3
日落ちる麓に一台の車が颯爽と走る。
陸がハンドルを切るその車内で、彼らは作戦を練っていた。
その議題はいかにして紬を助けるかということだ。だが、有効な手段は思いつかず時間だけが過ぎていくだけだった。
「やはり警察に介入してもらうべきだろうか」彼はそう言うと、スマホを取り出しどこかへと電話を掛け始める。
「我々がいくら頑張ったところで限界がある。だが、警察なら情報を共有できるはずだ」
海音は相槌を打つが、見取は納得していないようだ。
「でもどうやって協力してもらうの?」と尋ねられて、陸は少し困ったような顔をした後、こう言ったのだ。
「実はね。知り合いに警察署の上層部にいる人がいるんだ」
その言葉に二人は衝撃を受ける。
陸はそんな反応を見て満足そうな顔をすると再び話し始めたのだ。
電話口に出た相手へ名前を告げると、スピーカーに切り替えた後で話しかける。
「こんにちは。いつもお世話になってます」その言葉に相手は返事をした。
「こちらこそお世話になってるよリッくん。本当に娘さんのこと残念でなりません」
陸は少しだけ困った表情を浮かべつつ答えた。
「そのことで、相談があるのですが」そこまで言って息注ぐ。それから言葉を紡いだ。
「我々は独自に得た情報から娘の居場所を推測できています」と言うと、相手は驚いた様子で問い返してきたのだ。
「それは一体どういうことでしょうか?詳しくお聞かせください」そう言われて彼は説明した。
力場障害者やその関係者で構成されるカルト集団、飛人会が糸重紬誘拐の主犯であると推理した経緯を説明した。
「今、俺たちは娘の元に向かっている。警察の応援がほしい」
相手はしばらく無言になった後でこう答えた。
「わかった協力しようじゃないか」それを聞いた陸は安堵のため息をつくと、感謝の言葉を述べるのだった。
見取は呆れ果てたように溜息をつく。
「君は何を考えてるんだ?」
「警察に連絡したことは軽率だったかもしれない。でも、他に方法はなかったんですよ」そう言うと、彼は再び口を開くのだ。
「それに警察は頼りになる存在ですから」その言葉に見取は再び大きな溜息をついた。
そして諦めたように言うのだ。「わかった降参だよ」そう言って両手を上げる仕草を見せると、観念したようにこう言ったのである。
「それで?これからどうするつもりだ?」その問いに海音が答えたのだった。
「娘を必ず救い出します」
その愚直さに呆れる見取だったが、希望を感じずにはいられなかった。
見取は車の中から外を眺めていると、見覚えのある赤城の屋根が見えた。思わず海音に声をかけるのだ。
「あそこに停めてください」
「分かった」
車が山道の脇に停まるなり、見取は飛び出したのだ。
「ここから先は私が案内する」そういうと彼は先頭に立って歩き出したのだ。
そして車から降りた夫妻も後を追うように走り出す。
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