第14話 ガーベラ
「待って。花冠のことを知りたいのなら、明日ガーベラに行くといいわ」
二人が帰ろうとするのを止める。
「ガーベラですか?」
シラーの意図がわからずカルーナは首を傾げる。
ガーベラはファッション店。
花冠とどんな関係が?と思っていることが全て顔にでる。
「ガーベラは花冠様にものすごく感謝しているのです。私達は銅像を管理していますが、ガーベラは絵を持っているのです。創設者、ガーベラ・ミラーは自ら花冠様の絵を描き毎日祈りを捧げていたと言われています。もしかしたら話す内容は一緒かもしれませんが、絵を見るだけでも違うかもしれません」
ヴァイオレットがカルーナの疑問に答える。
「その絵は僕達でも見れるんですか?」
「いえ、見れません」
ヴァイオレットが首を横に振る。
カルーナはなら何でそんな期待を持たすことを言ったんだと、そんな目で二人を見る。
「ええ、ですから明日二人に見せるよう頼んでおきます。話しもするように、ね」
シラーがそう言うとカルーナは頭を下げてお礼を言う。
紫苑もそれに続きお礼を言う。
シラーはその後二人を見送るとすぐに現オーナーのジンに連絡する。
「なんか僕達幸先いいですね。旅をはじめた日に花冠のことを知ることができるなんて。それに明日も話がきけるなんて」
宿に戻るなりベットの上で喜びを表現するようにバタバタする。
「そうだね。こんなに簡単にこの町での事を知れるなんて思わなかったよ。明日は絵も見れるし、楽しみだね」
「はい!……あ、先にどっちが風呂に入ります?」
明日も早いし早く寝ないといけないが、風呂に入って綺麗にしたい。
今までのカルーナは両親のいない日は自分の入りたいときに入っていたが、いるときは二人が入るまで入れないのが当たり前だった。
今回もそのつもりで紫苑に早く入ってほしいと遠回しに伝える。
「カルちゃんが先に入っていいよ」
「え!?いいんですか!?僕が一番で!!」
「うん、いいよ」
カルーナの声の大きさに若干引きながら言う。
「ありがとうございます!!」
人生初の一番風呂に感動して泣きそうになる。
「うん、ゆっくり浸かっていいからね」
紫苑の言葉など聞こえていなかったのだろう、返事もせず嬉しそうに風呂場へと向かう。
「そんなに、嬉しかったのね」
これからも一番風呂は譲ってあげようと決める。
シャワーの音が聞こえてきて風呂に入ったのがわかる。
周りを見ても誰もいない。
ならいいかと紫苑は頭の中に花冠を思い浮かべ花を一輪出す。
その花を花冠の元に届くよう祈る。
暫くすると花は消え何処かへと向かう。
「あれがガーベラ。僕、想像以上で驚いています」
「俺もだよ」
二人はガーベラより少し離れたところでガーベラ店を見ていた。
ガーベラは貴族向けと平民向けがある。
どちらも人気で毎日人が大勢押し寄せる、ということまでは知っていたが予想を遥かに上回っていた。
それだけでなく、特に女性達は貴族も平民も両方とも戦場か何かかと疑いたくなるくらい殺伐としていた。
「シオンさん。僕生まれて初めて女の子が怖いと思いました」
カルーナは自分の中で母親は女性ではないと言っていることに気づいていない。
「カルちゃんもまだまだだね。この程度は可愛いものだよ。それより、どうやって中に入ろうか」
「(え?これが可愛いの?これ以上があるって冗談ですよね?てか、シオンさんはどうして知ってるんですか?)」
さらっと言うので聞き流しそうになる。
聞いてもいいのか、それとも駄目なのか少し考えるも今大事なのは店に入ること。
それ以外は必要ない。
そう判断し「裏からはどうですか?僕あの中に入る自信ないです」と言う。
行こうと思えば行けるが、怖すぎて行きたくないのが本音だ。
「うーん、確かに裏から行くのがいいかもね。ちょっと怪しまれるかもだけど」
正面から行くよりはマシだと言い聞かせ裏に回ろうとすると、いきなり後ろから話しかけらる。
「すみません。シオンさんとカルーナさんでしょうか?」
「そうだけど、君は?」
声をかけられ後ろを向くと知らない少年たちがいた。
紫苑はすぐにガーベラの授業員だと気づくも念の為尋ねる。
「私はウィルと申します。ガーベラの従業員です」
二人に頭を下げ挨拶する。
「ジン様のところまでご案内しますので、私についてきてください」
ジンの指示でウィルは二人を迎えにきた。
ガーベラはいつも人が大勢買い物にくるので正面からでは入れないとわかっていたからジンはウィルを迎えにいかした。
「はい、よろしくお願いします」
「ジン様。お二人をお連れしまた」
「入れ」
ウィルは二人に中に入るよう促す。
ウィルは中に入るつもりはないらしい。
「失礼します」
カルは小さな声でそう言うと中に入る。
紫苑は何も言わず入る。
「初めまして、私はジン・ミラーです。貴方がシオンさんで、貴方がカルーナさん、であってますか?」
シラーから二人の容姿は聞いていた。
白い髪で人間離れした美しい顔の紫苑と着ている服は汚いが澄んだ瞳をしているカルーナ。
見たらわかる、そうシラーに言われたが半信半疑で二人を見たが、本当にシラーの言った通りで笑いそうにる。
「はい、あってます」
カルーナが答える。
「面倒な挨拶は抜きで早速本題に入りましょう。シラーから聞いていますので、お二人の目的はわかっています。花冠の絵を見にきたんですよね。ご案内します」
「はい。それとご迷惑でなければ、どうしてガーベラ・ミラーさんが花冠の絵を描いたのか教えていただけないでしょうか」
「勿論、構いませんが大したことじゃないですよ。ありきたりな話ですよ」
「構いません。お願いします」
カルーナは頭を下げる。
「では、先にそちらから話しましょう。長くなりますので座ってください」
二人がソファーに座るとその反対側にジンは座る。
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