第3話 転生しました1
目の前が明るくなってくる。目はぼんやりとしか見えないが、俺のいるこの部屋は和室のような気がする。小さい頃に連れて行ってもらった農家のおばあちゃんの家に似ているな。
周りで女性の声がしている。
「まあかわいい男の子。あなた様にそっくりですよ」
父親らしき若い男が覗き込んでくる。いきなり乱暴に抱き上げられた。『おい……乱暴に扱うな……たぶん俺は赤ん坊だ。赤ん坊というのはね。優しくだぞ……』
「オギャー オギャー」
ダメだ。言葉が「オギャー」しか出ない。
オヤジらしき男性は世継ぎの誕生に大喜び。
「おまえは俺の嫡男の
とにかく乱暴に扱うなよ。赤ん坊はデリケートなのだよ。
乱暴にされた瞬間に人生が終わってしまうだろ。
またあの女神のところに逆送だ。しかも次回は人助けプレミアムなしになるのだぞ。
それにしても特典はどうなった? 無いのか!!
後で知ったのだが。
俺の名前の『三蔵』は、俺が嫡男であることを示すため、オヤジの
嫡男を産んで誇らしげにしている母親らしき女性の後ろに、お手伝いさんみたいな3人の女性たちがいる。オヤジは騒ぐだけ騒いでいなくなった。途端に女たちの世間話が始まる。
「この子は本当にお顔が綺麗ですわ。女泣かせになりますよ」
「その通りですわ。フフフ……若子様の将来が楽しみ」
俺のオチンチン見ながら「フフフ……」は止めて欲しい。おもちゃじゃないからね。
その後も取り留めもない長い話が続く。『どんな人が好き? え〜、そうなの』みたいな話。退屈な話だったけど、現状の把握に役立つ大事な情報が、どこかに出てこないか待っていたのだよ。
今はどんな情報でも欲しい。しかし最後までどうでも良い話でした。こりゃダメだわ。寝よ。話は次の話題になっているけど。静かにしてくれないかな。眠れないぞ。
とりあえずお手伝いさんみたいな人がいるということは、この家は貧乏ではないということが確定。まずは安心。
しかし家の作りはずいぶん質素というか。オンボロというか。壁に虫が這っているぞ。あ〜、虫を叩いて潰した。
うーん。やっと眠くなってきた。
それにしてもオヤジの職業は何かな?
天使には確認できなかったけど『人助けで死んで転生しました特典』がどんなものか楽しみだな。
この家を見る限りは、お金持ちの家に生まれることが特典ではなさそうだな。
そうなると俺に特殊な能力が備わっているとかでしょ。楽しみだな。
神様。天使様。特典は魔法でも良いですよ。
特殊なお役立ちスキルでも良いです。期待していますね。
特典を使って、まずはこの家を立派にして、皆が着ているものも小綺麗なものにしてあげるよ。『人助けをして死んで良かった』と、期待は膨らむばかりだ。
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