1.5. 【閑話】死因と家族

 時間を戻して、案内人と死人の会話。



 案内人に詳しい死因の説明を求める死人。


「あなたは片側一車線の通りの歩道を歩いていました。」


「進行方向に対して右側の歩道です。」


「細い道との交差点で信号が赤なのであなたは止まって青になるのを待っていました。」


「そこへ細い道からトラックが交差点に入ろうとしたのですが、信号が黄色に変わりやむを得ず停止線を少々超えて停車しました。」


「トラックが止まった場所は下り坂です。」


「あなたは信号が青になったことを確認して横断歩道を歩き始めます。」


「数歩歩いたところで立ち止まり太陽の眩しさを確認するように左手上空を手で遮るように眺めます。」


「その時右手から信号待ちをしていたトラックが動き出しました。」


「トラックは下り坂にも関わらずクラッチとブレーキを両方踏んで止まっていたようです。」


「信号待ちの間、スマホを見ていたらブレーキを踏む足が緩んでトラックが動き出したようです。」


「停止線を少々超えていたトラックとあなたの距離は1メートもなくて、トラックと接触してあなたはトラックの正面に尻餅をつきました。」


「しかしトラックは止らずにあなたを車体の下に巻き込みます、あなたはアスファルトとトラックの車体の下でゆっくり擦り潰すように………」


 たまらず説明の停止を求める死人。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 家族に関する説明を求める死人。


「あなたには奥様も子供もいるのですね。」


「あなたは二十年以上厚生年金と企業年金まで払っていますし。」


「不動産も結構お持ちだ。」


「持っている不動産はアパート、駐車場、倉庫まで!フル活用じゃないですか!」


「金融資産も抜かり無いですね。」


「投資信託、株、金ここだけで億超えですよ!」


「更に先物に外貨、FXもですか?」


「ご存知でしたか?」


「奥様やり手ですね。」


「全部あなたとの老後のためだったそうです。」


「残されたご家族に金銭的な心配はなさそうですね。」


「あなたを亡くしたショックは時間が解決してくれますよ。」



 こうして死を受け入れることにした死人。

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