10-6 第136話  謎のイケメン宣教師

天文二十一年 1552年 九月十六日 午前 場所:堺 南蛮館 

視点:律Position


セサール「おや、かわいらしい来客ですね。どうしましたか?」

律「あ、はい……。り、律と言います///」


 奥から現れたセサールさんは、灰色の瞳にオレンジ色の髪をしたイケメンだった。

思わず、口がこもる。


律「実は今、アタシたちはワインを作ろうとしています。そこで作り方のアドバイスをして欲しくて来たんです……」

セサール「なるほどワインを……」


 セサールさんは、真剣な眼差しでアタシを見つめる。


律「あ、これ。店を出る時に預かってたレーズンです」


 アタシは鞄から梱包されたレーズンを取り出す。

これは京四郎から参考になればと、渡された物だ。


セサール「ブラーボ!HAHAHAHAH!」


 海外ドラマに出てきそうな感じのリアクションをしながら、レーズンを口にする。


律「ヨーロッパのと種類が違うので、少し味が違うかもしれませんが……」

セサール「イヤ、十分おいしい」


 セサールさんは、満足そうにレーズンを口に運び続ける。


セサール「うん。キニイリマシタ。この吾輩が直々にレクチャーしに行きましょう」

律「ほ、本気ですか?甲斐ですよ!遠いですよ!山国ですよ!」

セサール「構いません。日本でもグレープが作られている所……。キョウミあります」


 実際に甲斐に来てもらって教えてもらえるなら、それに勝ることは無い。

でも智様や武田家の人達が、西洋人を受け入れてくれるかどうか怪しい。


セサール「(それに……堺デノ暮らしも飽きマシタ)」


 トーレスさんに聞こえないように、こっそり耳打ちしてくる。

そこまで言われたら断ることは無いだろう。


律「厄介ごとは困りますから。しっかりと一緒の人達に伝えてくださいね」

セサール「OK。ショウチ、承知」


 ……本当に大丈夫かな?


セサール「連れがいてもイイですよね?」

律「はい。問題ないと思います」

セサール「では、契約成立デスね」


 トーレスさんにもレーズンをおすそ分けして、その場を後にした。

▼▼▼▼

 三日後(九月十九日) 場所:堺 


セサールさんたちと合流して京都を目指すことになった。

セサールさんの同行者は二人。


 一人目は、ルクレシアさん。

セサールさんと同じ金髪の鍛冶屋だと言う。

ほっそりとした容姿で、顔も整っている。


ルクレシア「貴女が律ね。よろしく」

律「よろしくお願いします」


 ルクレシアさんは、右手を差し出す。

アタシはテンパっていたのか、その右手にキスしてしまう。


ルクレシア「あらあら、貴女はワタクシの騎士様ってわけ?ウフフっ……」

律「あ……い、いえ……。こ、これは……///」


 本当は、握手のつもりだったんだろうなぁ……。

でも気に入ってくれたようなので、良しとするか。


 もう一人の従者は、ミケロさん。

寡黙な感じの男性だ。


ミケロ「……………………」

律「…………………………」


 沈黙の時が流れる。


セサール「あ~、彼は日本語を話せないよ」

律「ならば、先に言ってくださいよ!」


 その後、京都で種子の入手に従事していた京八・お龍の二人と合流。

その足で、武田藤信さんに関西における拠点作りの内諾も得た。


京八「これでやっと甲斐に戻れますね。なんだか知らない人たちも増えてますけど……」

律「あはは……。結局聞くより見てもらった方が早いからね」

京八「それは、言えてます」


 結局、巨大都市圏の近くの方が便利なのは、今も昔も変わらないのよねぇ……。



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