2
紬は白装束に着替えると、祭壇のある広間へと連れて行かれた。
そしてそこにはすでに飛人会の面々が揃っている。
祭壇に祈りを捧げる信者たちを前に白鳥代表は声を張り上げる。
「天引現象とは何かね?」その言葉を聞いた信者たちは一斉に立ち上がり、頭を垂れて祈りを捧げた。そんな中で一人の男性が進み出ると口を開いたのだ。
「太古より語り継がれし黙示録の災厄の一つです」
彼の言葉を聞いて、白鳥代表は満足そうな表情を浮かべる。
「その通りだ」と言うと再び話し続けたのだ。
「歴史が変わる日が近づいている。本計画はそのためにも必須なものだ」
そして彼は両手を広げながら語る。
「今こそ我々はその力を結集し、未来の礎としなければならない」
そう言いながら白鳥代表は祭壇の上に立つ。
彼の一挙手一投足に注目が集まる中、両手を広げながら宣言する。
「だが、近頃邪魔者が騒がしい。宇宙への旅支度を早めなければならない」
彼は右手を軽く握りしめると、力強く言い放った。
「出発を月末に早める!」
その声とともに信者たちは一斉に祈り始めた。
一心不乱に祈りを捧げる彼らを見て、白鳥代表は満足げに頷いた後、祭壇を下りて歩き始める。その様子を紬の隣で光はずっと見守っていた。
紬は周りを見渡して不思議そうな顔をする。
「あの人たちって何をしているんだろう」そう呟くと、そっと答える光。
「神様にお願いをしているの」と言って笑った後、さらに続けた。
「それに神様のことも信じているんだよ」と言うなり再び微笑む光に、紬はもっと問いかける。
「どんな神様を信じているの?」「うーんとね」そう言いながら彼女は口ごもっていたのだが、やがて思い出したように言った。
「とにかく凄い存在なの!」紬は不思議そうな表情で彼女を見る。
「だからとっても大切な存在だって言ってたよ」
紬は戸惑いながらも少し納得できたのか「そうなんだ」と言う。
そんな彼女を眺めながら光はしばらく何か考えていたものの、突然声を上げると彼女の顔を指さした。
「ねぇ!紬ちゃんも祈ろうよ!」「へ?」光は祭壇の上を指した。
まだ信者たちが一心不乱に祈りを捧げており、光も同じように熱心に祈り始めたのだ。
それを見て、彼女も見よう見まねで手を合わせる。
「これで2人一緒。一緒だと少しは苦しくなくなるんだよ」
その言葉に紬は目を丸くしたがすぐに微笑む。
それからしばらく時間が経って信者たちは祈りをやめる時間になったのだが光はまだ祈りを捧げ続けていた。その横顔は真剣そのものだったため、紬も続けて祈ることにしたのだった。
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