第29話 新しくきた神子

アルベルトが騎士棟へ行っている間、僕はライアとお風呂に入り、部屋でくつろいでいた。

ライアは新しく与えられた部屋を見て、目をキラキラさせていたが、すぐに広すぎて不安だと僕の部屋へとやって来た。

「慣れるまでは僕とこの部屋で暮らそう」

ライアの髪を乾かしながらそう伝えると、ライアは満面の笑みを浮かべた。

その時、ノックをする音が聞こえ、扉を開けると護衛に付き添われた少女がいた。

彼女は岡田オカダ サキ、僕と同じ16歳だった。

不安そうな表情で僕を見つめる咲に、僕は微笑みながら部屋へ招き入れた。


「さっきは全然話せなかったので、ご迷惑かと思ったんですが・・・」

ソファーに座り、辿々しく話す咲に僕はニコリと微笑む。

「僕達は同じ歳だ。敬語なんて使わなくていい」

「・・・・ありがとう」

ほんのり目に涙を浮かべながら、小さくお礼を言う咲に僕は胸がちくりと痛む。

「何か困ったことはない?そうだ、さっき、お湯をポットに入れてきたんだ。紅茶を入れるね。どんな紅茶が好きかな?」

「・・・ミルクティはある?」

咲の返事に、ライアが目をキラつかせて咲のそばへ寄る。

「僕もミルクティ、大好き!圭が入れてくれるミルクティは本当に美味しいんだよ」

ニコニコとそう話すライアに、咲も笑顔を溢す。

「どうぞ・・・。ミルクはここに入っているから、好みで入れてね」

僕はカップに注いだ紅茶を差し出し、隣に小さな小瓶を置いた。

咲はすぐにミルクを注ぐと、一口だけ口にして美味しいと溢した。

「あの・・・圭はここに来て長いの?」

咲の問いかけに僕は少し戸惑いながらも、返事を返す。

「そうだね・・・長いといえば、長いけど・・・少し事情があるんだ」

「そう・・・」

「ごめんね。いずれ時期が来たら話せる時が来るから、それまで待ってて欲しいな」

「わかった・・・それと、癒しの力って・・・」

「僕と咲には、神の加護が与えられていてね。怪我とか病気を治す力が備わっているんだ。だから、最初は少し大変だけど、僕がそばで見守るから、一緒に頑張ろう。

決して無理はさせない。僕が守ってあげるから、信じて欲しい」

「僕とアルベルトもいるから、安心してっ!」

咲の隣で胸を張るライアに、僕はふふッと笑った。

「ライアも凄く頼りになるんだよ。それにアルベルトも聖騎士の団長をしていたくらい実力もある。だから、安心して」

僕の言葉にまた目を潤ませて小さく頷く。僕は咲の隣に移動して腰を下ろすと、咲の手を取る。

「不安も寂しい気持ちも、1人で我慢しようとしないで。いつでも僕達が側にいる。

それに陛下も元の世界へ戻す方法を探してくれてる。少し・・・時間はかかるだろうけど、努力すると約束してくれたんだ。陛下は努力ができる優しい方だ。陛下の事も信じて欲しいな」

「あの・・・王様と圭って・・・」

「・・・・僕達は・・・僕と陛下は・・・以前は想い合っていた仲だけど、色んな事があって添い遂げることが出来なかったんだ。その事で、僕達の間には溝がある。でも、僕も陛下も違う道を選んで、僕はその道で愛する人を見つけた。その人を心から愛しているんだ」

「・・・その人って・・・」

その時、ノックの音がしてドアが開かれる。

「アルベルト、おかえり!」

ライアがアルベルトへ駆け寄り抱きつくと、アルベルトはライアの頭を撫で、微笑みながらライアを抱き抱えた。

「アル、来て」

僕の声にアルベルトは微笑みながら、側に歩みよる。

僕は、立ち上がってアルベルトの腰へ手を添えると、咲へと視線を向けた。

「咲には知ってて欲しいから・・・改めて紹介するね。彼は今後、僕達の護衛騎士になるアルベルトだ。そして、僕の恋人だ」

「圭っ!?」

驚いた表情で僕に視線を向けるアルベルトを見て、僕は笑う。

「真面目な人だから、仕事中は無表情で無口になるけど、怖がらずに仲良くして欲しいな。あ、あと、仕事中はベタベタしないから、そこも安心して欲しい」

僕の冗談に、最初はポカンとしていたが、咲はふふっと声を出して笑った。

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