37. お宝

 翌日。

 この島に移住して2ヶ月が過ぎた。


 今日から石を探すことにしたアース。


 ノルンが持っていたという3つの石。

 これの存在をアースは今でも気にしていた。


「あの禍々しい魔力は忘れない。」


 島のログハウスで、その魔力をイメージしながら魔法を使い石を探す。


「うん、やはりこれで間違いないだろうな。」


 ノルンと別れた後に調べたときと変わらず3つの反応が王国内にあった。


 3つとも同じ場所にある。


「念の為。」


 範囲をこの星全体に広げて調べてみた。


「あらら?随分増えたぞ。」


 何となく予想はしていた。


「全部で………26ヶ所から反応がある。」


 ノルンの先祖以外にも石に魔力を込めて何やら企む輩がいたと言うことだ。


「どれも見事に禍々しい。」


 そのような石を探したのだから当たり前だ。


「よし、始めますか!」


 直後にキボンヌへ転移するアース。


「先ずは王国にある3つから………」


 先ほども触れたが、この3つの石は同じ場所にある。

 王国の東にある大きな湖の底深くに仲良く沈んでいる。


「どれどれ………」


 石の置かれている状況を魔法で観察。


 博物館の収蔵品であった場合などは、黙って持ってくる訳にはいかない。


 慎重に観察してから転送する必要がある。


「大体、いい感じかな。」


 流石に湖の底、黙って持ってきたとしても問題はなさそうだ。


「では、よいしょ!」


 湖の底からキボンヌへ転送、意外なほど呆気なく成功した。


「おーーこれこれ、ノルンさんの丹田から出ていた魔力より強いかも。」


 この石の機能を大まかに調べるアース。


「あーー、やっぱり、ノルンさんが言っていた機能だわ。例の石で間違いないだろう。」


 島の木材を転移させてキボンヌで収納箱を作り保管する。


「さて、これを無効化してしまえば当初の目的は達成するけど、王国の外にはまだ23個の反応があったよなぁ。」


 他の石も調べたくなったアース。


「無効化するのは、他の石をある程度調べてからでもいいかもね。」


 魔法で様子を見ながら問題なさそうな石を集め始めるアース。


 5つ程集めたところで作業を中断して石の機能を確認してみる。


「手に作用する石?手の疲れを感じにくくしているのか?」


 次の石を取る。


「これも同じ。これも同じ。」


 違う感じのする石を取る。


「これは………足の疲れ用か!」


 最後の一つも足の疲れを感じにくくする石だった。



「気を取り直して、次にいこうか!!」


 5つの反応が固まっている場所に手を着ける。


「ここは……遺跡だなぁ、周りはジャングル……別の魔力を感じるけど…人ではない……生き物でもない……」


 アースは忘れ去られた古代の遺跡と判断し、5つの石を観察する。


「持ってきても大丈夫だろう。」


 5つまとめて転送する。


「あと、別の魔力も調べておこう。」


 もう一度同じ場所を見始めるアース。


「おーー、これも魔力を込めた石なんだ!」


 この石もキボンヌへ転送し、この石から調べ始める。


「この石は……なるほど……認識を阻害する魔法を込めているのか!遺跡ごと隠そうとしている訳だね!……全く効果を感じない。なんで?」


 ワクワクし始めたアース。


「と、言うことは、この5つの石は……隠したいほどのお宝なのでは?」


 早速調べ始めるアース。


「これは……筋肉が大きくなる石……??」


 次の石を調べる。


「これは……骨が強くなる石……あー筋肉が強くなりすぎて自分の力で骨が折れたのか。」


 次の石を調べる。


「これは……関節が丈夫になる石……あー骨が折れなくなっても関節は外れた訳か。」


 次の石を調べる。


「これは……軟骨を柔らかくする石……あー関節を丈夫にしたら動きが悪くなった訳か。」


 最後の石を調べる。


「これは……脳を大きくする石……あー肉体強化を諦めて頭を良くしようとした?」




 脱力感と虚しさがあふれるアース。




「くだらない!」


 この5つの石は成人に使っても効果はない。


 子どもの時に石の魔力を浴びせることで、成長と共に効果が現れるような代物だ。


 大人の身体を急激に変えるより、子供の頃から成長に合わせて徐々に変えるほうが体への負担が少ないとでも考えたのかもしれない。


 筋力強化の石を使われた子は些細な動きで骨折することに悩まされただろう。


 筋力と骨を強化した子は些細な動きで関節が外れただろう。


 筋力、骨、関節を強化した子は思うように動けず苦しんだであろう。


 脳を大きくするした子は頭蓋骨に合わず死ぬほど辛い頭痛に苦しんだであろう。


 どの子も、どれ程生きていられたかすら疑問だ。


「くだらない!」


 怒りを感じ、もう一度吠えたアース。


「強い兵士を作ろうとしてそれがダメならスーパー軍師でも作ろうとして諦めたってことか………くだらない!」


 くだらない!が止まらないアース。


「可能な限り探し出して無効化しよう。万が一以下でも復活させてはいけない物だ。」






 5つの石と認識を阻害する石は詳しく調べた後元の場所に戻した。


 疲れを感じにくくする石は資料として保管することにした。


 アースはどちらも近い将来、無効化するつもりでいるが、この星の歴史的な遺産を破壊することになる。


 この辺りの折り合いが着くまでは、手荒な行いを控えることにした。


「ご丁寧に認識を阻害しているから、見つかりにくいはずだし。」


 アースには効果を現さなかった認識を阻害する石だが、アース以外には有効だと考えていた。


「今まで見付かっていないからね。それに、見付けても使い方を知っている人もいないはず。暫く元に戻しておいても大丈夫だろう。」




 ノルンの石だけは対処を保留した。


 この石だけは所持していた者がその用途や効果まで明らかにした物だからだ。


 研究材料としての価値は高い。


 資料を添えてその役目を終えるまで厳重に保管したい。





「気を取り直していくぞ!」




 不愉快な思いをしたアースだが、収穫は多かった。


 あの禍々しい魔力を垂れ流す石は人体に影響を与える魔法が込められている可能性が高いこと。


 認識を阻害する石は別の魔力として感じることから他にも未知の魔力を込めた物が存在する可能性があること。


 認識を阻害する石を探せば古代の遺跡も探せるかもしれないこと。



「早速、認識を阻害する石を探すぞ!」


 魔法を発動するアース。


「エエエー。」


 40箇所以上から反応があった。

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