ある高校生の秘密

青甘(あおあま)

第1話

「まったく、なんでそんなに勉強できないのよ」

「うるさいなあ」

あきれながら、私(玉木百合)は南条薫に言う。


「そんなにいうならもう勉強教えてくれなくてもいいよ」

「しょうがないから私が教えてあげるわよ」

「いや、教えなくてもいいって言ってるんだが!?」


彼はなんでなんだよと驚いたようにこちらを見る。

(少しはこっちの気持ちにも気付きなさいよ、バカ)

誰にいうでもなく心でつぶやく。


(はー、なんで私こんなやつ好きになったんだろう)


心の中で疑問が出るが、すぐにその理由が思い出される。


(まあ、もうこいつは覚えてないだろうけどね)

やれやれと薫に顔を向ける。


「なんだよ、その言いたげな目は」

「別になんでもないわよ。それよりまだ問題は残ってるんだから、さっさとやる」

「はいはい」

軽く薫は流しながら問題に取り組む。

「いつまで、教えてもらうのかしら」

「今に見てろよ」

私が軽口を言うとぐぬぬと悔しがりながらも勉強に取り組むのだった。

(まあ、この関係も悪くないけどね)


そう思いながら彼の横顔を微笑みながら見るのだった。

彼女が自分の思いを彼に告げるのはまだ当分先となることだろう。

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