熱い!

はくちゃま

熱い!

12月7日。いつもは寒さで死にそうなのに、今日は真夏のように暑かった。


「もしもし?アイミ?」


「もしもし?どうしたのタクヤ?」


「いや、なんか暑くね今日」


「うん、テレビでもずっと騒いでるね。NASAが。やっぱ太陽なのかなー」


「いよいよ地球も滅ぶんじゃね?今日、地球最後の日じゃね?」


「地球最後の日に私と話してていいの?」


「あ――?別によくね」


「そうなんだ」


「てか外やばいわ、まじで夏、冬なのに」


「ほんとだねクーラー下げなきゃ」


「いま家では一人?」


「うん、私以外はショッピング」


「うそ、俺の家族は海いったよ」


「付いていけばよかったのに」


「暑いから無理」


「うそ、私も同じ」


「どんどん暑くなってね?」


「やば、外45度だって」


「やばすぎ」


「最後の晩餐なに?」


「今食べてるポテチ」


「相変わらず女子力ねーな」


「なにそれ傷つく」


「親しみが持てるってことだよ」


「ふーん」


「学校の奴ら無事かなー」


「連絡しなくていいの?ミサトさんに」


「なんでミサト?」


「だって好きなんでしょ?ミサトのこと」


「は?別に好きじゃねーよ?お前こそコウタに連絡しろよ、好きならさ」


「別にあいつのこと好きじゃないけど、絡まれすぎて鬱陶しい」


「まじか」


「てか外やばい、悲鳴聞こえ始めた」


「俺もう日差しやばいからカーテン閉じたわ」


「なんか呆気ないね、人間の終わりって」


「死ぬなんて大概呆気ないだろ」


「言えてる」


「しかし暑いなー」


「ねぇ、冷えること言ってあげようか」


「是非」


「私、ワキガなんだよね」


「そうなの」


「授業中たまに抜けるじゃん、あれ脇匂ってきてたから。んでトイレでスプレーぷしゅぷしゅ」


「なんでいま言うの」


「いまじゃなきゃ言えないよ」


「別にワキガなんてどーでもよくね、もっとぶっちゃけたこと言えよ冷めたなー」


「そうなんだ、よかった」


「おう、おかげで少しは気がまぎれた」


「もう悲鳴も聞こえてこない、外59度だって」


「まじ?みんな死んだ?」


「けっこう死んだと思う」


「まじかー悲しい」


「てか今日タクヤ誕生日だよね、おめでとう」


「ああ、忘れてた。ありがとな」


「やばいカーテン火着いた。やばい」


「なんか焦げ臭いと思ったらカーテンか、俺のも燃えてる」


「ハッピーバースデー!息吹いて消しなよ!」


「無理だ無理、喉が焼け落ちるだろ」


「てかやり残したことあんのー?」


「俺は童貞で終わるのだけは避けたかったー」


「私も彼氏ほしかったー」


「好きな人死んだかなー」


「私は生きてると思う」


「俺もー」


「やばいどんどん熱くなってるし、避難先のリビング燃えてるナウ」


「ドアのぶ熱すぎて部屋から出られなーい」


「なあ恋愛ってどんなだと思うー?」


「ロウソクー」


「あー分かるかも、燃えるような恋愛って自分も燃えて悶えるものだよなー!ドロドロが一番だよなー!」


「いまリアルで燃えてるけどねー!」


「それってどういう意味―?」


「ねぇ、もう死のうかー」


「これってなにと心中するのー?世界、人類?」


「世界も人類もどーでもいいじゃんもうないんだから。残ってんの私とタクヤだけー」


「じゃあお前と死ねるんかー!生きててよかったー!」


「やばい急に熱くなってきた。たぶんもう死ぬー。まじでどうする?」


「せーので遺言を言おうぜー!」


「わかったー」


「「せーの」」


「アイミ好きだ――――!」


「タクヤ好いと―よ――!」


 

 12月7日。リア充滅亡。

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熱い! はくちゃま @Hakuchama

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