第23話 守るべき人
緊迫した状態が続く中、ライアがいきなり大声で叫ぶ。
「どうして僕達を捕まえるの?圭はこんなに弱るまでみんなを助けたのに、どうして僕達が捕らわれなきゃいけないの!?」
そう泣き叫ぶライアの姿は、過去のライアを姿を思い出させた。
昔もこうやって僕の為に泣き、叫び、庇ってくれた。
その光景が僕の涙を誘う。
僕を守る小さな友人、そして目の前に立ち憚る愛しい人・・・このままでは、2人を傷つけてしまう・・・・そんな思いが湧き上がり、僕はアルベルトの服を掴んだ。
「アルベルト・・・」
「ダメだ!行かせない!」
「アルベルト・・・僕と約束したよね?どんな事があっても一緒に生き抜くって・・・このままじゃ、僕達、約束を果たせない・・・」
「それでもダメだっ!」
「アルベルト・・・このままじゃ、ライアも傷付ける・・・どうか、ライアを守って・・・僕達の大切な家族を・・・僕達の子供を守って・・・」
ボタボタと伝い落ちる涙で、アルベルトの背中が霞む。
「ライア・・・」
「圭っ!ダメだよ。行っちゃダメだ!僕、アルベルトから全部聞いた!だから、戻っちゃダメだ・・・ダメだよ・・・」
ライアは離すまいと僕にしがみ付き、懇願する。
僕はその小さな体を抱きしめながら、頭を撫でる。
「また僕は君を悲しませてしまったね・・・ごめんね。僕の小さな友人・・・僕の大切な家族・・・僕はライアが大好きだよ」
そう伝えると、僕はまたアルベルトの服を掴む。
そして、剣を力なく下げたアルベルトを見届けてから、涙を拭った。
「大人しくついて行くから、2人には手を出さないでっ!」
僕の言葉に、騎士の群れの中から1人前に出てきて僕に頭を下げる。
「初めまして。私は王宮騎士団長のルークと言います。そして・・・」
頭を上げた彼は、今度はアルベルトへと視線を向け、軽く会釈する。
「お久しぶりです。アルベルト団長」
「私はもう騎士ではない」
「それでも、聖騎士から上がった私とって、あなたは今でも団長です」
「ならば、よしみで逃してくれ」
「それは出来ません。王が神子様との対面を要望しています。そして、団長、あなたも一緒に来るようにと・・・」
その言葉に僕は身を乗り出し、アルベルトを庇う。
「それは許可しません!アルベルトには何の罪もない!僕をたまたま見つけて、僕が逃してと頼んだんです!アルベルトは何も悪くない!」
「圭・・・私は大丈夫だ。後ろにいろ」
「嫌だっ!」
僕はルークと名乗る騎士を睨みつける。
ルークは何も言わず、僕を見つめた後、小さなため息を吐いた。
「団長の処遇については、王宮にて決めます。ですので、一旦は我々と一緒に王宮へ護送させて頂きます」
その言葉を合図に、周りの騎士が僕を囲むが、アルベルトが触るなと怒鳴り付け、僕の肩を引き寄せる。
そして、まだ僕にしがみ付いているライアの存在に、僕はライアとアルベルトを見つめる。
「ライア・・・ここで待っててくれる?」
「いやだっ!僕も行く!」
「ライア、戻れば僕達の身もどうなるかわからないんだ」
「それでも行く!僕達は家族なんでしょ?僕の事、大切な子供だって言ったじゃないか!親なら子供の僕を置いて行くなっ」
ライアのその言葉に、必死に堰き止めていた涙がまた溢れ出す。
ライアは一度、母親という家族を失った。ここでまたライアの手を離し、1人にさせてしまったらライアはきっと立ち直れない。
そう思うと、涙が止まらなかった。
するとアルベルトが、身を屈め、ライアを抱きしめた。
「すまなかった。ライアが言うように私達は家族で、ライアは大切な私達の子だ。一緒に行こう。私がどんな手を使ってでも守ってやる」
そうライアに囁くと、ライアはアルベルトの服に手を伸ばし、ぎゅうと握りしめた。
それから、アルベルトは片手でライアを抱き上げ、もう片手で僕の手を握る。
大きくて力強いこの手が、僕に大丈夫だと語りかけている。
その声に応える様に、僕もアルベルトの手を強く握り返し、騎士達に囲まれながら馬車へと乗り込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます