盛りすぎ転生 〜何でもありで転生したけど、怖くて秘密にしています~
副井 響太
1章 転生
1. ほぼ神じゃん!
目を開く。
「ここは?」
真っ白な世界。無重力空間の浮遊感。前後左右上下も不明。この場の広さも感じ取れない謎空間。
「こんにちは。」
謎空間に声だけが響く。
「え、誰?何処?……声はするけど…」
「ここは、お亡くなりになられた方が最初に来る場所です。」
年齢性別も分からない声。
「死んだのか?俺。」
「はい。私はあなたの案内を任された者です。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後暫く死んだ時のことや残された者に付いて詳しく聞く死人。
全てに対して丁寧に答える案内人。
次第に死人の表情が柔らかくなった。
「…そうか、仕方が無い。受け入れます。」
「そうですか、それでは次なのですが」
「次?」
「あなたは前世の記憶を持ったまま転生することになりました。」
「マジで!」
「はい。」
「異世界転生小説みたいに?」
「はい。」
「キター!チート能力は?」
「お付けします、全部。」
「全部?」
「あー、事前にあなたの思考を読んでおきました。」
「どゆこと?」
「お望みの能力は全てお付けします。」
「エエエ!ほぼ神じゃん!」
「そうです、転生先であなたは神に等しい力を持ちます。」
「おお!」
「しかも、転生先の世界は剣と魔法のファンタジー世界です。」
「ヨッシャ!」
「あなたの望みに最も近い世界を探してあります。」
「最も近い?探す?」
「世界は無限にあります。あなたの元の世界ではパラレルワールドと呼ばれている物が近いでしょうか。」
「へー。」
「その中からあなたの望みに最も近い世界に転生して頂きます。」
「…自分好みの世界をオーダーメイドじゃないんだね。」
「人が考える理想の世界と言うものは矛盾だらけなのです。あなたは特に多い。」
「そうなの?」
「はい、あなた、剣と魔法のファンタジー世界が好みなのに魔法のない世界を望んでいますよねぇ?魔法はあなただけが使える世界を望んでいますよねぇ?」
「いや、その、時間魔法とか転移魔法とか便利だけど他人が使うと物騒だと思って…」
「それに!争いのない世界を望んでいますよねぇ?でも、無双したいと思っていますよねぇ?大体、争いがなければ剣も不要では?」
「いや…戦争は無い方がいいし、剣は、技術として残っていても…」
「剣が不要で魔法のない剣と魔法のファンタジー世界って、矛盾がないと思いますか?」
「はい、すみません……」
「しかも!王国のイケメン第三王子とか」
「はい、すみません……」
「更には!ハーレムとか」
「はい、すみません……」
「……なので、魔法は遥か昔に滅びた剣と魔法のファンタジー世界の最も平和な時代を選びました。」
「はい、有難う御座います。」
「かつて魔法があった以上魔族や魔獣も存在したけど魔法と同時代に滅びています。」
「はい、有難う御座います。」
「第三王子への転生も問題ありません。」
「はい、有難う御座います。」
「ハーレムは、お金のある国の王子です、ご自身のお力でお作り遊ばせ。」
「はい、有難う御座います。」
「あと、エルフとかドワーフの亜人種もご希望通り存在しません。」
「はい、有難う御座います。」
「必要ならご自身の魔法で創造しようと考えているようですが、止めておくことをお勧めします。」
「え?」
「あなたの魔法は生命を創造することも奪うこともできます。」
「はい。」
「奪うことの罪が重いことは承知しているかと思います。」
「一応は。」
「であれば創造することも同じだけの罪を背負うと心得てください。」
「………」
「できれば魔法自体使わないことをお勧めします。」
「それじゃ楽しみが…」
「もう魔法など存在しないと思われている世界です、突然魔法を操る物が現れたら?」
「神と崇める?」
「異端者扱いでしょう。異端審問の末火炙りコース」
「そうしたら魔法で…」
「記憶を操作しますか?矛盾なく操作できますか?他の者が矛盾に気づいたら?あなたの関与に気づいたら?更に記憶を操作しますか?」
「最悪、全員の記憶を操作して俺を…」
「あなたを居なかったことにしますか?その後、別の土地で暮らしますか?その土地でも同じことを繰り返しませんか?」
「怖いですよ。」
「例え神と崇められたとしても一度失敗を犯したら即座に火炙りコースだと思いますよ。」
「どうしたら…」
「ですので使わないことです。使う時は絶対に悟られないように注意することです。」
「……やってみる。」
「あっ!でもあなたはお望み通り不老不死ですので火で炙っても死ぬことはありません。」
「でも、熱かったりする?」
「はい、言葉の通り死ぬほど。」
「流石にその時は周りに幻影を見せて逃げても良くないかな?」
「そうかも知れませんね。」
「そうだよね。」
「ただ、あなたは自身を殺す手段もありません。」
「!?」
「要するに、二度と輪廻転生することはありません。」
「永遠に転生後の世界を離れることができない訳か…これが最も怖くないか?」
「はい、ですが、あなたの理想に限りなく近い世界です。そこで神に等しい力を手に入れるのです。あなたは転生後の世界を良くすることも悪くすることもできるのです。大切にしてあげてください。決して無茶はしないでください。」
「………」
「本当に、お願いしますよ。自暴自棄になって破壊の限りを尽くして、好みの結果になるまで何度も時間を巻き戻して最期は精神崩壊する人がいるのです。」
「精神崩壊?」
「時間を巻き戻すと言うより、時間軸を
「??」
「別のパラレルワールドへ移動すると考えてください。」
「??」
「あなたはこれから理想に限りなく近いパラレルワールドへ転生するのです」
「??」
「時間軸を遡って別のパラレルワールドへ移動すると言うことは?」
「??」
「理想から離れると言うことでもあります。」
「??」
「結局好みの結果は得られずにまた巻き戻すのです。それを何度も繰り返して最期は精神崩壊してしまうと言う訳です。」
「怖いですね。」
「分かって頂けました?」
「…何となく…大きな魔法はなるべく使わないで、あちらの様子を見てから、丁度良い落し所を見つけます。」
「そうですね、世の理が変わると世界は分岐します、あなたが変えた世界と変えなかった世界に、あなたは変えた世界に生き、変えなかった世界に戻れません、十分に気を付けてください。」
「気をつけます。」
「はい、以上で説明は終了です。他のことは転生してから体で感じ取ってください。」
「…はい。」
何か物足りない気持ちで不安だが、既に食傷気味で答えてもらっても頭に入る気がしない。
「何かご質問は?」
「本当にハーレムはなし?」
「イケメン第三王子ですよ、なしでも大丈夫です、きっと。」
「そっか。」
ハーレムだけはなにが何でも許せないようだ。
「他に質問は?」
「なんで、なんで記憶を持ったまま、神みたいな能力まで付けて転生させてもらえるんです?」
「ご褒美です、あなたは我々の創造主たる神に貢献したのです、自覚はないでしょけど。」
「どんな貢献を?」
「分かりません、生前の何らかの行いが神を喜ばせたのでしょう。それであなたが望む異世界転生を叶えることにしたみたいです。」
「…そうか…まぁ、いいか!じゃぁ、お願いします。」
「それでは、良い異世界ライフを。」
「行ってきます。」
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