第25話 繰り返される過ち
王城へ着いてから、アルベルト達と僕を別々の部屋へと案内しようとしていたが、アルベルトが頑としてそれを許さなかった。今すぐにでも乱闘が始まるかのような雰囲気に、ルークが根負けし、同じ部屋へと案内された。
騒がしい中、寝ていたライアが起き、数日風呂に入ってなかったのもあり、僕と用意された湯船に浸かった。
久しぶりのお風呂が心地よかったのか、ライアはすぐにまた寝入ってしまった。
僕は隣に寝そべりながら、アルベルトがお風呂から出てくるの待った。
明日から事を考えると憂鬱でたまらなかった。
僕をあっさりと見捨てた王子が、どうして僕を探していたのか、それが不思議で仕方なかった。
ただ神子を探していたには、あまりにも僕の容姿を覚えている。
昔のようにただ神子としての力が必要ならば、来た時と同じように大掛かりな人数で探したはずだ。
それなのに内密で探した上に、迎えに来た騎士達も少ない。
まだ僕が穢れた者では無いから、利用価値があると思っているのだろうか。
いろんな疑問が次から次へと湧いてくる。
「圭・・・」
不意に名前を呼ばれ、振り向くと、いつの間にか風呂から出てきたアルベルトが立っていた。僕は毛布を上げ、隣へと誘う。
「ライアを間にして寝ようかと思ったんだけど、今日はアルと寄り添って寝たい。いいかな?」
「あぁ。私もそうしたいと思っていた」
アルベルトは微笑みながら、僕の隣へと寝そべり、僕を抱き寄せる。
僕も手を伸ばし、アルベルトの背中に手を回し、アルベルトの温もりに包まれる。
「色々と不安だろうが、私が側にいる」
「うん。僕もそばにいて欲しい」
互いに不安をかき消すかのように、強く抱きしめ合った。そして、何度も唇を重ね、そのまま眠りについた。
翌日、朝食を済ました後、すぐに陛下との謁見があると言われ、僕達は執務室の隣にある応接間へと案内された。
扉を開けたそこには、懐かしい顔とそばに若い女の子がいた。
その子の容姿を見て、僕はドクンと心臓が跳ねる。
部屋に入り、少し怯えた表情で僕を見つめる少女を、僕も見つめ返した。
「この子は・・・」
「先日、召喚された神子だ」
懐かしい声で発せられた言葉に、僕は怒りが込み上げてきた。
「あなた方は、自分達のエゴのために、また繰り返すのですか!?」
突然、怒鳴り声を上げた僕に、誰もが口を閉ざす。
「これは誘拐と一緒です!本人の意思と関係なく、無理やりここへ連れてきた!それに、この子は僕と同じくらいの年齢のはずだ!僕達の世界では、まだ子供なんだぞ!なのに突然、家族から無理やり引き離された僕達の気持ちがわからないのですか!?」
僕の言葉に、少女が涙を溢し始めた。
その事に、僕は怒りが失せ、慌てて少女の隣へ座り、背中を摩る。
すると、少女は僕へと体の向きを変え、抱きつき、大声で泣き始めた。
「私、帰りたい。お母さんとお父さんに会いたい。お兄ちゃんにも、弟にも会いたい」
嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる少女に、僕は胸が苦しくなる。
何故なら、帰れる術がないのだから・・・。
僕は少女を抱きしめ返しながら、罪悪感からか涙が流れる。
「ごめん・・・何もかも僕が悪いんだ・・・僕が、僕が逃げなかったら、君は呼ばれる事もなかったはずだ・・・本当にごめん・・・。僕にも・・僕にも会いたい家族がいるんだ。僕には僕を愛してくれた父と母がいる・・・僕は一人っ子だったから、残してきた両親の事を思うと未だに悲しいんだ・・・だから、君を悲しませる事になってしまったのが本当に心苦しい・・・本当にごめんね・・・」
僕は何度もごめんと謝りながら、少女が泣き止むまで、背中を摩り続けた。
しばらくすると、少女は緊張からなのか、泣いた事で安堵したのか、気を失ってしまい、騎士に抱えられ、別の部屋へと連れて行かれた。
僕は乱暴に涙を拭った後、席を立ち、中央へいる陛下へと頭を下げる。
「陛下の前で声を荒げて申し訳ありません。初めまして、圭と申します」
そう挨拶して、ゆっくりと顔をあげる。
そこにはかつて心を寄せた懐かしい人、ユリート・エルガ・ハルドラントの顔があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます