閑話 博士への試練

令和XX年 西暦20XX年 場所:埼玉県さいたま市坂本宅


「お待たせ~遅くなってごめんね~ってあれ?」

坂本「あ、侑ちゃん。やっほ~」


真田侑「何見てんの~?これ京四郎くんと律?」

坂本「そう。ちょ~っとモニタリングしててね。二人がいるのは戦国時代」

侑「何やってんの!!まったく、信じられない……」


坂本「でも見たいでしょ?」

侑「……うん」


 坂本は言ったところで、すぐに考えを変えるような殊勝な奴ではない。


坂本「それに最悪、最終的に現在に戻すことが出来れば問題ないでしょ?」

侑「それもそう……かな?」


坂本「まぁ、タイムマシンを発明したことを発表するつもりもないけどね。こっそりとタイムマシンを使われて発明直前に他人に割り込まれたらイヤだし」

侑「ぐうの音も出ない……」

坂本「あ、タイムマシンの名前は決めてあるのよ。その名もスプートニク!」


侑「ソ連が世界で初めて打ち上げた人工衛星の名前ね……」

坂本「そう、さすが歴史博士!」


侑「もっともそれに乗せられた犬、ライカは地球軌道を始めて周回して帰らぬイヌとなったんだけどね……」


坂本「えへっ///」


 侑の眉毛が吊り上がったのを見逃さなかったのか、坂本は違う話題を振る。


坂本「あ、あ……そうだ!天文十八年っていつなの?」

侑「さっきの映像では二人と話してたじゃない。向こうの二人はスマホで調べられないの?」

坂本「二人が移動に使ったワームホールは通常は極細で人が通れるものじゃない。だから最終手段の連絡手段として充電は温存すべきと言ったのよ」

侑「なるほど」

坂本「この映像もラグがあるんだ。それでも友達が貸してくれた超無人飛行機ドローン様様ってわけよ!」


 そんなものかと、侑はすっかり炭酸の抜けた盆栽サイダーを飲み干す。


侑「さて、天文十八年について説明しよう!」

坂本「い、いや本当に簡単でいいからね!侑の歴史話は長くなりがちだから……」


侑「ズバリ言うと天文十八年は西暦1549年だな。」

坂本「年号だけ言われてもピンと来ないよ~」

侑「あれっ、小学校で教わらなかった?1549【いごよく】伝わるキリスト教って。キリスト教が日本に伝来したのが1549年だよ。」


 坂本は首をかしげている。


侑「じゃあ、問題。日本にキリスト教を始めて伝えた宣教師と言えば?」

坂本「……」

侑「ほらほら~大ヒント!フから始まる人だよ」


坂本「フラメンコ・ダンス……?」

侑「人ですらないじゃん!国は奇跡的にあってるけど……」


 さすがに侑はあきれ顔だ


侑「じゃあ、理系の話題を……。三次方程式の解の公式や四次方程式の解法が発表されたのがこの頃なんだよ」

坂本「へぇー」

侑「その発表をしたのがジェロラモ・カルダーノってイタリアの人なの。ところがところが、この解の公式ってのが、ニコロ・フォンタナ・タルタリアという他の人から絶対に秘密でと誓って教えてもらったものだったわけ」

坂本「ワーオ……」


侑「当然揉めたそうよ」

坂本「そりゃそうだよ!!!」


侑「ただ、ちゃっかりした人ってだけではなくて、アレルギーの発見とか虚数の発見とか腸チフスの発見をしている人でもあるのよ」

坂本「すごいじゃん」


侑「ギャンブル好きでサイコロ賭博が好きだったらしく、系統的な世界初の確率論を書き記してもいるのよ」

坂本「科学者とかって往々にして、変な奴ばっかだからね」

侑「坂本が言うと納得ね」


 話もひと段落してひとまず侑は帰り支度を始めた。


侑「取りあえず、京四郎の妹ちゃんと礼先輩にはこのことは自分で説明しなさいよ」

坂本「へ~い」


よりにもよって面倒くさい相手なだけに、坂本は憂さ晴らしにロックをかけ始めた。



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今後、閑話は令和パートを扱う際につけさせていただきます。

本編が解説ばっかりになるのを避けるための仕分けでもありますので、

戦国時代のストーリーだけ見たい人は飛ばしてしまっても差し支えないです。

ちょっと歴史に興味湧いてきた。そんな人への予備知識コーナーにしようかと思っています

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