何のために生まれてきたのか
長い長い走馬灯。
覚えているはずのない、自分が産まれて出てすぐの時、そこには優しく泣き笑う母の姿。
目が見えるはずもないのに、まるで目の前で見ていたよう。
自分が何故泣いているのかはわからない。
初めて抱きしめられるぬくもり。
そう、あの日俺が生まれた。
あくせくと自分の世話をする母。
泣いてるか、寝ているか。
そんな自分を大切に大切に育ててくれた母。
この人の子どもで良かったと本当に思う。
小さな泣き虫な女の子。
ああ、アーシファが泣いてる。
慰めてあげなきゃ。
城。
母以外にも家族のように自分を可愛がってくれた人達。
皆、笑ってる。
ちっちゃなアーシファだけは泣いている。
ずっと手を繋いで歩く。
そうしていると、いつのまにか彼女は泣き止んでいるから。
そして笑ってくれる。
思い出の中の人達はずっと笑っている。
幸せな日々。
ずっと続くと思っていた大切な時間。
母の死。
人はいつか必ず死ぬ。
絶対的なルール。
炎。
何も感じない、聞こえない。
でも自分はその中にいる。
どうして、俺は生まれてきたんだろう。
母の笑顔、たくさんの笑顔に包まれて。
きっと生まれてきた事は間違いじゃない…。
いや…。
間違いだったのかなぁ。
俺が生まれてこなかったら、アーシファは今でも幸せに笑っていたのかなぁ。
でも、俺がいなかったらアーシファはずっと泣いてるな…。
アーシファ…最後も泣いてたのかな。
俺、大好きな人も守れないのに、どうして生まれてきたんだろう。
大切な人達も、大切なモノ達も守れなかったのに。
結局こんな道半ばで。
俺はどう生きたかったんだろう。
どこで間違えたんだろう。
まぁ、でももういいや。
もう生きる理由もないから。
全部終わった。
全部。
アーシファはもう泣いてないかな。
笑ってるかな。
こんな世界なら二度と生まれ変わりたくなんてないけど、
もし、もしアーシファが生まれ変わってまた泣いてたら…
俺は今度こそアーシファが毎日ただ笑って暮らせるように守っていきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます