第31話 魔族退治 4
「そうか。それで私達を裏切ったのか」
理解も共感もできるため責めることはできない。
もしかしたら、自分がそうなっていたかもしれない。
でも、それでも許せない気持ちもある。
どうすれば止められたのか、どうすればよかったのか、それがわからず自分の無力差に嫌気がさす。
「ねぇ、クオンさっき生贄がどうとか言ってたけどそれはどういうこと?これから魔族達は何をしようとしてるの?」
「生贄?何のことだ」
クオンに詰め寄る。
「おじさん、もう気づいてるでしょ」
「……」
その言葉に最悪の考えが当たっていたと絶望する。
「どういうこと?」
カルーナだけは理解できず問いかける。
「簡単なことだよ。死んだ人間を生き返らせるには生きてる人間の魂が必要なんだよ。命には命を。当然でしょ」
「え、それってつまり彼らは死んだ人のために生きてる人を生贄にしようってしたってこと」
「そうだよ。ただ魔族の生贄は生易しいもんじゃないよ」
「生易しい?これのどこが?」
カルーナはクオンの言葉が理解できない。
これのどこが生易しいというんだ。
「魔族の死者蘇生はたった一人を生き返らせるために町の人間全ての命を捧げる必要があるんだよ」
「な、全員だと!?」
「クオン、それ本当なの」
震える声で何とか尋ねる。
「本当よ。魔族の魔法は普通の魔法とは違う。特に十七禁呪と言われる魔法は特に残酷なのね。今この町にいる魔族のリアートがやろうとしているのはその一つなの。これはただの蘇生魔族じゃない。死んだ魂を自身の殺人マシーンとして使うんだ。そして、この魔法で呼び出されたものは永遠の苦しみを味わう。例えこの魔法を使った魔族が倒され解放されたとしてもそこから新たな地獄が始まる。死後の世界に戻ることができず、この地上にもとどまることができずその境目で彷徨い続けることになる」
二人は想像を遥かに超える最悪な展開になろうとしていることに言葉を失う。
ほんの少し前にクオンが生易しいと言った理由がようやく理解できた。
「ねぇ、それ彼らは知っているの?」
カルーナの問いにクオンは冷たい口調で答える。
「知らないとおもうよ。知ってたらこんなことしようなんて普通思わないよ。大切な人を永遠に苦しませるなんてこと」
「おい、どうやったらそれを阻止できる!」
魔族の魔法の恐ろしさを改めて思い知らされたカルファートはどんな手を使っても止めなければと思いつい声を荒げてしまう。
その声に前を走っていた部下達は何事だと馬の足を止め振り返る。
すぐに「大丈夫だ。足を止めるな」と叫ぶ。
「簡単なことだよ。誰も殺させなければいい。そして、リアートを殺せばいいだけだよ」
淡々と答えるクオン。
カルーナはクオンの顔を見てヒュッと喉から音が鳴る。
表情がコロコロと変わる可愛らしい少年の顔ではなく、無表情で簡単に人を殺せる冷たい雰囲気を晒し出していた。
「まぁ、リアートの方はあっちの二人が何とかしてくれるはずだから問題はないよ。町の人達もね。おじさんに会う前に一応念のために陣を大量に埋め込んできたから。なんかあればそれが守るから。それにもし、死者蘇生の魔法が発動されたらそれを妨害する魔法を俺が出すから心配する必要はない。だから、気にせず残りの裏切り者を見つけることに専念して」
急に子供の口調ではなく大人のような口調で話す。
その変わりように二人は困惑するも、何故か何の疑いもなく信じてしまう。
妙なオーラに圧倒され従いたくなる。
「わかった」
そう返事をしてカルファートはペースを上げ先頭へと戻る。
「ねえ、さっき呼び出された魂は死後の世界にも地上にもとどまれないって言ったよね」
「うん、言ったのね」
いつもの口調に戻りカルーナは変な気分になるも続けて尋ねる。
「その魂を助ける魔法はないの?」
ふとした疑問だった。
呼び出す魔法があるのなら戻す魔法もあるのではないか。
さっきからクオンはそのことをわざと避けて話しているように言っている感じだった。
「あるよ」
「なら……」
カルーナの言葉を遮り「でもね、その魔法を使えるのは花冠だけだよ。それ以外の者は誰も使えない。誰も助けることはできない。その魔法は禁術だから」
禁術という言葉でヴァイオレット達も同じことを言っていたことを思い出す。
それほど危険な魔法だと。
「だからこそ絶対にこの魔法を使わせてはいけないんだよ。じゃないと呼び出された者は誰にも助けてもらえないからね」
「そうだね……絶対に阻止しよう」
カルーナはこの魔法の恐ろしさを知った今、もし自分が誰かに呼び出されたらと想像したらそんなことをしたその者を怨む自信がある。
例え呼び出した者が生前愛した人だったとしても永遠の苦しみに囚われるのに、会えて嬉しいと呼び出してくれてありがとうと言えるはずがない。
寧ろそんな地獄に引き摺り込んだ相手を許すことなど絶対にできない。
そうならないためにも、残りの裏切り者達を見つけ阻止しなければならない。
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