◯。

茶々アルト

秘密道具。


ー秘密だよ?


そう彼女は笑う。


ただ、


ー秘密道具だよ?


って笑う。


笑いながら、両手の指を丸めて、ふたつかさねて、


ほら、望遠鏡だよ?


って笑う。


僕たちの秘密の遊びは、いつだって、手遊び。


どこにいても、


いつでもキミを見てるよ?


ひみつの魔法の手なんだよ?


そう笑って、いつも探検ごっこした。


小さな野原が広がる場所で、かくれんぼしながら、


ー見つけた!


って、両手で、まるを作った。


しゃあ、つぎは、僕だよ?


右手を丸めて、おなじように、望遠鏡を作って、左手でおおう。


そしてうすあかりの太陽にむけるんだ。


ちょくせつは、みたらダメだよ?目をやられるから、


そう笑ってみせたら、真っ赤なオレンジみたいに燃える世界が、手のなかにひろがる。


きみは、きれいだと笑う。


ただ笑いながら、僕たちは、いっしょに時を重ねて、


ある日、僕は勇気をだした。


ー手をつないでかえりたい。


ってきみに、言ったら、


きみは、笑って、


親指と人差し指をまるめて、


ーまる。


いつだって、きみはまるをくれるんだ。


僕たちの秘密道具、


ー手遊び。


秘密のあそびだよ?


って笑うんだ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

◯。 茶々アルト @anotoa10030113

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ