第4話 転生しました2

頭の中に女性の声がしてきた。あの時のテレパシーだな。便利なものだ。でも今はそんなことなんかどうでも良い。『特典は何か?』だよ。


「転生おめでとう。私はこの世界を管理している神の中の一人。私の名前だけど、この国の言葉のイメージに近いのは『豊穣神』です」


まずは、一番気になることを聞いてみた「転生したこの世界は、いったいどのような所なのですか?」


神様は淡々と説明してくれる。

その内容からどう考えても、日本の戦国時代のような気がする。

『で……あるか……』の信長がいる時代みたいなのだ。


人助けをして死んだのだから、最低でも転生先は平和な時代でしょ。しかも幸せな家庭じゃないの。転生システムのエラー発生か。納得できない。これは神様に何か言っておかないとダメだ。


それにしても、『人助けで死んで転生しました特典』はどこにいった?

特典があるというのは俺の妄想? いや『特典なし』は理屈が通らんでしょ。 

頭の中であれこれ自問自答する。


「すみません。転生先が戦国時代になった理由を教えてください。人助けで死んだのですから、もう少し条件の良さそうなところに転生させてもらえると思っていました」


「ごめんなさい。そういう特典的なものは何もないのよ。転生先はランダムになっているしね」


特典なし……転生先はランダム……

頭の中は同じ言葉がグルグル繰り返される。

何で俺は死んだのだ……


もう一回あの時間に戻して。

人助けは中止する。死に損確定……


このまま神様から「じゃあがんばって。さよなら」とか言われたらおしまいだぞ。

ここは粘らないと絶対ダメだ。がんばれ俺。これからの人生のすべてがかかっているぞ。


「神様。私の記憶ではこの時代の赤ん坊は、成人になるまでに半分ぐらいは死ぬはずですよ。原因は『不衛生な環境が招く疫病。農業知識ゼロによる飢饉。無知故に繰り返されるいくさによる戦死』なのです。そもそも今までの転生者は無事に生き延びてこられたのでしょうか?」


「全員が死んでいるわね」


なんですと……話にならんではないか……そういうことをサラッと言うなよ。

喉がカラカラ、体から水分が抜けていっている。


神様の方をじっと見る。抗議の眼差しだぞ。俺は怒っているのだ。

神様の表情にほんの少し変化が出ている。

いくら何でも、転生者が全員死んでいる事は気にしているはずだ。

ここだ、頑張れ俺。


「それは流石に転生者にとって酷だと思います」

言ってやったぞ。もうどうなっても良い。

どうせ、このままだと直ぐ死ぬからな!


「秘密だけどね。この世界には転生前の記憶を持っている転生者を、優先的に転生させるようにしているのよ。過去の歴史知識があれば凄く有利じゃない。その知識を使って、戦乱の時代を早く終わらせてもらいたいの。できるはずでしょ! 簡単でしょ!」


「でもね、何故か死んでしまうのよね! 長生きしないのよ! 不思議でしょ! 過去には『治癒スキル』なんかも与えた人もいたのだけどね。その人も結局ダメだったわ。不甲斐ないわね!」


過去に交渉した人がいたのだな。

ここは頑張れ。冷静に。


頑張って交渉するぞ。

このまま神様を返したら、俺の人生は終わりだよ。


それにしても、『秘密だけど』の話はおかしいだろ!

優先的の意味も間違えているぞ。

この神様、何か変だよな!




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