22-1-2 第248話 平定への評定の閉廷
弘治三年 西暦1557年 一月初旬 午後 場所:甲斐国 甲府 躑躅ヶ崎館
視点:高坂昌信 Position
高坂「えっ、私ですか!?急に話せと言われましても……
千代女さんからの思わぬ目配せに、鼓動が高まる。
大熊「武田家に厄介になって、まだ日の浅い身ではありますが……考えを述べさせていただきます」
高坂「!?」
私より大きな声で言葉を続けたのは私の真後ろにいた、大熊殿だった。
そりゃ、そうだよね。
越後の出身だし、旧長尾家家臣だし……。
高坂「ふぅ~、良かった。私ではなかったようだね」
秋山「(しっかりと聞こえていたぞ)」
隣の秋山が耳元でささやく。
高坂「(さっさと忘れろ)」
秋山「痛っ!小突くことは無いじゃねぇか!」
信繁「そこ!うるさいですよ!」
秋山・高坂「すいやせん」「すみませぬ……」
信廉「大熊、話を切ってしまってすまなんだ。話を続けてくれ」
昌景(さて、大熊朝秀か……。越後での敗将がどこまで役に立つか、見極めさせてもらおう)
大熊「は、はい」
大熊は目を閉じて、ひと呼吸してから言葉を続ける。
大熊「私見ではありますが、武田が善光寺平に侵攻したとあらば、長尾家は当主の景虎様直々に出向いてくると思われます」
馬場「やはり出てくるか、景虎。
馬場様が苦々しく、首を振る。
大熊「景虎様という方は信義の厚い性格をしておられます。なかなか人を見捨てられない。そんな方なのです」
信繫「人望に長けている、ということか。なるほど」
大熊殿以外なら説得力あるのだけど、
結果的に見捨てられた感のある人なのよね~。
大熊「それに善光寺平が武田の支配下に入れば、高梨領しか長尾領に対する防衛線がなくなります。そうした意味でも出てくる可能性が高いと言えるかと」
飯富「実に厄介、厄介なことよ!」
板垣「では
大熊「しかし、長尾勢にとって我々以上に厄介なのは【雪】です。越後は日ノ本でも有数の豪雪地帯、雪をかき分けて救援に駆けつけることが出来たとしても、寒さと疲労でとても戦えるような有様ではないでしょうね」
秋山「あーわかる。確かに女の子とお茶するのとその後口説くのは、難易度が変わってくるよなぁ~」
跡部「話を一緒にするな!」
高坂「そうだね。どちらかと言うと口説くよりも、その子に好みのお茶を用意する方が難しいよ」
跡部「……違う、そうじゃない」
信繁「ヴゥン……!」
話がダレてきたところで、信繫様が咳払いをする。
信繫「それで大熊。ずばり景虎が出張ってくるとしたら、どれくらいと見ますか?」
大熊「そうですね。雪解けの季節としたら卯月の上旬頃。いや、雪をかき分けてでも出陣してくるのであれば、弥生の月のうちには出てくるやもしれません」
信繫「わかりました。ともあれば、善光寺平の平定には早期の攻略を果たせる諸将に出陣を命じることになるでしょう」
信廉「今日の所は、これくらいにするかぁ!皆の意見は智にも、しかと伝えおこう」
「「「「」はっ!!」」」
信繫「それでは年初めの大評定は、
跡部「何か用向きのある方以外は、退室してください」
▼▼▼▼
同じ頃 場所:甲斐国 甲府 城下
視点:律Position
律「あれ?奏先輩?何しているんですか、こんな所で?」
甲府の街を歩いていると、思いがけない人物と遭遇した。
小田原ならいざ知らず、北条家の奏先輩と甲府で会うと思っていなかったからだ。
奏「ちょっとした用事でね。何しに来たと思う?」
律「大方、北条家からの年始の挨拶と言ったところですか?」
奏「はぁ~なんで、当てちゃうかな~。正解」
律「正解ならもっと喜んでくださいよ!」
奏「いや、律ちゃんのことだし、ワタシが京四郎くんに会いたかったから~とか言うかなぁ……と」
律「言いませんよ!」
奏「ところで、律ちゃん。さっきから出来ている、あの人だかりは何だい?」
奏先輩は、躑躅ヶ崎館の門前に出来ている女性の集まりを指さす。
律「あ~、あれはいつもの恒例行事ですよ。見ててください」
しばらくして、館から高坂さんが現れると同時に大歓声があがる。
律「あれが、
奏「あ~、まさにアイドルとその追っかけみたいなモノね」
律「まぁ、実際は部下の人達なんですけどね。ちなみに京四郎はムショ帰りの頭を出迎えるヤクザ集団みたいだって言ってました」
奏「それは……。イヤな例えね」
律「ですよね!?」
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