される。結局、無理やり仕事を請けさせられる。


忍者! どうなっているの?


俺は上忍の嫡男だ。いずれ百道衆のTOPとなり、お金にもならない地獄のような仕事を下忍たちに命令することになる。『低い評価』、『酷い扱い』、『少ない報酬』で大事な部下が無意味に死んでいくだろう……


そんなことを絶対させない。俺もしたくない……


まずは伊賀の民を幸せにすることが最優先だ!

それにしても、忍者という存在はもっと価値が高いと思うよ……

それに伊賀の忍びが気付いていないだけだと思う!


ついでに当時のお金事情ですが。

銅銭1000枚で1貫、1貫は2石(成人男性が2年間食える米の量)、1石は米150Kg、前世のお金に直すと、1石は6万円ぐらいになる。


1石 = 833文 = 6万円

1貫 = 1000文 = 2石 = 12万円

1文 = 72円

金貨 1両 = 銀貨10匁 = 4貫 = 4000文 = 約29万円

銀貨 1匁 = 400文


日雇い大工100文、鍛冶屋50文、人夫20文

というぐらいだったようだ。


信玄に山本やまもと勘助かんすけが100貫/年、で雇われたということは、年収1200万だったということになる。


ちなみに、前世では傭兵という職業があったけど、フランス外人部隊が年収で800万/人だとすれば、忍者の1チーム10人を、お仕事で1年間拘束すれば8000万となる。


任務の内容にもよるけど、危険な仕事なら危険手当も欲しいところ。そうなると大名には、正当な対価として年間で1億円ぐらいは出して欲しい。ざっと850貫だ、金貨なら210両ぐらいになるよな。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る