第29話 新しくきた神子
アルベルトが騎士棟へ行っている間、僕はライアとお風呂に入り、部屋でくつろいでいた。
ライアは新しく与えられた部屋を見て、目をキラキラさせていたが、すぐに広すぎて不安だと僕の部屋へとやって来た。
「慣れるまでは僕とこの部屋で暮らそう」
ライアの髪を乾かしながらそう伝えると、ライアは満面の笑みを浮かべた。
その時、ノックをする音が聞こえ、扉を開けると護衛に付き添われた少女がいた。
彼女は
不安そうな表情で僕を見つめる咲に、僕は微笑みながら部屋へ招き入れた。
「さっきは全然話せなかったので、ご迷惑かと思ったんですが・・・」
ソファーに座り、辿々しく話す咲に僕はニコリと微笑む。
「僕達は同じ歳だ。敬語なんて使わなくていい」
「・・・・ありがとう」
ほんのり目に涙を浮かべながら、小さくお礼を言う咲に僕は胸がちくりと痛む。
「何か困ったことはない?そうだ、さっき、お湯をポットに入れてきたんだ。紅茶を入れるね。どんな紅茶が好きかな?」
「・・・ミルクティはある?」
咲の返事に、ライアが目をキラつかせて咲のそばへ寄る。
「僕もミルクティ、大好き!圭が入れてくれるミルクティは本当に美味しいんだよ」
ニコニコとそう話すライアに、咲も笑顔を溢す。
「どうぞ・・・。ミルクはここに入っているから、好みで入れてね」
僕はカップに注いだ紅茶を差し出し、隣に小さな小瓶を置いた。
咲はすぐにミルクを注ぐと、一口だけ口にして美味しいと溢した。
「あの・・・圭はここに来て長いの?」
咲の問いかけに僕は少し戸惑いながらも、返事を返す。
「そうだね・・・長いといえば、長いけど・・・少し事情があるんだ」
「そう・・・」
「ごめんね。いずれ時期が来たら話せる時が来るから、それまで待ってて欲しいな」
「わかった・・・それと、癒しの力って・・・」
「僕と咲には、神の加護が与えられていてね。怪我とか病気を治す力が備わっているんだ。だから、最初は少し大変だけど、僕がそばで見守るから、一緒に頑張ろう。
決して無理はさせない。僕が守ってあげるから、信じて欲しい」
「僕とアルベルトもいるから、安心してっ!」
咲の隣で胸を張るライアに、僕はふふッと笑った。
「ライアも凄く頼りになるんだよ。それにアルベルトも聖騎士の団長をしていたくらい実力もある。だから、安心して」
僕の言葉にまた目を潤ませて小さく頷く。僕は咲の隣に移動して腰を下ろすと、咲の手を取る。
「不安も寂しい気持ちも、1人で我慢しようとしないで。いつでも僕達が側にいる。
それに陛下も元の世界へ戻す方法を探してくれてる。少し・・・時間はかかるだろうけど、努力すると約束してくれたんだ。陛下は努力ができる優しい方だ。陛下の事も信じて欲しいな」
「あの・・・王様と圭って・・・」
「・・・・僕達は・・・僕と陛下は・・・以前は想い合っていた仲だけど、色んな事があって添い遂げることが出来なかったんだ。その事で、僕達の間には溝がある。でも、僕も陛下も違う道を選んで、僕はその道で愛する人を見つけた。その人を心から愛しているんだ」
「・・・その人って・・・」
その時、ノックの音がしてドアが開かれる。
「アルベルト、おかえり!」
ライアがアルベルトへ駆け寄り抱きつくと、アルベルトはライアの頭を撫で、微笑みながらライアを抱き抱えた。
「アル、来て」
僕の声にアルベルトは微笑みながら、側に歩みよる。
僕は、立ち上がってアルベルトの腰へ手を添えると、咲へと視線を向けた。
「咲には知ってて欲しいから・・・改めて紹介するね。彼は今後、僕達の護衛騎士になるアルベルトだ。そして、僕の恋人だ」
「圭っ!?」
驚いた表情で僕に視線を向けるアルベルトを見て、僕は笑う。
「真面目な人だから、仕事中は無表情で無口になるけど、怖がらずに仲良くして欲しいな。あ、あと、仕事中はベタベタしないから、そこも安心して欲しい」
僕の冗談に、最初はポカンとしていたが、咲はふふっと声を出して笑った。
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