第14話 家族
それからすぐにでも手伝いたいと申し出るライアを静止し、今日から僕の部屋をライアの部屋として使って欲しいと伝える。
ライアが僕はどうするのかと尋ねると、僕はアルベルトの部屋を一緒に使うと返した。
その言葉に、アルベルトが動揺するも僕はいいよね?と強気でアルベルトに返す。
アルベルトは少し躊躇ったものの、分かったと小さく返事をした。
夜、お風呂を終えて部屋に戻ってきたアルベルトに何をしているのか尋ねられ、僕は忙しく動かしていた手を止めて、アルベルトへと視線を向けた。
「僕の服を少し手直して、ライアにあげようと思って・・・」
そう答えた後、僕はまた手元に視線を向けて服に針を通していく。
「それでは圭の服が少なくなってしまう。直すなら私の服を直せばいい」
アルベルトの言葉を聞きながら、僕は笑う。
「アルベルトの服は大きすぎるよ。僕は服がなくてもいい。幽閉されている時、僕に与えられた服は2枚だけだった。それを毎日洗濯して、破れたら繕ってきてたんだ。
ここではおしゃれする必要もないし、僕は全然構わないよ」
平然と答えた僕に、アルベルトが小さくそうだったのかと溢した。
それから僕の隣に来て、服を一枚取ると針を手に取った。
僕はそれをキョトンと見つめる。
「アルベルト、裁縫できるの?」
「あぁ。遠征に行く時、荷物は必要最低限しか持たない。服が破けてしまったら各自で繕うんだ」
「そうなんだ・・・貴族の人達は破けた服は捨てるから、きっと騎士団の人達もそうしてると思ってた」
「聖騎士は王城の騎士達と違って、平民からも仲間を集う。それもあってか、貴族らしくない人が多い。私にはそれが合っていた」
そう言いながら器用に針に糸を通し、服を縫い始めた。
「ふふっ」
不意に声を漏らし笑う僕に、何故笑うのかと言うような視線を向けてくる。
「ごめん・・・でも、アルベルトの手はこんなに大きいのに、小さな針を器用に動かしているのが不思議で・・・」
「そうか・・・?私の騎士団は皆、こうして縫っていたぞ」
「そうなんだ・・・ふふっ・・・僕と君は長い付き合いだったのに、僕は君の事を何も知らない。だから、毎日こうして過ごして君の事を知れるのがとても嬉しい」
僕の言葉に、アルベルトが手を止めて僕を見つめる。
僕も手を止めてアルベルトへと視線を向ける。
「アルベルト・・・僕は、まだ完全に愛を信じられずにいる。でも、君からの愛情は凄く伝わっているよ。だから、少しずつになるけどこの先、僕はアルベルトと同じ気持ちで暮らしていけたらと思ってる」
「圭・・・・」
「僕がライアに言った言葉は本心だよ。僕はアルベルトと家族になりたい。アルベルトは僕の大切な人だから・・・」
目を逸らさずそう伝えると、アルベルトは今にも泣きそうな表情をして僕を見つめ返す。
「僕と家族に・・・・恋人になってくれる?」
顔がほんのり熱く感じるのを我慢しながら、はっきりと声にして言うとアルベルトは僕を抱きしめた。
「圭・・・愛している。ずっと私のそばにいてくれ。心の底から圭が愛おしくてたまらないんだ。愛してる、圭」
「僕もアルベルトが好きだよ。ゆっくりではあるけど、ちゃんとアルベルトへ気持ちが向かってる。まだ、アルベルトと同じ気持ちでは無いのかもしれないけど、僕がアルベルトへと歩いていくから、もう少しだけ待っててくれる?」
「あぁ・・・いつまでも待っている。圭のそばで待っている」
アルベルトの言葉に僕は安堵して、今まで返せなかった腕をアルベルトの背中に回す。
「アルベルト・・・好きだよ」
僕の言葉に、アルベルトは返すかのように抱きしめた腕に力を込めた。
僕はふふッと笑いながら、服を仕上げようと声をかけたが、もう少しだけと強請るアルベルトに絆され、しばらくの間、何も言わずにただ抱きしめ合った。
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