手紙写真とモールス信号

色葉みと

手紙写真とモールス信号

 手紙写真。それは、直筆の手紙をカメラで撮影したもの。

 ちょっぴり手間はかかるが、その分気持ちが込めやすい伝え方だ。


 いわゆる「アナログ」があまり使われなくなり、「デジタル」が主流となった現在。

 カナはノートに万年筆を走らせていた。


『ナツへ。お元気ですか? 私は元気ですよ。なんていう前置きは置いておいて、最近見た空の話でもしますね──カナより。-・ ・・ ・- ---・- -・-・・ 』


 最後にちょっとしたモールス信号を書き、そのページの写真を撮る。

 そしてナツへ、綺麗な空の写真と共にその写真を送る。

 送り終わったその瞬間、カナがいる部屋の扉が勢いよく開いた。


「カナ! 何をしているんだ!? 勉強の時間だぞ!」

「……はい、申し訳ございません。お父様」


(よかった……。ぎりぎり間に合った……)


 内心びくびくしながらカナは勉強を始めた。カナの父はじっとそれを見つめて、いや、監視している。


(よし、これが終わったらきっとナツから返事が来る……! 頑張れ、私……!)


 数十分後、カナは立ち上がり、父に今日やれと言われた範囲の勉強が終わったことを報告する。


「……ふむ、わかった」


 それだけ言って父は部屋から出て行った。

 素早くスマートフォンを確認すると、ナツからの返事が来ている。


『カナへ。相変わらず元気だよ。綺麗な写真をありがとう。とても素敵な空だね──ナツより。-・・ ・・ ・・・- -・・-・ -・ ・・ -- 』


(ふふ、さすがナツ。返事が早い)


 このやり取りを父に見つかったらスマートフォンもノートと筆記用具も没収されるだろう。

 仮に見つかってしまったとしても、一番見つかってはいけないところはモールス信号にして隠している。


(あの部分は、全く隠さないよりマシだと思いたい。それになんだか楽しいし)


 手紙写真にあるモールス信号。それにはこんな意味があった。

「大好き」

「僕もだよ」

 これは、ナツとカナの秘密の物語。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手紙写真とモールス信号 色葉みと @mitohano

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ