俺の知らない彼女の秘密

味噌わさび

第1話

「ちょっと」


 放課後。隣の席の彼女に話しかけられた。


「……何?」


「何、じゃなくて。帰るんでしょ? 今日も一緒に」


 不機嫌そうにそういう彼女。


「あー……うん。そうだね」


「……何その反応。帰りたくないの?」


「いや、帰りたいよ」


 俺がそういうと、彼女は俺のことを睨む。


「……アンタ、誰にも話してないでしょうね?」


「え……な、何が?」


「何って……秘密のことよ。アンタが知ってる私の秘密」


 そう言われて俺は納得したように頷く。


「……アンタが私の秘密を知ってよっていうから、仕方なく、一緒に帰って上げてんのよ?」


 嫌々そうに彼女はそう言う。


 確かに数週間前、いつもうるさい隣の席の彼女を俺は「お前の秘密を知ってるぞ」と、からかうつもりでそう言った。


 だけど……俺は彼女の秘密なんて知らない。


 知らないのに何故か彼女は俺に弱みを握られているかの如く振る舞っている。


「……とにかく! 絶対に私の秘密……誰かに話すんじゃないわよ!」


 彼女は真剣な顔でそう言う。


 彼女の秘密って……なんなんだろうか。


 そして……どうして彼女は俺と帰る時、どことなく恥ずかしそうなんだろうか?

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