9
笹葉の窪みに溜まった朝露に陽の光が当たり輝いていた。
そこへ警察犬の鼻先が近付き、匂いを嗅ぎ取る。
レグルスの毛が微風で靡き、湿った空気に土埃が舞う。
すると、待っていたかのように電話のベルが鳴る。レグルスは尾を振りながら、耳を立てていた。
肇は受話部を当てると、すぐに要件を尋ねた。
「陸か。どうした?」
「肇くん。娘が戻ってきた」
肇は眉間にしわを寄せる。
「何があった?」と肇が問いかけると、陸は事細かに状況を説明した。
「娘が誘拐犯の潜伏先まで案内すると言ってる」
「危険だ。情報のみ提供してくれ」肇はきっぱりと言い切る。
しかし、陸も引かずに反論する。
「それでは遅い!手遅れになるかもしれない。カルト集団に幽閉されているんだ!」
肇はため息をつくと、少し間を置いてから言った。
「分かった。だが、危険と判断した場合はすぐに止める。それでいいな?」
肇が念を押すように言うと、陸は答える。
「ああ、それでいい。よろしく頼むよ」
「合流先は?」
「昨夜話した場所まで来てくれ」
「了解。それでは」
肇が電話を切られると、肇は徐に無線機を取り出す。別部隊へ連絡を入れた。
『こちら倉本隊、倉本。南方面捜索隊、応答願う』
「こちら南方面捜索隊、後藤です。」
「そちらの状況は?」肇が尋ねると、後藤は答える。
「南方面の探索を終了して今出立したところです」
肇はそれを聞くと一つ頷いてから話を続けた。
レグルスは笹藪を踏み倒して進みはじめ、倉本は部下を率いてその後を追った。
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