2章 王都ライフ
研究所
4. 正にこれ!
5歳になったフレイ
これまでに様々なことを学んだ。
ミッドガルド王国は大陸の南東部を統べる大国で、王都イダヴェルは国の南端に位置し海に面している。
(王都の南端に王城がある。なんで?)
王城とは城の建物だけを指すのではなく、城、王宮、庭園、従業員の住まい等を掘りで囲ったエリアを指す。
フレイは産まれて以来、王城から出たことがない。
ようやく楽しみに待っていたお忍びでの外出が認められた。
しかし、自由に外出できるまでが長かった。
王都の警備体勢や外出時のルール等合計5日間の講習を受け、更に初回の外出は日時とコースが予め決められ講師も同行する。
いよいよ初回の外出だったが景色など見る余裕はない。
講師の話を聞きながら全てを記憶しなければならないので景色を楽しむのは後にした。
一時は外出を諦めよと真剣に考える程学ぶことか多かったが、この試練を乗り越えれば外出自体は楽なもので、外出用の門で門番にこれから外出する旨を伝えて、更衣室で町に馴染む服装に着替えれば、護衛が来るのでその護衛を伴って外へ出るだけだ。
と、言うわけで、更衣室で着替えを済ませて程なく到着した護衛二人を伴って外出スタート!
護衛は男女1名ずつ、家族を偽装している。
それ位の容姿だ。
「今日は何処へ行きますか?アース。」
外出の時はアースがフレイの名だ。
「市場へ行こうよ、母さん!」
「父さんはそれでいいかしら?」
「ああ、勿論だ。」
これが門を出て最初のルーティン。
この会話で父役の護衛がハンドサインで、これからフレイが市場へいくことを私服警備兵に知らせると、常時巡回している私服警備兵が市場に集まり警備を厚くする手はずになっている。
市場に向かう途中、中世ヨーロッパ風の建物が並ぶ風景に出食わした。
「凄い!正にこれ!」
アースが興奮する。
そう、異世界転生物の舞台を完全再現したテンプレ風景。
ただ、この風景は王都と王国の一部の大都市だけらしい。
当たり前だが、他国はそのお国の風土や文化に応じてそれぞれの建築様式を持ち合わせている。
「市場もいい!」
こちらもアースが前世の動画でよく見た風景。
「匂いまである!」
半日以上歩いたがこれでも王都の極一部とのこと。
まだまだこれからも楽しめそうである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5歳から始めることはこれだけではない。
剣術も5歳から始めることの一つ。
剣を学ぶ道場は王城の西にある。
この国の剣術はかなり実戦向きで強い。
そのことは他国にも広く知られている。
剣の形なども幾つか学ぶが、それらは実戦の中で自然に出来上がった物で、本番の戦闘でも十分に使える。
フレイはこの剣術が好きだった。
魔力を乗せてこの剣技を使えばどれ程強くなれるか楽しみで仕方がない。
と言うのも、ここで修行している者は皆この国の兵士でこの中に一人魔力が一般人の倍はある女の子がいる。
しかもおそらく無意識だと思うが、その剣技には魔力が乗っている。
生きとし生けるもの全てに極微量だが魔力はある。
当然人間にもある。
個人差も当然あるがそれは極わずか。
倍は尋常ではない。
エルルの年齢は十歳前後、この年にしては高身長、鍛えられた体つきだが、やはり男性の体つきと比べれば一回以上は小さい。
だが、この女の子の技と力は男性のそれを遥かに凌ぐ。
間違いなくフレイが今まで知り合った者の中で最も強い。
魔力が無尽蔵にあるフレイは自分も魔力を乗せた剣を試してみたい衝動に駆られる。
人目がない時に密かに試そうと何度も考えたが、何かを破壊しそうで止めている。
直感でそう感じた。
その女の子に何度と無く話し掛け強さの秘訣を訪ねたが、修行の成果としか答えないし本気でそう考えているようにしか見えない。
その魔力をどこで手にしたかを訪ねたくても、本人がこれでは正しい答えは期待できない。
この女の子の名はエルルと言う。
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他にも5歳から開放される施設が2つある。
一つは図書室、ここには王家が所蔵する書籍の殆どがある。
その中には古代魔法に関する文献も少ないがある。
魔法を自在に操るフレイにとっては、それらの文献はかなり興味がある。
フレイ以外魔法を使えない世界を望んでここへ転生した。
この世界では太古の昔に魔法や魔獣は滅んでいる。
お
だが、滅んだとは言え、一度は存在したのだから環境が揃えば復活も可能だとフレイは思っている。
もし、第三者が魔法の復活を目論み成功させたなら。
もし、時間魔法や空間魔法の復活に成功させたなら。
どんな魔法が復活してもフレイの物より強いとは思っていないが、古代魔法のことを知っているのと知らないのでは対処方法に差が出る。
この世の理を変えるような魔法を安易に使われないようにしたい。
フレイ自身も安易に魔法を使えばこの世の理を変える力を持っている。
どんな間違いを犯しても、時間魔法で時間を巻き戻し全て無かったことにすれば解決できるかもしれない。
しかし、一度使用してしまうと心理的な障壁は下がるもの。
生きていれば後悔は後を絶たない。
巻き戻してばかりで未来へなかなか行けない等と言うことにもなりかねない。
更には、うっかり転生前まで巻き戻してしまった場合、フレイはどうなるのか想像もつかない。
万が一、魔法を使わねば解決不可能な事態であっても、最小限の魔法で対処するために古代魔法の理解は必要不可欠と考えている。
「そうだ!古代魔法の研究施設を作れないだろうか?」
図書室で突然声を上げてしまったフレイ。
周りを気にしたが、近くに司書の女性が1名立っているだけだった。
「今日も古代魔法のお勉強ですか?フレイ殿下。」
この女性司書の名はカーラと言う。
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もう一つ開放された施設は浴室だ。
今までは子供用の小型バスタブにフレイが浸かり、バスタブの外で侍女が体を洗う。
それで入浴は終了。
これからは違う、浴室で侍女が体を洗う。
浴室で侍女が普段のメイド服を着ることは考えられないフレイ、どのような格好で現れるか楽しみで仕方がなかった。
が、現れた侍女達は皆湯浴み着を着用していた。
猛烈に抗議したい。
この制度を廃止したい。
「ナンデみんな服着てるの?ボクだけ恥ずかしいヨ!」
無邪気な子供を精一杯演じて聞いてみた。
「失礼に当たります。」
侍女Aが答える。
「失礼なんかジャナイよ。」
子供だから分かんない雰囲気で食い下がる。
「申し訳御座いません。そう決まっておりますので。」
侍女Bが謝る。
(その決まり、いつの日か変える!)
謝らせてしまったことに罪悪感があったので、ここまでにしたフレイ。
しかし、この湯浴み着の色は白で、あまり生地に厚みがないので濡れると透ける。
これはこれでいい。
「えい!」
侍女Bにあえて湯を浴びせる。
「フレイ殿下、湯をかけるのをおやめください。」
侍女Bの艶姿がいい。
この侍女の名はスリマと言う。
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