業火

ステーシアは一人兵舎に戻る。

途中、遠くの門兵が何か叫んでいたが、

任務でーす!

と、ごまかした。

持ち場を離れられない門兵は叫び続けているが、ステーシアは鼻歌を歌いながらスルーした。

メッカ上官からの命令なのだ。

何も悪いことはしていないし、この距離なら誰かもわからないだろう。


「ビンゴ。」


ステーシアは呟いた。


兵舎の中には、団長である古参の兵士の姿がそこにあった。

椅子に腰掛けうなだれ、ひどく疲れてきった様子である。


「団長、お疲れ様っす。」


ステーシアが声をかける。


「ステーシア…。お前を待っていた。」


メッカに、団長から話を聞いてこい、と言われたが、まさか団長の方が待っていたとは思っていなかった。


「今回の作戦、新兵は全員向かわせろと言われていたがあえてお前を外した。お前が街の警備に回されている間、城で何があったのか、お前には話した方がいいと思った。これは俺の独断だ。」


団長は、うなだれたまま頭を抱え、思い出したくもない記憶を掘り起こしながら、ステーシアに昨日何があったのかを話始めた。


「わしは昨日、新兵団から離れ何故か王の部屋の警備を頼まれた。他にもいつもと変わった任務を言いつけられた奴らはゴロゴロいた。王位継承式で客人を招いていたから、部屋のあちこちの警備を厳しくしていたのかと思ったが…。次に呼び出された時にアーシファ様が殺されたと聞いた。客人の中に犯人がいるから来てくれ、と言われ、城の裏の広場に向かった。そこには身動きを封じられ、目隠しをされた者達が数十名いた。王の命令は皆を処刑することだった…。」


団長は体を少し震わせた。

少し続きを察知したステーシアは、頭を抱える手を離しギュッと握りしめた。

団長はステーシアを見た。

優しい目でこちらを見る彼は男性なのだが、自分の母を思い出させた。


「わしは何人か手にかけた。皆、無実を訴えていたのに…。アーシファ様が依然として見つからない今、何が真実なのかわからないが、1人叫んでいた奴が、タオにはめられた!と言っていた。」


「タオ!」


ゴールドフィルドでの会談時の事が、ステーシアの頭に浮かんだ。

誰かがその名を呼んでいた気がした。


「やっぱり心辺りがあるのか…。現物を見ていないからうまく説明は出来ないのだが、誰かが、血のついた矢を2本と、それを撃つために使うらしいものを見つけたらしい。教え子である上官に無理やり聞いた。」


「…ボーガン…。」


タオ、ボーガン。

ステーシアの頭で1人の人間を特定した。


「たしか…その名も昨日聞いたな…。ステーシア、わしはここを動くことが出来ない。でも自由なお前なら…。…。良くない方向に国が動き出してる気がする。どうか、理由もわからず船に乗せられた仲間達を助けてくれ、ステーシア。」


団長がステーシアの手を痛いほど強く握り返した。

団長が命令をした訳ではなかった。

新兵達が船で海を出たと知らされたのは、つい先程のことだったらしい。

よしっ、と、テーシアは気合をいれる。


「団長よりの命令、承知したっす。…。顔色悪すぎっすよ。寝れてないんでしょ。もう歳なんだからちゃんと休まないとダメっすよ。…あとは、俺に任せてください。」


ステーシアは、そっと手を離し立ち上がった。

新兵として入ってきたばかりだったステーシアの背中は、たった少し離れている間に見違えるほど逞しくなっていた。






ゴールドフィルドの国民達は、海に浮かぶ数隻の船の姿を見て混乱状態に陥っていた。

レムリアンの国旗をはためかせる船団に乗っているのが兵士達だと知ったからだ。

クロイツの故郷がレムリアンだと皆知ってはいたが、近づいてくる訳でもなくただ停止していることが不気味に思え、とにかく海から離れた場所へと避難する人達が多数いた。

ゲタルには一体何が起こっているのかさっぱり検討もつかなかった。

クロイツからの連絡もない。

だが、間の悪いことに、今日は例の二人がやってくる日だった。

奴らが来る前に立ち去ってくれと願ったが、願い虚しく約束時間を大幅に前倒し、二人がゴールドフィルドについてしまった。


「あいつ、俺達をずっと騙してたんじゃないか!?なぁ、ゲタルよ!」


タオがドスをきかせた声で叫ぶが、昔から喧嘩ばかりしてきたゲタルに脅しはきかない。


「あいつがそんな事するわけねーだろが。」


三人は、ゲタル宅にて緊急会議を開いていた。


「でもあれは、紛れもなくレムリアンの旗。彼が突然帰ってしまってからすぐのことです。おかしいとは思いませんか?」


ゲタルは黙る。

二人には、アーシファの王位継承の話はしていない。

そこで何かトラブったのだろうか…。

ゲタルは考えるが、二人がキャンキャンうるさくて、頭をうまく整理することもできなかった。


どんっ

と、ゲタルは床を殴る。


「…俺が直接、話を聞いてくる…。」


それが一番手っ取り早く確実だと思った。

すぐにゲタルは家を飛び出し、レムリアンの船団に向けて小舟を漕いだ。


全ては計算されていたことだった。

レムリアン国王とタオ達二人によって…。


王位継承式の日、レムリアンに客人としてやってきていたのは、二人にとってもう不必要となった者、この先邪魔となりそうな者達だった。

言葉巧みに持ち上げて騙し、アーシファ殺害容疑で皆を始末することができた。

後は戦争の火蓋をどう切るかだ。


タオは、ゲタルが船に近づいた絶好のタイミングを見計らっていた。


…。

今!!


ドーンッ!!


大砲の音が街中に響きわたる。


ドッカーン!!!!


大砲は見事に一隻の船に命中。

一気に船が火だるまになる。

ゲタルの船が爆発に巻き込まれたのを確認する。


港から皆離れていた為、撃ったものが誰か?街の者に目撃者はいなかった。

大砲は急いで運び出す必要があった為見られたが、これも後でどう説明するか考えられていた。

まだまだシナリオは続く。


タオは、慌てて走り出す船に向けて大砲を発射する。

船技術の進化の乏しいレムリアンの船の動きは、亀のようだった。

ここで全船団を撃ち落とすのがシナリオのストーリー。

レムリアンに報復の口実を与える為だ。

そうすることでレムリアン国王が動き出す事ができる。

燃え盛る船達はまるで、海が怒り狂い炎をあげているように見えた。




「との事でした。」


ステーシアは、クロイツとメッカに団長から聞いた事を全て話した。


「ありがとう、ステーシア。君がゆっくり休んでくれていて良かった。」


フラフラの状態で話を聞いても、全部覚えてくるのは難しかっただろう。


「あと、ここに来るまでに思い出したのですが、俺等が帰ってきた日に来ていた客人。ローブで全身を隠した二人組だったんすよね。…奴らで確定して動いていいっすよね?もう。」

 

クロイツはワナワナと怒りに震えていた。


「奴らが…奴らが…アーシファを…。」


「クロイツ殿…落ち着いてなどと言いません。私ももう限界です。奴らだけは、この手で切り落とします。こんなに心底、人が憎いと思ったのは初めてです。」


「王に会う。」


クロイツは、爪が突き刺さるほど握りすぎた拳から血を流し、歩き出す。

激しい怒りで走ることが出来なかった。

すでに心拍があがってしまっているから、呼吸が乱れているからかもしれない。


「俺はここにいます!俺は新兵団として海に出ていると思われています!隠れて動けることが、どう功を奏するかわかりませんっすから!」


ステーシアの声に、メッカは手をあげて答えた。

今、一番冷静でいてくれるのはステーシアかもしれない、とメッカは思った。

ステーシアは当たり前についてくるものだと思っていた。

頭が全然回っていない。

不眠と怒りで、良からぬ行動に出ないようにしなければ。

メッカは意識して深呼吸をした。


門兵はクロイツの頼みに対して、中には入れられない、の一点張りだったが、


「私は貴様らよりも上の階級の人間だ!さっさと門を開けろ!」


と、珍しくメッカが怒鳴り声をあげたので、メッカの命令に背くわけにはいかず、すぐさま門を開いた。

まるでポッカが乗り移ったようだった。


城内は使用人達があたふたと走り回っていた。

兵の姿も見かけるが、皆ひどく憔悴しきった顔つきをしていて、メッカに気づかず誰も挨拶をしてこなかった。

異様すぎる。

メッカは肌で感じ取っていた。


王の間に姿は無く、直接王の部屋に向かおうとしたが、最上階にある王の部屋に行くまでの階段にメッカの仲間の姿があった。

同じ親衛隊員だ。


「いくら、メッカの頼みでもこれだけは譲れない。アーシファ様が暗殺された今、王達だけは守りきらねばならない。お前にもわかるだろう?」


付き合いの長い友人だったが、絶対に通せない、と意見を曲げなかった。


「偉そうに言いたくはないが、何故アーシファ様をお一人にしたのだ?親衛隊だろ?」


「王と二人で王家の墓に向かわれた。これは元王と新王の大事な儀式だから付き添いは不必要だと言われていた。」


…。

王と二人で王家の墓に行って…。

どういうことなのだろう。

後ろで控えていたクロイツは、王が居たのなら何故そんな事になるのか疑問に思った。


「なのに、戻ったのは王だけだったのか!?」


メッカは声を荒げてしまった。


「どうした?落ち着け、メッカ。お前らしくないぞ。…。そうだよ。王だけだった。王は一度、用があり部屋に戻ったらしい。その間に…ってことのようだ。まだアーシファ様自身は見つかっていない。」


さっき、王の部屋を警備していた者は、そんな話をステーシアにしていない。

アーシファが殺された後に呼び出しを受けている。

王が部屋に戻ったなら会っているはずだから、話にあがっていてもおかしくない。

クロイツは一つでも情報を聞き漏らさないように必死だ。


「…すまない。私はずっとアーシファ様と共にいた身なんだ。どうにも冷静になどなれない。…。やっぱりどうしても王と話がしたい!」


「ダメなんだよ、メッカ…。俺は命をかけて王を守らなきゃいけない。守るって命だけじゃない。お心だって守るべきものなんだ…。どうしてもというなら、結果がわかっていても剣を抜くしかない。」


私にそれが出来ないことはお前が一番わかっているだろう…。

メッカは口にしなかった。


「…。私が外されていたこと…おかしいとは思わないか?」


仲間に異変を感じてほしかった。


「メッカが街の警備…は、正直納得いかなかった。けど、結果的に居なくて良かったと思うぜ。昨日のことは思い出したくもないが、大事な女王が殺されたんだ。今のお前みたいに正常な判断ができなくなるのも無理はない。」


「私の今の行動が間違っているとは思わない。」


こいつは、すっかり王に毒されているとメッカは思った。

あのアーシファの誕生祭で王が何と口にしたか…。

皆すっかり忘れてしまってるんだなと溜め息が出る。

ここにいても時間を浪費するだけだと思ったメッカは身を翻した。


「お前の忠誠心の高さ、レムリアンの同じ兵として誇りに思う。」


それは本心だった。

彼は王を、メッカはアーシファを、レムリアン王家の親衛隊として守ろうとしているのだ。

命をかけてでも。


「船がっ!船がっ!」


メッカが去ろうとした時、叫びながら階段を駆け上がってくる者が現れた。

必死に走ってきたらしく、息も切れ切れな一兵は王に何かを伝えに来たようだった。


「新兵達の船が…はぁ…はぁ…全船燃えていた…。」


!?

その場にいた皆が驚きの声をあげる。


大砲。

クロイツの脳裏にその言葉が走った。

だが、ゴールドフィルドにそんなものは置いていなかったはず…。

無理やりあいつらが持ち込んだのかもしれない。

やりかねない。


クロイツの予想は概ね当たっている。


「メッカさん、一度戻りましょう。」


事態は一刻を争う気がした。

二人は駆け足でステーシアの待つ、クロイツの家へと向かった。

全てが後手後手になっているのがよくわかった。






「全船…っすか…。」


団長の顔が浮かんだ。

守れなかった。

ステーシアにとって大切な仲間達の命が次々と奪われていく。


「俺はクリスタルへ行こうと思います。ちゃんと見なきゃ…ちゃんとゲタルさんと話しなきゃ…。」


「レムリアンと奴らが繋がっているのなら、武器などの手配も簡単でしょう。王は報復に進むと思います。ゴールドフィルドにすぐに向かいましょう!」


三人は港へ急いだ。

交易の時に使われる船が数隻ある。


「俺、ヤマトヲグナに行っていいっすか?」


ステーシアが口にする。


「何故だ?ステーシア。」


「もうゴールドフィルドだけで済む話じゃないと思うんす。王とあいつらが一緒なら、絶対他にも火種が行く。一刻も早くこの事をヤマトヲグナの人達に伝えに行きたいんす…ダメっすかね?」


「一人の船旅の危険さはわかっているのか?寝たら命取りだぞ。」


「もちろんっす。絶対にすぐに俺は戻ります。」


そう話すステーシアの顔つきは、何かを悟ったような…不思議と落ち着いて見えた。


「俺だってずっとアーシファ様を想ってきたんです。正直頭がグチャグチャになりそうです、今。でも…アーシファ様がここにいたら…そう指示されたと思うです。ヤマトヲグナも危ないかもしれないって。だから、俺はやりきってみせます。」


まるで別人のようにメッカには見えた。

断る理由などない。

ステーシアがこの案を出してくれなかったら、まだ色々と後手後手にまわっていたかもしれない。

船旅だけは心配だったが今は一刻を争う。

二組に別れてレムリアンを出国した。





燃え上がる炎の柱に手を合わせ、ゴールドフィルドの港へ向かう。

たしかに…兵が言っていたことは真実のようだった。

レムリアンの鎧をきた兵士達の死体が浮かんでいる。

やはり、クリスタルからの攻撃によるものだろうか。


ゴールドフィルド港。

そこには、箒や工具などを武器代わりに握りしめた街人達の姿があった。


「いったい何があったんですか!?」


クロイツが船をつけ陸に上がろうとしたが、すぐにそれは静止された。


「ダメだ!例えクロイツ様でも………。」


「何が…ゲタルさんは!?ゲタルさんはどこに?」


「ゲタル…は…逃げた。」


「逃げた!?」


とてもクロイツには信じがたい話だった。


「とにかく話を聞かせてください。ここでいいですから。」


「その前に…あの船は一体何だったの?あなた、レムリアンの人なら知ってるでしょう?」


頭を打って怪我した子どもの母、キャロルの姿もそこにあった。

子を後ろに隠しながらクロイツに尋ねる。


「…レムリアンの新兵達でした。ただ、聞いた話では船に乗ってろって指示されただけで…。僕にも何が何だかわからないんです。全部隠されてて。だから、教えてください、何があったか。」


クロイツが食い下がる。

何でもいいからとにかく情報がほしかった。


「クロイツ君、俺達は危険だから港から離れていた。そしたら急に耳の鼓膜が破れそうなくらいの唸るような音が聞こえてね…。怖くて誰も動けなかったんだけど、ゲタルさん達と会談していた男達が、ゲタルが大砲をぶっぱなして逃げたぞー!と、外へ走って行ったから、恐恐港に戻ってきたら謎の置物がここにあって、船は全部燃えてた。」


答えてくれたのはミゲルだった。

だが、クロイツ達を入国させてくれるつもりはなさそうだ。


「あいつら…ゲタルさんは絶対にこの街を置いて逃げ出したりしません!!」


明らかに嘘だと思った。


「でも、ゲタルさんの姿はどこにもない。最近変わったなって思ったけど、人の本質って簡単に変わらないんだろうね。」


「違う!」


「君がゲタルさんによく懐いていたのはわかってる。でも事実、ゲタルさんはこの街にはもういない。君の人間性の素晴らしさは良くわかってるけど…ゲタルさんと一緒にいた君を…レムリアン王国の君をゴールドフィルドに入れる訳にはいかない。」


ミゲルは心苦しくはあった。

だが、信じたものが裏切られた。

ミゲルはゲタルが本当に逃げ出したと思っている。

が、クロイツは絶対にそうとは思えなかった。

裏で二人が糸を引いている気がしてならなかった。

今まで無かった大砲がタイミング良く用意などされるだろうか。

ゲタルは反戦を強く主張していたのに、武器を見たいと言い出すとは思えなかった。

もちろん、今まで自分が騙されていたとも思えなかった。


出ていけ!

と、声があがる。

そう、自分の身が危険な時に誰もが冷静な判断が出来るわけじゃない。

ゲタルも今までが今までだった為に、逃げた、という嘘を皆が素直に受け入れてしまった。

疑心暗鬼。

それが今ゴールドフィルドの人達の心を支配している。

このままここにいてもどうしようもない。

二人は、とりあえず一旦港から離れることにした。


とはいえ、ゴールドフィルドのあの状態を放っておく訳にはいかない。

ゲタルの行方も探さなくてはならない。

ゲタルは…何処に…。


「…ゲタルさんなら、自ら船団に話しつけに行くと思うんです…。」


クロイツはそう思った。


「……となると…その時に大砲を打たれてしまった…という可能性がありますね。先程ゲタル殿らしき姿は見当たりませんでしたが…。その考え方が一番しっくりきます。」


「そうだよね。」


ゲタルまで殺されてしまったのか…。

クロイツは湧き上がる怒りとは裏腹に、頭がキーンと冷えていくように感じた。


「さっき俺ですら街の人達を安心させてあげることはできませんでした。もう難しいと思います。報復とレムリアンがやってきた時に、彼らを守ってあげられるすべが俺には思いつきません。ただ…ただ…奴らだけは許せない。奴らの街に行きたいです。奴らの動きを止められれば、レムリアンに武器の補給もできなくなる。」


「たしかに…。…。奴らと王が繋がっている。ゴールドフィルドは捨てるということでしょうか、奴ら。武器を持たないゴールドフィルド民なら抵抗しなければ攻撃を受けることもないとは思いますが…我軍なら。うん、そうですね。船で大陸を横断し、適当な位置から陸にあがりましょう。そして、奴らを始末しに行きましょう、クロイツ殿。」


二人の道は決まった。

それが一番早い解決法だと思った。

出来ることなら戦火が広がる前に。


だが…。


二人が陸周りで大陸に上がった時。

そこから見えたのは、ゴールドフィルドを囲む人間達。

レムリアンの兵ではない。

遠くからだが、わかるのは民間人ではないかということ。

手にはボーガン。


直感が言う。

奴らの街の人間達だと。


クロイツとメッカは走った。

とにかく走って。

走って。


パシュッ

パシュッ


そこで行われていたのは、ゴールドフィルドの街人達の虐殺だった。


武器の扱いに慣れた人間達が、無抵抗な人々の命を次々と奪っていく。


クロイツとメッカは武器を振りかざしていた。


平和的な解決?

馬鹿らしい。

こいつら全員殺してやる。


街の人達への配慮すらも出来なかった。

メッカはまだ理性的に動こうと、残った街の人達を助けに走っていたが、クロイツは全てを薙ぎ払うように敵に向けて攻撃を行っていた。


それがもう同じ人間だとは思えなかった。


タオ達にとって、レムリアンとの素早い連携の為にゴールドフィルドを自分達のものにする必要があった。

最終的に、この大虐殺も他国のせいにするつもりだ。

そうすることで戦火を広げられるから。


クロイツは、敵を殲滅する勢いだった。

鬼の形相。

クロイツはもう人を辞めた。

タオ達への怒りが今いる敵達に向けられる。

ボーガンなど恐ろしくもないと突っ込んでくるクロイツから何人もが逃げ出した。

クロイツが悪魔のように見えた。


ゴールドフィルドの外に構えられた大砲。

先程もたくさんの命を奪った大砲。

そこにすがりつく気持ちで火を点ける敵。


ああ…、中にいた人達はこんな気持ちだったのか。


クロイツの目に写る大砲の玉。

あの爆発がフラッシュバックする。


絶望。


怯えた敵が放ったのは3発の大砲。

ゴールドフィルドは火の海だった。









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