第3話 恐怖の野外活動

 私はたびたび、休憩時間に避難所となった、生徒相談室を尋ねた。

休憩時間は教師が教室にいない。

殴られるのは当然怖いからである。


「あら、今日も頑張ってこられたの! 毎日偉いよ」

相談員の先生は笑顔で言う。

「学校に来られただけなのに……」

「怖いでしょう? でも、こうやってここに来られただけで偉いの」

先生は常に笑顔でそう言ってくれた。

「生徒指導の先生もたまに来るからね。もし、あまりにいじめがつらいなら匿名の通報って言って、生徒指導の先生に言っても良いわよ。学校に来られなくなっちゃう方が大変だから」

「分かりました……。でも、先生も一緒にいてください。怖いから……」

「ええ、もちろんよ」

相談員の先生は笑顔だった。


学校行事で、屋内から屋外活動をする日がある。

新聞紙などの資源を回収するのである。

私は、学校からの案内状を手に事前に町内の人に協力を仰ぎ、回収物を軒先に出してもらっていた。

「頑張ろう……」

自転車に乗り、資源を回収して学校に戻る。

私の町内から、曲がり角をいくつか曲がれば、すぐに学校だ。

だが、資源回収もとてもキツイものだった。


 曲がり角を曲がった瞬間である。

「いたいた……!」

N寺は、自転車をわざと私の自転車にぶつけた。

「いたっ……!」

私は自転車から転倒する。

N寺はニヤニヤと笑っている。


 嫌な予感がした。

「オラオラ、悔しかったらやり返せよ」

N寺は自転車から転倒して、肩を強打して痛がる私を蹴っていた。

ここが防犯カメラ付いていたら良かったのに!

私はそう思いつつ、やり返すまいと必死に耐える。

「あれ?」

女生徒が声をかけようとした瞬間、N寺はさっさと学校へと逃げて行った。

女生徒は同級生だから、私を助ける事なんてしない。

そんなところを見られたら、次は自分が同じ目に遭うと思ったからだろうと思う。


 何度も、同じ日にそんな目に遭った。

学校指定のジャージがボロボロにならない程度と、目立たないところにケガをさせるような計画的な傷つけ方である。

膝をすりむいていたが、N寺は先に周りへ言っていた。

「自分で自転車から転んだのを見た」と。

だが、この一言である。

生徒指導の先生は、N寺に目を付け始めた。

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