第33話 Contact like a Cockroach

「・・・目標確認」

 それは、単なる報告だ。前衛を務める場合は必ず言うことになる、「敵を確認した」と同意の、只の報告。

 しかし、そのユーマの言葉の端々からは「うわあ」だの「見てしまった」だのといったような嫌悪感がありありと伺えた。

「吶喊」

 渋々、という顔で淡々と報告をしつつ、ペダルを踏み込む。

 途端に体には何十倍ものGがかかり、モニターの景色は凄い勢いで流れていき、さっきまで望遠で見えていた敵、無人型鋼騎の一塊がグングンと近づいて来る。普段通りの行動・・・だが。

「糞!やっぱ近づきたくないな、アレには」

 今までにない、それこそどんな強敵相手にも感じたことの無い嫌悪感が湧き出るのは、間違いなく敵騎の形状のせいだ。

 平べったい胴体に機関砲を載せた4脚型の小型鋼騎。それがエフリードの接敵を察しシャカシャカと脚を動かして離散する。その様子はまるでクロだのヤマトだのにしか見えないフォルムをしていた。

「よりにもよって、黒で塗るな!」

 もっとも、茶色に塗ればチャバネだが。

 この世界に来てトンとお目にかからない不快害虫に、まさかこんな形でお出会いするとは思わなかった。その場に残って機関砲を撃ち放つ1騎をバリアで弾き飛ばすが、それは小器用にふわりと後退して躱す。

「逃がすか!」

 瞬時に展開しているバリアを解除、再加速。伸ばした足で制止するついでに思い切り踏みつける。当然、グシャリと潰した感触が騎者に伝わることは無いが、いつぞやに体感したゴキブリを素足で踏んづけた感触を思い出したユーマは顔を大きく顰めた。

「っと、俺の馬鹿」

 慌てて思考へ理性を注入し、忌避感で強張る腕をいつも通りに動かさせる。先ほど離散したゴキブリ鋼騎はシャカシャカとエフリードの周囲へ回り込んで囲い込む。

 そして、そのゴキブリ鋼騎が身動きのとれないエフリードへ砲の照準を合わせようと静止した、その時。ソレらは順繰りに爆散していった。

『迂闊だよ、少年』

『まったくリィエラの姐さんの言う通り。らしくありゃせんぜ、旦那?』

「いい囮だろう?」

 3度目の接敵とあれば、敵の動き方も把握できる。無人型故の良い機動性で浅く広がられるよりは、エフリードを突っ込ませてワザと包囲させ、それをキョウズイたちに撃たせる方が手っ取り早くて彼好みだ。

「それに、コイツらの機関砲じゃエフリードのバリアは破れないんだ。何の問題も無い」

『それを姐御にそう言えるのなら、あっしらは首肯しやすよ?』

「・・・もっと酷い事態に陥ったことがあるから、大丈夫だ」

 本当にぃ?と嫌らしく追求してくるキョウズイの言葉を聞き流して、ユーマはぐるりと周りを見渡す。

 と、そこで地面がゆさゆさと持ち上がるのを見て、声のトーンを落とした。

「そこまでだ。どうやら、お替りのようだ」

 その言葉通り、元は農耕地帯だったであろうだだっ広い平原からボコボコと、同型の鋼騎が湧き出してくる。

 ゴキブリに似せるまでなら兎も角、行動まで虫に似せる必要は無いだろうに。

「まったく・・・害虫、って感覚が無いのか、この世界の連中には?」

 ただの八つ当たりだと理解しつつ、それでも往生際悪く、口からは不平が零れ出る。

『旦那、いい加減諦めましょうや』

『そうだよ、少年。何事も諦めが肝心ってね』

 通信機からは慰めとも叱咤とも取れる通信が友人たちからもたらされるのだが、こればかりは致し方ない。所謂、生理的反応と言う奴だ。

「まあいい、それに・・・そうそう好きにさせると思うなよ」

 ウゾウゾと這い出そうとする鋼騎へと向かって、ユーマは胸の鋼杭砲を撃ち放つ。勿論、ただでさえ命中率の低いこの武装を、この距離でぶっ放して当たるとは思っていない。

 狙いは1つ、その大地そのものだ。

「良し!」

 爆発的な勢いで放たれた鋼鉄の杭がブチ当てられた地面は、ユーマの予想通り大きく掘り起こされた。そう、その付近にいたゴキブリ鋼騎ごと。

 プログラムによる自律操縦で動くその鋼騎が、そんな突発的な事態に対応出来るはずも無い。ある物はもろとも吹き飛ばされ、またある物は無様にひっくり返る。

「く、た、ば、れ!」

 そして、その事態を引き起こしたユーマがそれを見逃すはずも無い。珍しく語気荒く吹き飛んだ1騎を引っ掴んだユーマは、それを大地にいる他の鋼騎へとぶちかます。ぶちかまされた鋼騎は大きく拉げ、武器代わりに使われた鋼騎も衝撃で機能を停止した。

「次!」

 破壊を確認したユーマはすぐさま動き、他の鋼騎へと同じようにぶちかましていく。そうして哀れな鋼騎が武器として再起不能となった頃には、生き残ったゴキブリ鋼騎の数は片手で数えられるほどにまで減じていた。それをエフリードたちで撃滅するのに、数分もかかるまい。

 完全なるユーマの作戦勝ち。だが、その表情は『うんざり』という色に染まっていた。

「・・・しかし、まだ道半ばだってのにもう3回目。あとどんだけ続くんだか」

『仕方ないよ、少年。虫は湧くものさ』

「ここまで統制が取れてないとは聞いてませんよ、リィエラさん。よくもブリーフィングじゃあ匂わせるだけ留めてくれたもんだ」

 本当に使節を送り込んで大丈夫なんだろうか。ふと、そんな疑問が過る。

『まあまあ旦那。流石に首都近くになりゃあ、敵の数も減るでしょうや』

「だと良いが・・・な!」

 自分たちをこんな目に遭わせた元凶の顔をゴキブリ鋼騎に投影し、ユーマはそれを思い切り蹴り上げた。


 ユーマが悪態をつく数日前にして、彼らがトーリスに呼び出された次の日。ユーマたちは尚書台に設けられたブリーフィングルームへと集められていた。

 こんな大袈裟な作戦会議は初めてだったので、いささか緊張の色が濃かったユーマであったが、

「おや。少年もかい?」

 そこで出会った、見たことのある顔にホッと胸を撫で下した。

「お久しぶりです、イリャーナさん」

 そこにいたのは、先のパレードの際に知り合った傭兵、リィエラ・イリャーナだ。

「リィエラでいいって言ったろ?そっっちも相変わらず、仲良さそうでなによりだ」

「どうも。・・・そちらはお1人ですか?」

「作戦会議にまで、メンバー総出で押し寄せる訳にはいかないだろう?そっちと違ってメンツの数だけは多いんでね」

 そう言って、相変わらず太陽のような笑顔を見せる。

「リィエラの姐さん。そっちのは?」

「ユーマ・コーナゴ。知ってるだろう、トーリスのお気に入りだ」

「成程・・・お気の毒に」

 その言葉に、リィエラに話しかけてきた男はどこか同情の含まれた視線でユーマたちを見渡した。

「こっちも紹介しておこう。少年、この野郎どもがアイリスとテイレス。こんな顔でも腕は確かだよ」

「顔は関係ないでしょう、顔は」

 苦い顔で抗議するアイリスと、その後ろで肩を竦めるテイレス。その麗美な名前の響きからさぞや、と思うかもしれないが・・・現実は非情である。

 アイリスは日に焼けて脱色されたパサパサの金髪を五分刈りにした、テイレスは眉まで剃り落とした禿頭の、どちらも筋骨隆々でむくつけき大男である。

「ま、この失礼な女傑さんは放っとくとして、どうも初めまして」

「こちらこそ。俺がユーマでこっちがキョウズイ、後ろにいるのはセリエアです」

「・・・セリエア?女の名前なのに、おと―」

「女の子だよ、アイリス」

「おと・・・大人びた女性で、まったく」

 リィエラの注意か、セリエアの出した物凄い殺気にか、それとも両方にか。アイリスはダラダラと汗を流して誤魔化しにかかる。名前に似合わぬコメディーリリーフ振りだが、名前で人生が決まる訳では無いのはユーマも同じだ。

「自己紹介も終わったようですね」

 すると、いつの間にか部屋に入ってきていたのか、トーリスがいつもと変わらない柔和な顔で白板の前で微笑んでいた。

「盗み聞きとは趣味が悪いな」

「部屋の外まで聞こえる声を聞くのは、盗み聞きとは言いませんよユーマ君。それでは初めましょうか」

 その一言に全員が大人しく席に着いたので、ユーマもそれに倣って黙ってセリエアの隣に腰かける。

「宜しい。では早速、今回の依頼内容を説明させて頂きます。ハースホンファー大尉」

「は」

 慇懃に礼をしたクラリシェが、全員に1枚のペーパーを配る。

「・・・端末にデータを流せば楽なのに、わざわざご丁寧なことだ」

「流したデータを処分するのは手間ですから。それで、諸君はもうご存じでしょうから状況説明は端折りますが、今回の依頼はクロノス新政府への外交使節の護衛となります」

「新政府?」

 王国で無し?と怪訝そうに眉を顰めるアイリスとテイレス。

「ええ。件の新政府の最高指導者は『王』を名乗っておりませんので」

「では、なんと?」

「そのペーパーに記しておきましたが、なんでもプレジデントと称しているようですね」

「大統領(プレジデント)ねえ。この世界でも民主主義の萌芽が・・・んん?」

 ペーパーを読み進めてたユーマは、ある一点に目が止まる。

「大佐、この国務長官ってのは・・・」

「新政府のナンバー2と伺っていますが、何か?」

「・・・いや。すまない、進めてくれ」

 ユーマの下手な誤魔化しに、うっすらと目を開いて彼を睨めつけたトーリスだったが、この場ではそれ以上追及する気は無いようで、

「・・・いいでしょう。今回の外交使節は、シルズベイン=フレンロード外務卿自ら出向かれます。よって、使節団もそれなりの規模となりますが、護衛を大勢連れて行くことは外圧の行使と邪推される恐れがあるため、正規軍ではなくマンティクスを派遣する形になりました」

 そう、大人の顔で話を進めた。

「しかし大佐、いくら情勢不安定だからって、魔導鋼騎をひい、ふう、みい・・・5

騎も引き連れていく必要があるのかい?」

「はい。それについてはペーパーにはありませんので、口頭で説明させて頂きます」

 つまり、紙に記せない情報ということだ。まったく、内容が愉しみで怖気が振るうな。

「実は今回、当初はイリャーナさんの仰る通り、魔導鋼騎まで駆り出す気はありませんでした。しかし・・・」

「しかし?」

「しかし、向こうからの連絡で、帝国とクロノスの国境に軍の無人鋼騎が暴走しているため、使節の派遣は延期されたしとの申し出あったのです」

 思った通り、碌な話じゃ無かった。

「それは・・・穏やかじゃないね。真偽は確認したんだろうけど、なんでそんなことが起こったんだい?」

「なんでも、旧王党派がやぶれかぶれになって防衛用兵器を暴走させた、とのことですが・・・」

「実際は分からないってことだね、大佐」

「ええ、セリエア嬢の言う通りです。これが本当にただのアクシデントなのか、我が国からの使節を断るための小道具なのかは、未だ掴んでいません。ただ、自律回路の敵味方識別機能が働かなくなったのは間違いないそうです」

「しかしな、大佐。これをアンタに言っても仕方ないかもしれんが、それなら中止すればいいだけじゃないのか?」

「それも考えられました。しかし、外務局としては出来るだけ早急に彼の新政府と連絡を持ち、その意思を確認しておくことが必要と判断しております。外縁王国関係は、なにかときな臭い現状が続いていますから」

 確かに、ノルフィ王国の一件もそうだし、先日の暗殺未遂事件も一説ではカルサなる外縁王国が1枚絡んでいるという噂もある。

「・・・つまり、帝国としちゃあ外縁王国がこっちの頸木を離れて好き勝手されると困るから、さっさと釘を打ちに行きたい・・・と」

「直截ですが、概ねその通りです。それに、ある筋からの情報ですが、既に一部の外縁王国が新政府とコンタクトを取っているとの噂もあります」

 トーリスの言う『噂』とは、とどのつまり『殆ど確定情報』なのと同意だ。少なくとも、不確かな情報を口に出すほど不用意な人間ではない。

「つまり、外務局としては多少乱暴な手段になったとしても、対面して話をしておきたい、と」

「そういうことです」

 そう言ってニコリと向けられる笑顔をまるで信用できなくなったことは、果たして良いことなのか悪いことなのか。


「少しいいですかな、大佐?」

 次にそう言って挙手をしたのは、意外なことにアイリスだった。

「はい、何でしょう?」

「別に陸路を行くからそんなのに手間取らせられるのでありましょう。そうでなし、あの飛行機ってやつで送り込めば、別にそんな苦労をしなくても良いのは?」

 その発言に、テイレスも2度3度と大きく頷く。

「そうですな、兄貴の言う通り。その新政府の首都近辺までその無人壁兵器とやらが跋扈しているのなら、話は別ですが」

 兄弟だったのか、あの2人。

「そうしない理由としては簡単で、飛行機を着陸させるような場所が無いんですよ。流石に外務卿を乗せた飛行機を、野原に着陸させる訳にはいきませんから」

「それに兄弟(ブラザーズ)、どこに敵がいるか分からないのに、不用心に空なんて飛べる訳ないだろう。アンタらも狩人の端くれなら、聞く前に少しは考えな」

 それは確かにその通りで、陸上なら感知できるのは最大でも地平線までだが上空なら数百キロまで探知出来る。的がぼんやり飛ぶ輸送機で、そこまで届く武装があるならば、その撃墜は赤子の手を捻るより容易かろう。

 いささか手厳しいリィエラの指弾に、アイリスたちも「ううむ」と唸って黙り込む。流石に少し気の毒になったため、ユーマは別方向への質問をして空気を変えようと試みた。

「ところで大佐、その無人鋼騎というのはどんな兵器なんだ?」

「それについてはハースホンファー大尉から説明を行います。大尉?」

「はい、お任せください」

 額を光らせるクラリシェは自信満々にそう承ると、部屋を暗くしてプロジェクターで白板に画像を投影した。

「こちらがその無人兵器と同型の鋼騎の詳細となります。全長3メートル、全高は武装込みで4メートルの4脚型の鋼騎で、武装は新政府からの情報によれば中口径の機関砲とのことです」

 画像を見る限り、亀のように四つん這いの姿勢で背中に銃座を生やした機動兵器のようだった。色はモスグリーンで、それも亀らしい色合いだ。

「この画像の鋼騎では砲塔を装備していますが、クロノス軍に配備されていたものは単装砲や機銃など、種類も様々とのことです」

「つまり・・・どれを装備した鋼騎が攻めて来るかは分からない、と」

 どの装備でもエフリードのバリアを貫くことは難しいだろうが、さながら地獄のロシアンルーレットだ。

「アタシらの魔導鋼騎なら兎も角、これがウジャウジャ寄って来るのは・・・確かに、先触れが必要なはずだよ」

「はい。ですので、隊員諸君は潜伏する無人兵器を探索、撃滅して、使節団の安全を確保することが主任務となります」

「潜伏に探索ねえ・・・その新政府とやらも、どれだけ無能を晒せば気が済むのやら」

 それがその新政府とやらが軍部の手綱を取れていないだけなのか、それとも何かしら良からぬ思惑があるのか。

(・・・流石に謀殺の類とは考えにくいが・・・データが足らんな)

 そんなユーマの考察とは裏腹に、トーリスはさも何事でも無いような口調で内容をまとめにかかる。

「既に新政府へは、件の暴走鋼騎が使節団へ襲いかかった時にはこちらで排除して良いことの了承は取れていますから、君たちはいつも通りに暴れまわってくれれれば、それで十分ですよ」

 その言葉に、アイリスとテイレスの2人だけが頷いた。

「おや、姐さんたち。どうしてそんな風に渋い表情なんで?」

「逆に訊くけどさ、アイリス。どうしてそう単純に頷けるんだい?」

「いつも通りと言われるなら、それでいいでしょう。違いますかな?」

「・・・・・・長生きするよ、アンタらは」

 確かに。ユーマたちが考えすぎなだけで、物事はこれくらい単純に考える方が良いのかもしれない。

 が、それでもユーマはそう簡単に割り切ることには抵抗があった。

(思考を辞めた時に、人は死ぬ・・・だったか)

 それが騎者の鉄則だと、教えてくれたヒトはもういない。そして、いないヒトの教えを無下にするのは憚られるものだ。

「ま、取り敢えずは出たとこ勝負でなんとかしやしょうや、旦那」

「ん?・・・まあ、そうだな。それで大佐、その使節団の移送手段は?」

「帝国の保有する大型輸送艇、簡単に言えば君たちに貸し与えているヘクサルフェンの親戚、それで行います。また、騎者の皆さん以外のメンバーについても、それに同乗して指揮管制、サポートをお願いする形になりますね」

 つまり、セリエアはその使節団と同行させられるということだ。

「・・・なんだい、ユーマ?」

「大変そうだなあ、と思っただけだ。他意は無い」

 むう、と頬を膨らませるセリエアの後ろで、リィエラも「そうだね・・・」と指折り数えている。話の流れから察するに、連れて行くメンバーの選定だろうか。

「兄弟のところは?」

「某(それがし)の隊は、そもそも某と弟だけですからな。全員で行きますぞ」

「・・・ホント、よく生き残ってこれたね。なら、アタシらのチームからは3~5人くらい整備スタッフを出す方が良いね。大佐、報酬は人数分出るのかい?」

「ええ。流石に不要な人数分までは出しませんが、今仰った人数くらいなら良いでしょう」

 加えて、かかった必要物品や補修材料についても全部補償してくれるらしい。国家の大事に関わる任務とは言え、やはり部局に絡む仕事は色々と手厚いものだ。

「では、ブリーフィングはここまでに。出立の詳しい日時は後ほどお送りしますので、皆さんはそれまで各々、待機していて下さい」

「分かったよ。じゃあ、ボクたちはヘクサルフェンで待っていればいいんだね?」

「はい、それで良いでしょう。この尚書台からは出て貰いますが、帝都内ならそれ以外のどこに居て下さっても構いませんよ」

 その言葉に、キョウズイ含めた全員が立ち上がり、それぞれ続くように部屋を後にした。ただ、呆と座ったままのユーマと、それを待つセリエアを除いて。

「おや?どうしましたユーマ君」

「え?ああ・・・そうだ大佐、このペーパーは・・・」

「それはこちらで預かります。そもそもが衆目に晒されないための、紙媒体ですから」

 そうトーリスが言うが早いか、クラリシェがテキパキと机の上に散らばったそのペーパーを集めていく。

「心配しなくとも、仕事に必要な情報は後ほどお渡ししますので」

「いや、そうでは・・・まあいいか、すまなかった」

 取って付けたような謝罪をトーリスへとして、ユーマは待ちわびたようにトントンと靴のつま先で床を叩いて待つセリエアの元へと急ぐ。

(・・・まさか、な)

 そう、彼がペーパーを見て気にかかったことがもう1つある。

 そこに記載されていた国務長官の名前。


 ユーマは、それに見覚えがあった。

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